相場展望8月23 日 テーパリングでも楽観論続き高値圏相場が継続へ  注意すべきは、むしろ『景気後退』

2021年8月23日 15:34

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)8/19、NYダウ▲66ドル安、34,894ドル(日経新聞)
  ・FOMC議事要旨を受け、テーパリング(量的緩和の縮小)開始の前倒しを警戒し、景気敏感株を中心に幅広い銘柄が下げた。
  ・株式市場への資金流入が減ると警戒されたほか、早期の緩和縮小は米景気を冷やしかねないとの観測が浮上した。
  ・もっとも、売りの勢いは限られている。新規失業保険申請件数は前週から改善し、米景気の底堅さが意識され、投資家心理を支えた面もあった。

【前回は】相場展望8月19日 過剰マネーとリスクの攻防が始まる リスク: 金融緩和縮小・景気鈍化・感染爆発

  2)8/20、NYダウ+225ドル高、35,120ドル
   ・カプラン米ダラス連銀総裁のハト派発言を好感し、早期緩和縮小への脅威が緩和され、米国株式は上昇に転じ、一時+300近くまで上げ幅を拡大した。(フィスコ)
   ・ハイテク株が相場を押し上げ、NYダウも買われた。(日経新聞)前日まで下げが目立っていた消費関連株や景気敏感株の一部にも押し目買いが入った。
   ・もっとも、新型コロナのインド型(デルタ型)の蔓延による景気減速への警戒が相場の重荷だった。

●2.米国株式は、テーパリングでも楽観論が続き高値圏継続を予想も、景気後退指標が増加傾向

 1)NYダウは、好決算シーズンで上昇した後、テーパリング懸念で下落、8/20は戻り高
  7/20~8/16 +1,663ドル高  好決算発表を好感し+4.9%上昇
  8/17~8/19 ▲ 733ドル安  テーパリング懸念で下落
  8/20    + 225ドル高  テーパリング懸念後退もあり反発

 2)米国株は米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が、年内にテーパリング(金融の量的緩和の段階的縮小)の開始を示唆する内容だったことから、緩和マネーに支えられた株式相場に下落圧力がかかるという見方が広がり8/17~19に下落した。

 3)景気減速とテーパリングを警戒した出るなか、カネ余りが押し目買いに入って、8/20はNYダウは+225ドル高・35,120ドルと高値圏を維持している

 4)テーパリングがどの程度、株式市場に影響を与えるか予想し難い。ただ、テーパリングと言っても、月額1,200億ドル(約13兆円)・年額1兆4,400億ドル(約158兆4,000億円)もの市場への資金流入額が減る程度であり、過剰マネー自体は膨らみ続けることに変わりはない。したがって、小さな調整と上昇を繰り返しながらも、楽観論に基づき底割れに至らず高値圏での動きが続くと思われる。

 5)FRBのバランスシートは8/11時点で8兆2,572億ドル(約907兆7,200億円)超であり、この元本の減少懸念の話に及ぶと市場に大きな影響を与えることが懸念される。その時期は2022年春以降のことになると予測する。

 6)デルタ型感染者拡大が続き、景気の回復の底割れ懸念が浮上している。WTI原油先物価格が7/13、75.25⇒8/20に61.86ドル(バレル当たり)に▲17.75%下落するなど、銅や非鉄などの世界の商品指数が低下し、世界経済の成長鈍化懸念がでている。
  CRB(国際商品先物)指数は、7/29 221.21⇒8/20 206.96と▲6.4%下落。また、米10年国債利回りは1.2%半ばと3月末頃の1.774%から低下しているが、債券市場もデルタ株感染拡大の影響から米国経済の後退を読み始めていると言える。中国や米国でも、弱気な経済指標が増加傾向にある。景気後退⇒企業業績の悪化状況に焦点を当てる時期が到来し始めている可能性が出てきたかもしれない。

●3.ジャクソンホール会議、一転してオンラインで8/27に限って開催  (日経新聞)

●4.金融緩和の段階的縮小とデルタ型感染拡大が今後の焦点になる(フィスコより抜粋

 1)今週の注目点
  (1)パウエル議長8/27演説    :早期緩和縮小の道筋を明確化するかどうかに焦点
  (2)米4~6月期GDP改定値   :景気回復のレベル感として注目
  (3)PCE(個人消費支出)コア指数 :インフレ指標として注視

 2)金融緩和縮小に影響を与えるデルタ型感染拡大との関連
  (1)FRB高官の間では、9月に緩和縮小計画を発表、年内に開始する方針が固まりつつあるとの報道がある。縮小の完了までには8ヶ月から10ヶ月を要し、金融危機当時のペースを上回る可能性が強いと予想される。

  (2)ただ、秋~冬にかけて、新型コロナのデルタ型感染が予想以上に拡大し、景気に影響を与える可能性も除外できない。実際の感染者数は、7月にFOMCが開催されたときに比べて急増している。早期の金融緩和縮小の必要性を主張していたタカ派メンバーも、デルタ型感染動向次第では、考えを修正すると態度を変化させている向きも出てきた。

  (3)感染への警戒感が、消費にも影響を与え、8月の外食・旅行や他のサービスにも影響を及ぼしていると警戒されている。実際、航空会社も例年需要が高まる夏の観光シーズンで、ピークにとなる8月にキャンセルが増え、予約ペースが鈍化していると、悲観的な報告もある。

  (4)8月のミシガン大消費者信頼感指数は予想外にパンデミックが始まった昨年3月の水準を下回り、10年ぶりの低水準に落ち込んだ。7月の小売売上高も予想を下回った。

  (5)ゴールドマン・サックスも、年内の成長見通しを下方修正した。パウエル議長が予想外の金融緩和縮小に、慎重な姿勢を繰り返すと、ドル買いが一服(ドル安・円高)する可能性がある。今後の金融政策はデルタ株の動向次第になる。

 3)アフガン情勢と地政学リスク
  (1)アフガン情勢では、バイデン大統領は来週のG7会合で、同盟国と協調・連携していく姿勢を示している。
  (2)米国が主要各国からの信頼を回復できるかどうか疑問が残り、地政学リスクが存続する可能性もある。

●5.米・先週分新規失業保険申請件数34.8万件、前回37.7万件から予想以上に改善(フィスコ)

 1)4週連続で減少し、パンデミック後では最小。(ブルームバーグ)

 2)こうしたトレンドは、労働市場が改善しつつあることを示唆している。

●6.ゴールドマン・サックスは2021年の米経済成長見通しを6.4⇒6.0%に引き下げ(フィスコ)

 1)新型コロナデルタ変異株の感染拡大の状況が予想を上回り、供給の混乱が一段と拡大しインフレを押し上げるとみた。

 2)コロナが終息せず、8月の旅行や他のサービスに再び影響が出ていると警戒した。実際、航空会社も予約ベースが鈍化している。7月小売売上高も予想を下回ったことに続き、8月も▲1%減を予想している。

 3)米GDP成長率(ロイター)
  07~09月期 9.0% ⇒ 5.5%に下方修正:デルタ型変異株の感染拡大の影響  
  10~12月期 5.5% ⇒ 6.5%に上方修正:コロナ懸念後退、サービス回復

●7.WTI原油価格は8/20、7日連続し61.86ドルと、一時5月下旬以来の安値(日経新聞)

 1)新型コロナのインド型(デルタ型)の感染拡大による景気懸念が相場の重荷になった。

●8.アマゾン、流通総額でウォルマートを抜き、中国を除く世界の小売市場でトップ(JBpress)


■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)8/19、上海総合▲19安、3,465(亜州リサーチ)
  ・商品市況の下落が嫌気される流れとなった。前日のNY市場でWTI原油先物が▲1.7%安、ロンドン金属取引所で主要非鉄の先物価格が軒並み下げた。上海商品取引所でも、非鉄や鉄筋など主要な素材が安く推移している。
  ・もっとも、大きく売り込む動きはみられない。
  ・業種別では、景気動向に敏感な資源・素材が安く、金融も冴えない。反面、ハイテクは高い。

 2)8/20、上海総合▲38安、3,427(亜州リサーチより抜粋
  ・中国政府による締め付け強化スタンスが懸念される流れとなった。ネット企業や教育産業にとどまらず、規制の対象が一段と広がるとの観測がネガティブ材料だ。

  ・中国メディアがオンラインの厳格化を求める記事を掲載、白酒価格を巡り中国当局が酒造メーカー各社と8/20に会合を開いたと伝えられた。このほか、国家互聯網信息弁公室(国家インターネット情報弁室)は8/20、自動車メーカーに「無秩序なデータ収集」を抑制するように求めた。

  ・足元の中国景気指標の下振れを背景に、経済回復ペースの鈍化が警戒された。

  ・業種別では、酒造の下げが目立ち、自動車や家電・小売りなど消費関連株が大幅に値を下げ、医薬品も急落し、金融・エネルギー・インフラ関連・運輸も売られた。反面、建材株はしっかり。
 

●2.中国政府が、個人情報の管理強化、外国企業も対象(FNNより抜粋

 1)中国の全人代常務委員会は8/20、「個人情報保護法」を可決し、2021年11月から施行。

 2)習近平指導部は、安全保障や経済の理由から、個人のデータが国外に流失することを警戒しているが、中国国内のIT企業に対する統制も強めている。

 3)国外にデータを持ち出す際は、当局による審査などが必要となるほか、違反した企業に罰金が課され、業務停止などもある。日本企業も対応を迫られるとみられる。

●3.アリババ株、当局による締付け懸念が根強く、香港市場で上場来の安値(ブルームバーグ)

 1)8/19の香港株式市場で中国の電子商取引大手アリババ株が一時▲4.3%安と、年初来▲29%下落し、上場来安値を更新した。

 2)フードデリバリーを手掛ける美団は、8/19に▲7.2%下げる場面もあった。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)8/19、日経平均▲304円安、27,281円(ロイター)
  ・米株安を嫌気して軟調に始まり、売り一巡後は弱保ち合いになった。後場に、トヨタ自動車の9月4割減産報道があり、関連銘柄にも売りが広がって大幅安。
  ・米国市場でフィラデルフィア半導体株指数が3日続落したこともあり、半導体株が弱かったほか、中国景気の先行き懸念から海運株なども利益確定売りに押された。
  ・相場を取り巻く環境の不透明感から、医薬品や食料品などディフェンシブ銘柄が活況となった。

 2)8/20、日経平均▲267円安、27,013円
  ・前日、トヨタの大幅減産の発表を受け、企業業績の下振れ警戒感が一気に強まり。自動車関連株を中心に売りが広がった。
  ・トヨタは▲4%安となり、9,000円を下回った。日産など他の自動車株も売られ、自動車部品のデンソーなども大幅に下げた。海運株も大きく下落した。
  ・上海や香港などのアジア株相場や、米国株先物が軟調だったことも重荷だった。

●2.日本株、今週前半は反発して始まる可能性も、FRBジャクソンホール年次会合8/27に注目

 1)日経平均 vs NYダウとの比較
  (1)好決算発表シーズンで上昇、テーパリングで下落
   ・日経平均は上昇幅小さく・下落幅大きい:決算発表前比▲375円安・▲1.37%安
   ・NYダウは上昇幅大きく・下落幅小さい :決算発表前比+932ドル高・+2.74%高

  (2)決算発表パフォーマンス
    日経平均 7/20~8/11 27,388円 ⇒ 28,070 + 682円高・ +2.49%高
    NYダウ 7/19~8/16 33,962ドル⇒ 35,625  +1,663ドル高・+4.90%高

  (3)決算発表以後のテーパリング・パフォーマンス
    日経平均 8/11~8/20 28,070円 ⇒ 27,013  ▲1,057安 ・▲3.77%安
    NYダウ  8/16~8/19 35,625ドル⇒ 34,894 ▲ 731安 ・▲2.05%安

  (4)要因の違い
    ・カネ余りの違い(日銀はETF購入停止で余剰資金増無し、FBRは資金供給継続)
    ・企業業績の格差が大きい
    ・GDP成長率の差(日本は財政刺激弱く、日銀支援なし。米国は強烈に支援)
 
 2)今週前半に反発予想の要因
  (1)大幅安で8/20に節目の27,000円を付けたため、今週前半は反発を予想。
  (2)日銀のETF買い、公的年金の買い出動を意識した押し目買い。
  (3)NYダウがFRBの金融量的緩和縮小(テーパリング)を織り込んだとして、8/20に反発したことを受けての、買い戻し。
 
 3)ジャクソンホール(8/27)でのパウエルFRB議長の講演を控え、週後半は手控え予想

●3.トヨタ自動車、半導体不足で国内14工場の生産停止(共同通信)

 1)トヨタ自動車は8/19、半導体不足と東南アジアでもコロナ感染拡大で部品調達が滞り、9月まで国内14工場・26ラインの生産を最大22日間、止めると発表した。

 2)トヨタは、世界で▲36万台減産。(NHK)ただ、今年度の生産計画には一定程度織り込んでいたとして、変更せず、維持する。

●4.英競争当局は8/20、英アームの買収に「重大な懸念」「競争を阻害」と報告書(共同通信)

 1)米半導体大手エヌビディアが、ソフトバンクGから英アームを買収する計画について「競争上、重大な懸念がある」との報告書の概要を発表した。

 2)英当局は、エヌビディアの傘下に入れば、アームの技術がエヌビディアの競争企業に対して制限されるとの懸念を示した。

●5.気候変動で日本の複数地点で今世紀末に「海面上昇1m超」、NASAが水位予測(読売新聞)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・6902 デンソー    自動車部品で世界2位。業績好調。
 ・8015 豊田通商    トヨタ系総合商社。業績堅調。
 ・5911 横河ブリッジ  国土強靭化関連。株価堅調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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