ビジネスマンなら知っておきたい、トヨタとマツダ資本提携の舞台裏

2017年8月5日 09:45

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トヨタの豊田章男社長(左)とマツダの小飼雅道社長。(写真: トヨタ自動車の発表資料より)

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 トヨタとマツダは以前より業務提携を結んでいた。資本提携にまで踏み込む決断をしたことは、何を意味しているかが問題だ。

【2015年に業務提携】“婚約期間がもっとも楽しい”というトヨタとマツダの提携関係?

 マツダはクリーン・ディーゼルで排気ガス規制、燃費規制をクリアしてきた。世界では、2040年ごろを目途にEV、FCV、PHEVなどしか販売できなくなる情勢となってきた。中国、インドなどでは2030年が目途とも言われている。それぞれの国の事情は違うようだが、EVに向けて開発競争が厳しくなっている。

■全方位での備えが必要

 しかし前提として、ここで思い出しておいてほしい事柄がある。かつてFCV(水素燃料電池)車の開発で世界で各社が開発競争にしのぎを削ったが、そのとき巨額の燃料電池開発費用を捻出するために合従連合が叫ばれていた。しかし、開発にトヨタが成功してみるとFCV(水素燃料電池)の普及は進まず、パテントを公開するしかなかった。追従したのはホンダただ一社だった。

 この他、アウディの進める天然ガス(CNG)もある。
参考: 【アウディが考える「第3の道」】CNG(天然ガス)エンジン主力2/3、EV1/3

 EVについても、再生可能エネルギーによる大規模発電所での発電、配電が行き詰まりを見せている中で、ガソリンエンジンによる個別発電のほうが、熱効率が上回ってくる可能性があり、予断は禁物だ。
参考: 熱効率60%の内燃機関が可能か?(知恵の輪サイト)


 トヨタはHV(ハイブリッド)で世界をリードしている。日本・ヨーロッパ・北米の自動車各社は、その効率の高さに太刀打ち出来ない。ホンダのHVは歴史があるが、どうしてもトヨタを超えることが出来ないでいる。トヨタの「電子式CVT」と称している動力配分機構の、「シンプルかつ効率の高い」クラッチとミッション機能を統合した「エンジンとモータのトルクミックス・システム」は目立たず、あまり自動車ジャーナリストも気付かず評価されないが、「世紀の大発明」だ。

 ヨーロッパ、北米のEV移行は、トヨタのHV潰しともとれる規制内容で進んでいる。しかしドイツの再生可能エネルギーでの発電コストが膨大になり「失敗」と言われるほどの事態に至り、その後を追っている日本は、その動性に注目すべきだ。何度も言うが「EVの前提は再生可能エネルギーでの発電」だ。
参考: ドイツの「エネルギー転換」が大失敗だったと明らかに 実は環境のためにもなっていなかった(現代ビジネス【講談社】)


■トヨタ、マツダ両社のそれぞれのメリット?

 現在発表されている情報では、「総資金量」「EV技術」は両社が持ち寄ることでメリットがあると思われる。つまり北米新工場建設については、両社メリットがある。しかしEV技術ではトヨタは必ずしもマツダを必要としていない。むしろマツダは、EVの開発・生産・販売でトヨタの技術・資本力に頼らざるを得ないと見るべきだろう。それは電池開発に投下できる資金量にある。EVは電池次第だからだ。

 またマツダはEVに特化しなければならない資本力であろう。トヨタの力を借りれば、PHV・FCV・EV・HVなど「全方位」の準備が整うことになる。北米市場でのマツダの販売力を取り込み、マツダからも出資を受けて総資金でも節約でき、北米新工場を作れるのなら、トヨタにもメリットが大きい。

 トヨタにとって表面上のメリットは、マツダを取り込めば「世界一の生産・販売企業」の冠を得ることが出来ることだ。もう一社、スバル(富士重工)はトヨタにとって、マツダと同じメリットがある。HV、EVなどで後れを取っているスバルは、いずれトヨタと資本提携するしか生きる道はないものと見える。

 この3社は何れ連合するものと見ていたが、トヨタはカルロス・ゴーンのように急いでいない。なぜであろうか?

■M&Aで世界一を狙う日産・カルロス・ゴーン、技術開発で拡大するトヨタ・豊田章男

 カルロス・ゴーンはルノーの日産買収で日本に登場した経営者だ。その手法は「反日本的」と言って良いだろう。M&Aを行って業態の拡充を図り、コストカットの手法は「グローバル発注」だ。この方式では買収直後はコストカットが進み、業績が伸びやすいが、中長期的にはビジネスモデルそのものへの改善が進みにくく、利益率の向上が止まる傾向にある。そのためM&Aを続けざるを得ない傾向が出る。

 一方で、トヨタは伝統的な日本企業の形態を保っている。部品調達は「下請け」と呼ばれる企業を中心に行われている。業態の拡充は「技術開発」により商品力の高い製品を作り、売り上げを伸ばしていく「商売」そのものだ。コストカットも、常に「カイゼン」し、新しい「造り方」を開発して効率を上げていく、オーソドックスなものだ。そのため業績伸長のメカニズムが持続しているため、常に「商売」の姿勢を崩さなければ、安泰となる確率が高い。

 この両者の手法の違いは、欧米文化と日本文化の激突に見える。今回のマツダとトヨタの連携も、マツダではなく、トヨタの日本的手法を強く感じる。

 スバルは「富士重工」であり、資本提携には難しい問題もあるが、トヨタの日本式提携を頼りに、日本社会をけん引する経済法則を見せてほしいと願う。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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