株価上昇! 東京電力の今後は?

2025年8月23日 16:59

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●東電株が上昇気配

 東京電力ホールディングス(HD)の株価が、8月に入り中旬にかけて約25%上昇した。全体的な日本株の上昇もあったが、日経平均の上昇率(約6%)を大きく上回っている。

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 柏崎刈羽原発の再稼働により、約1000億円の収益改善効果があり、期待が株価を押し上げたと見られるが、それだけではなさそうだ。

 2011年の東日本大震災による福島第一原発の事故以降、経営難に陥り、一時は上場廃止も囁かれた東電だが、今後はどうなるのだろうか?

●苦境が続く東電

 原発事故以降、2011年から2013年まで、震災対応や廃炉関連の特別損失と火力発電のコスト増などで、連結純損失は約2兆5000億円超となった。

 2010年には1兆8314憶円あった利益剰余金も、2013年にはマイナス1兆円近くになった。

 2011年の年初は1994円だった株価も、年末には183円にまで下落した。

 2012年には原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)による約1兆円の出資で、事実上国有化となり、2013年以降は電気料金の値上げもあり収益は改善。2015年には黒字転換している。

 震災後、従業員数は2割削減し、不動産や関連株も売却。2015年からは中部電力と共同でJERAを設立し、燃料調達・火力発電事業を統合。調達コストの削減と効率化も実現した。

●従来の電力会社だけではない!東電への期待!?

 2026年3月期の最終損益は8576億円の赤字と見込まれる。新たな燃料デブリの費用、福島第一原発事故の損害賠償費などの特別損失が嵩んだ。

 柏崎刈羽原発の再稼働もまだ期待で留まっており、時期は未定である。

 福島第一原発事故は未だ道半ばで、原発再稼働への期待と電力料金の値上げによる収益改善だけで株価が上昇しているわけではない。

 NTTグループと共同で、千葉県印西市に2026年度末をめどとしてデータセンターを開設する計画が、2023年には発表された。

 2025年7月には東電の独自の技術により、データセンターの空調などの消費電力を4分の1に抑制することに成功したという、読売新聞の報道があった。

 従来の電力会社としての東電ではなく、データセンターの分野と省エネ企業としての期待が高まっている。

 収益面はまだまだ安心はできないが、データセンター関連と省エネ関連のニュースで今後も大きく株価が上昇する局面がありそうだ。(記事:森泰隆・記事一覧を見る

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