タブー期を脱した「ライドシェア議論」、本音で語れば見える結論!(2)

2023年11月18日 16:28

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 ライドシェアの議論が低迷してきた根本には、タクシー業界から沸き起こる反対の声があった。競合する新規参入者を排除しようとするのは、どんな業界でも見られることだから、タクシー業界が既得権益を盾に反対するのは当然のことだ。

【前回は】タブー期を脱した「ライドシェア議論」、本音で語れば見える結論!(1)

 現状のままライドシェアを受け入れれば、収入が激減してしまうと考えるタクシー会社社長の反対の声に力がこもるのは理解できる。タクシードライバーの反応はもう少し幅広いと思われるが、声を拾うことはできない。

 不便を託(かこ)つ利用者側には、声を上げる機会も場所もない。タクシー業界が声高に反対を叫ぶから、世の中が反対一辺倒ということはない。声の大きな少数に無言の多数が引っ張られるという、民主主義の負の一面がここでも顔を出す。

 現にタクシー業界は9月末の事業者大会で「安全・安心な輸送サービスを確保するため、ライドシェア解禁を全力で阻止する」と決議して、世の中の動きを牽制している。

 安全で安心な輸送サービスを確保することに異論はない。現在の大問題はタクシーが不足して「利便性」が甚だしく低下していることだ。利便性の確保には目もくれず、「全力で阻止する」姿勢の一辺倒では、問題の解決は望めない。タブー視しないで率直に意見を述べ合う場が必要だろう。

 遅ればせながら、岸田文雄首相は10月23日の所信表明演説で「深刻な社会問題」との認識を示した上で、「ライドシェアの課題に取り組む」と力説した。菅義偉前首相や河野太郎デジタル相らがライドシェア推進への姿勢を鮮明にしている。

 11月13日には、政府の規制改革推進会議の作業部会が、ライドシェアに関わる新法制定を検討するように政府に提言した。小泉進次郎元環境相は14日に、超党派でライドシェア導入の勉強会を立ち上げた。ようやく議論する流れが形成されつつある。

 既に京都府丹後市を始めとして、公共交通空白有償運送、福祉郵送運送、市町村運営優勝運送、過疎地有償運送などと呼びかたは様々ながら、実質ライドシェアと呼べるようなシステムが、各自治体の工夫で限定的に運用され、総数では80件を超えているようだ。

 日本全体で始まったライドシェアに対する胎動を、全国共通のものにする責任と力は政治にある。今こそ政治の有り難みを感じさせて欲しいものである。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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