タブー期を脱した「ライドシェア議論」、本音で語れば見える結論!(1)

2023年11月18日 16:27

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 日本でライドシェアに関する論議が本格化してきた。

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 導入をめぐる議論は以前からあった。中でもハイライトは、「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」で10兆円のファンドを創設したことで、世界の度肝を抜いた孫正義氏だろう。

 18年7月にザ・プリンス・パークタワー東京で法人向けの「SoftBank World 2018」というイベントが開催された。このイベントの講演で孫氏は、日本のライドシェアが具体化しないことを指して「こんなバカな国がいまだにあるとは・・・、国が未来の進化を自分で止めている」と語った。

 1経済人が持論を展開するにしては随分と過激な表現で、ご自身の状況を省みなければ、国の将来を憂う「国士」のような勇気ある発言だが残念なことに、当時の日本ではこの発言を「ポジジョン・トーク」と受け止めたかのように、その後の波及効果はほとんどなかった。

 「ポジション・トーク」とは、「自分に有利なテーマを取り上げて話し、都合の悪いことには触れないこと」を意味する。日本の慣用句に例えると「我田引水」に近い。

 イベントが開催される以前から、ソフトバンクグループ(SBG)はライドシェアで米国最大手のウーバーの筆頭株主となり、東南アジアのグラブや中国の滴滴出行をも傘下に収めていた。

 日本でライドシェアが本格化すると、SBGに多大のメリットを生み出す。本気でライドシェアの推進を願っていた人達にとっては、「贔屓の引き倒し」のようなものだから、腰が引けたのも無理はない。見えすいたポジション・トークが裏目に出た一例だ。

 その後、新型コロナウイルスによる混乱で人々の外出が大幅に減少し、タクシードライバーの受難が始まった。顧客が減って収入が落ち込み、転職を余儀なくされる人が相次いだ。

 コロナ騒動が収まったからと言って、当時転職した人達がタクシードライバーに復帰するほど単純な話ではない。人が転職するには大きな決断が必要だ。追い詰められてやむ無く転職し、今の職場にようやく馴染んだ人達が、需要が戻ったからという理由だけでタクシードライバーに復帰することは難しい。

 かくして、クルマはあるがドライバーが足りないのでタクシーが不足するという状態に至った。折り悪しく世の中は人手不足だから、頭数を揃えること自体が困難になっていた(続く)。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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