土星の衛星エンケラドゥスで生命必須元素であるリンを検出 東工大ら

2023年6月22日 08:40

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エンケラドス内部の様子。岩石コアと触れ合う地下海が存在し、海底には熱水噴出孔が存在している。((c) NASA/JPL 画像: 東京工業大学の発表資料より)

エンケラドス内部の様子。岩石コアと触れ合う地下海が存在し、海底には熱水噴出孔が存在している。((c) NASA/JPL 画像: 東京工業大学の発表資料より)[写真拡大]

 東京工業大学は15日、土星の衛星エンケラドゥスにおいて、生命の誕生に必須となる元素であるリンの存在を確認したと、発表した。

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 エンケラドゥスは、直径わずか500kmの天体に過ぎない。だが地下に海を有し、高頻度で宇宙空間に地下海水を噴出していることが確認されており、生命誕生に必要な水をたたえた星として注目を浴びている。

 今回の研究は、NASA、ESA、東工大、海洋研究開発機構で構成される国際研究チームによって進められてきたもので、探査機カッシーニによる観測データの分析によって、判明した。

 リンが濃縮された水環境が地球外で発見されたのは初めてとなる。さらに日本チームでは、エンケラドゥス内部の環境を地上のラボで再現する実験を行い、リン濃集要因が、アルカリ性かつ高炭酸濃度の海水と岩石との反応にあることも突き止めている。

 今回エンケラドゥスで確認されたリンは、地球海水の数千から数万倍という高濃度で濃集しているという。リンはDNAや細胞膜などの材料となる地球生命にとっての最重要元素だが、天然での存在量は極めて低い。

 つまり今回の発見により、エンケラドゥスでも地球と似た構成分子を持つ生命が誕生している可能性が、期待されるのだ。同時に、原始地球における生命誕生の場面が、今回観測データによって確認されたエンケラドゥスと同じような環境にあった可能性を示唆する、非常に意義の高いものだ。

 地球以外の星で水の存在やリンの存在が確かめられただけで、大騒ぎするのははしゃぎすぎだと考える一般人も多いだろう。だが地球上では、酸素が全くない場所や水も沸騰してしまうような高温環境など、非常に過酷な環境においても、最近になって生命の存在が確認されている。そのような環境で生命が誕生していてもおかしくないという証拠も揃いつつあることも、忘れないで欲しい。

 なお今回の研究成果は、6月15日付の「Nature」に掲載されている。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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