恒星内部の核融合で生成されないホウ素 宇宙線観測で起源解明へ 早大らの研究

2022年12月23日 08:42

印刷

「きぼう」船外実験プラットフォームに設置されたCALET。(画像: 早稲田大学の発表資料より)

「きぼう」船外実験プラットフォームに設置されたCALET。(画像: 早稲田大学の発表資料より)[写真拡大]

 原子番号26の鉄までの元素は、恒星内部の核融合反応によって生成され、それよりも原子番号の大きな元素は、超新星爆発によって生成されたというのが一般常識だ。だがリチウム、ベリリウム、ホウ素などの原子は恒星内部の核融合では生成されず、宇宙線が銀河系内を伝播する間に星間物質と衝突して二次的に生成されたと考えられている。

【こちらも】早大ら、きぼう実験棟の「CALET」で高精度のスペクトル硬化を観測

 一方宇宙線は、星の進化の過程で核融合反応により生成された元素が、進化の最終段階で超新星爆発などにより加速され、宇宙空間に飛び散ったものだ。

 リチウム、ベリリウム、ホウ素などがなぜ現在の量に落ち着いたのか、これまでは具体的かつ定量的な答えが得られていなかった。早稲田大学は20日、国際宇宙ステーション搭載の高エネルギー電子・ガンマ線観測装置(CALET)による宇宙線の精密測定を通じて、ホウ素の生成メカニズム解明に迫る知見を得たと発表した。

 今回の研究はイタリア・シエナ大学や神奈川大学、立命館大学、東京大学宇宙線研究所などとの国際共同研究グループにより実施。研究成果は、12月16日(現地時間)付のアメリカ物理学会発行「Physical Review Letters」に、オンライン掲載された。

 ホウ素(元素記号: B)は炭素(元素記号: C)の星間物質との相互作用により生成され、両者の比(B/C)は、宇宙線の散乱に寄与する銀河磁場の構造や、宇宙線が衝突を起こす星間物質の分布を反映する。

 銀河は、超新星爆発によって宇宙線が直線的に進む領域(加速領域: B/Cが低い)と、銀河磁場の影響で宇宙線が散乱されて進む領域(散乱領域: B/Cが高い)がある。これらの領域の具体的な分布を知るために、銀河系内の様々な領域でのB/Cの高精度な観測が必要になるのだ。

 今回の研究では、カロリメータ方式の宇宙線電子望遠鏡を使用。単独の検出器として、核子あたりのエネルギーで8.4ギガ電子ボルトから3.8テラ電子ボルトという広いエネルギー領域で、B/C比を高精度に観測することに成功した。

 その結果、従来未解決であった加速領域(超新星残骸)でのホウ素生成量の定量的評価を可能とした。今後の観測数が増えれば、地球に存在するホウ素の量がなぜ現在の値に落ち着いたのかという謎も解明されていくことだろう。(記事:cedar3・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事