スルガ銀行にアパマンローンの不正融資疑惑 かじ取り次第で、他の金融機関に波及も!

2022年3月6日 15:20

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 シェアハウス「かぼちゃの馬車」に絡む不正融資問題で、背負い込んだ悪評の沈静化が進んでいたスルガ銀行に、再び不動産融資に絡む不正行為が指摘されている。

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 シェアハウス問題は2017年10月、サブリース会社が一方的な「サブリース賃料の改定」(保証賃料の引下げ通知)を送り付けたことから、オーナーにパニックを引き起こして一気に社会問題化した。シェアハウス「かぼちゃの馬車」への融資は、1200人を越えるオーナーに対して合計2000憶円超が実行されていた。

 共用スペースが存在しないから、シェアハウスと呼ぶに値しない物件を売るために、販売会社とスルガ銀行の職員が結託して融資書類を捏造した、という前代未聞の不正融資問題だ。

 当時、地方銀行の対総資産業務純益率が平均で0.3%であったのに対して、スルガ銀行は1.42%というけた違いの優良経営で名を馳せていた。金融庁長官だった森信親氏は「地銀が創意工夫して作り上げた新しいビジネスモデルだ」と、度々絶賛していたと言う。他にも評論家の佐高信氏を始めとして、スルガ銀行を持ち上げていた著名人は少なくない。

 ボリュームと金利に関しては銀行に都合良く組み立てた融資を、ハチャメチャに押し付けまくって業績を伸ばしていた頃だから、地銀の枠に収まらない利益を上げるのは当然だった。

 シェアハウス問題は2020年3月~21年3月の間に、500人超のオーナーとスルガ銀行が「オーナーがシェアハウスを手放し、同時にスルガ銀行は債務を帳消しにする」という和解が成立して沈静化しつつある。

 今回、スルガ銀行が対峙しているのは、ローンで1棟物のアパートやマンションを購入した(オーナーに言わせると”購入させられた”)300人を越えるオーナーの救済を目的に、約50人の弁護士で構成された「スルガ銀行不正融資被害弁護団」だ。

 建物が一定の枠に収まるシェアハウスと違って、1棟物のアパートやマンションは建物の有り様が相当幅が広いが、不正と伝えられている手口にはそれ程の違いはない。入室状況や家賃収入などの物件情報がでたらめで、オーナーがスルガ銀行に提出した銀行口座の残高が大幅に水増しされ、物件価格が相場を大きく上回っているなど、相当悪質な状況と言える。

 それに加えて、4.5%という高金利のローンであるため、想定利回りを確保するどころか、多額の赤字に苦しむ例が多い

 シェアハウスローンとアパマンローンの大きな違いは、シェアハウスローンがまるでスルガ銀行の専売商品のようだったのに対して、アパマンローンは日本中の金融機関が扱っているローンだということだろう。

 スルガ銀行のように、不適切な役割を主導的に果たしている金融機関は少ないだろうが、アパマン建設業者が発掘してきた案件に、ローン付けをする形で関わって来た金融機関は多い。畑の真ん中に経過年数が似通って、入所者の少ない何棟ものアパートが林立するという、異様な風景は特異な話ではない。今までも告発の声を上げるオーナーは確かに存在していたが、「自己責任」を問う声に委縮して、孤立していたのが実情だろう。

 今回はスルガ銀行の対応次第で、アパマンローンの不適切な扱いに関して、日本中の金融機関が追及されることになりかねない。

 スルガ銀行がADR(裁判外紛争解決手続)で不調に終わった62名の対象物件に対する競売手続を、2021年12月から妙に手際よく急速に進めている。背景に、「金融庁が他行への飛び火を気にしている」ことへの配慮があるとしたら、「誰を守るべきか」について金融庁の勘違いがありそうだ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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