TATERU急成長・大幅赤転の軌跡と、再建の足音の有無 (上)

2021年1月12日 16:33

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 TATERUは、真に再建できるのか。大きな曲がり角は2018年夏場のことだった。「国交省は7月に、1週間の業務停止命令の方針を固めた」と、伝えられたことが引き金だった。その後のTATERUの凋落ぶりは、株価に収益動向に如実に反映されている。

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 18年12月期初値1671円(18年1月4日始値)から4月にかけて2549円まで上値追いの動きが、件の8月を契機に急変。9月には327円まで売りたたかれ、以降長らくのジリ貧相場が続き、本校作成中の時価は170円余。収益も18年12月期は売上高こそ18.1%増収も「80%近い営業減益」、19年1月期には売上激減/97億円近い営業赤字と坂を転げ落ちた。

 TATERUは06年に、現社長の古木大咲氏により創業された。そして1年を経たず、インベスターズに社名変更。時代の好環境を背景に、急成長の階段を昇り始めた。

 リーマン・ショック前のプチバブル下。不動産価格上昇の中で、付加価値の高いデザイナーズマンションの企画・設計・販売を手掛け「富裕層の懐」に飛び込んだ。業界を知るアナリストは、その後も大幅な増収・増益を継続しえたのは「クラウドファンディングの解禁(14年)」だと指摘する。解禁の年、社名をインベスターズクラウドに変更している。

 16年には「10万円からできる不動産投資」と銘打った、不動産投資型クラウドファンディングのプラットフォーム(TATERU)をリリースし、事業を拡大していった。そして18年4月には「新しさを打ち出すためのブランド統一」という理由で、社名もTATERUとした。

 TATERUは「成長率2%」を掲げたアベノミクスの基でその牽引役となった、日銀の黒田(東彦)体制下の「異次元的金融緩和/超低金利時代」で急成長を遂げた1社と捉えることができる。超低金利は、比較的好利回りの不動産市場に資金が集まる状況を生み出したと言えるからである。

 その副作用は周知のとおり、数々の不祥事をも産み落とした。レオパレス21の施工不良問題や固定型住宅ローン「フラット35」を巡る不正利用問題、そして地銀の優良行の名を冠に抱いていたはずのスルガ銀行の不適切融資問題。

 TATERUの躓きもスルガ銀行と同様だった。融資申請を巧みに操る「不正融資」の相次ぐ発覚である。事実が発覚後に設けられた調査委員会の報告書には、古木社長の名前こそ登場しないが「社員に対する過大なノルマもあった」と記載されていた。(記事:千葉明・記事一覧を見る

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