相場展望9月27日 恒大「破綻」が示唆する、中国経済の先細り 『中国版、失われた20年』になる可能性

2021年9月27日 10:16

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)9/23、NYダウ+506ドル高、34,764ドル(日経新聞より抜粋
  ・中国不動産大手・中国恒大集団の債務問題への警戒感がひとまず和らぎ、米連邦公開市場委員会(FOMC)を無難に通過したことで、買い安心感から景気敏感株を中心に幅広い銘柄が浮上した。
  ・FRBのパウエル議長が、中国恒大問題で見解を問われ「米中の金融環境は違う」との見解を示したことも安心感につながった。
  ・FOMCはほぼ想定通りの内容で、当面は緩和的な金融環境が続くと受け止めた。

【前回は】相場展望9月23日 中国恒大集団の影響は限定的、日本「住専」似か 米国テーパリングは想定内で11月実施の可能性

 2)9/24、NYダウ+33ドル高、34,798ドル(日経新聞)
  ・米金融政策の正常化が進む(テーパリングの実施)との見方が改めて意識された。クリーブランド連銀やカンザスシティ連銀の総裁が、「早期のテーパリングを支持し、2022年末までに利上げ条件が整う」と予想した。
  ・金利上昇で利ザヤ改善の期待から金融株や、底堅い個人消費が続くとの見方から消費関連株が買われた。
  ・中国人民銀行(中央銀行)による仮想通貨の決済や取引情報の全面禁止を受けて、ビットコイン相場が下落したことが、投資家の警戒につながった。

●2.米9月製造業PMIは60.5と、予想61.0・8月61.1を下回る(フィスコ)

●3.米10年債利回りは9/23、1.4%台に上昇、FRBの量的緩和の縮小観測で(フィスコ)

●4.「米FRBは、インフレ抑制で後手に回るだろう」と元高官が指摘(ブルームバーグより抜粋

 1)元高官とは、
  ・元FRB副議長のロジャー・ファーガソン氏
  ・前ニューヨーク連銀総裁のウィリアム・ダドリー氏

 2)テーパリング(金融緩和の縮小)と政策金利の引上げについて、物価上昇圧力が高まるなかで、FRBの対応が遅れるのはほぼ確実、との見解を示した。さらに、ファーガソン氏は、現在のFRBでは、「テーパリングは、インフレが明白な危機になるまで、待つことになる」と述べた。また、ダドリー氏は、「現FRBのスタンスは、初動が遅れるため、『通常以上の引締め』を強いられることで、経済のハードランディングのリスクを高める」と指摘した。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)9/23、上海総合+13高、3,642(株探)
  ・中国恒大集団の経営不安が一服したことや、前日の米FOMCを無難に通過したことを受け、+1.15%高となったが、次第に上げ幅を縮小し+0.38%高で引けた。
  ・業種別では、鉄鋼・電力が上昇を牽引したが、通信機器・自動車などが下落した。

 2)9/24、上海総合▲29安、3,613(亜州リサーチ)
  ・中国不動産の中国恒大集団の債務問題を巡る懸念が強まって、投資家のセンチメントがやや悪化する流れとなった。
  ・消息筋情報によると、中国中央政府は地方政府に対し、債務不履行リスクに直面する中国恒大集団の経営破綻に備えるよう指示した模様だ。
  ・また、中国産業への引締めの警戒感が依然としてくすぶっていることも重しとなっている。
  ・業種別では、セメントや鉄鋼・非鉄など素材関連の下げが目立つ。反面、食品飲料や酒造・小売りなど消費関連株の一角が物色された。

●2.中国恒大「破綻」が示唆する、『中国版、失われた20年』になる可能性【一考察】

 ~中国恒大「破綻」問題の根っこは、中国の低成長経済への転換の象徴的出来事~

 1)中国経済は5つの成長エンジンの推力で高度成長してきた
  (1)不動産投資の拡大  
  (2)インフラ投資の拡充
  (3)世界の工場の進展
  (4)中国製造2025による高付加価値製品の比率向上
  (5)地方政府の財政拡大による投資牽引

 2)中国成長を支えた条件に変調の兆し
  (1)住宅価格の高騰  2021年の年収比は、深圳58倍、北京56倍、上海46倍、東京で10倍強。
  (2)結婚もできない  中国では男性側が住居を用意する考えだが、高過ぎて買えない。
  (3)人口減少     人口増加率低下で、人口マイナス転換が近づく。購買力の減少。
  (4)出生率の低下   家族・出産意識の変化、教育費の高騰が阻害。
  (5)生産労働人口減少 同時に高齢化の急伸。
  (6)若者労働意識変化 豊かさ・働くことへの希望喪失。

 3)住宅需要の低下が及ぼす影響
  (1)住宅保有比率の高さ 中国では約9割で今後需要に低下圧力、日米欧は約6割。 ⇒ 中国GDPの2割を占める不動産業界の低迷につながる。 ⇒ 中国GDPに負の作用。

 4)中国経済成長率の鈍化
  (1)労働生産人口の減少
  (2)高齢化の急速上昇
  (3)住宅・自動車成長の鈍化
  (4)コストアップによる競争力低下

 5)中国経済は5つの成長エンジンの推力で高度成長してきたが、経済減速は避けられず
  (1)不動産投資  中国経済のメインエンジンとして広汎な産業の血流を循環させた。しかし、住宅保有率は約9割となり、今後は建て替え需要に移行し、住宅市場としては大幅縮小が見込まれる。
  (2)インフラ投資 高速鉄道建設・高速道路含め、より付加価値の低い投資に限られる。
  (3)世界の工場  労務費の高騰、米国の高関税、アジアに転出など競争力が低下。
  (4)中国製造2025 半導体など製造品の高度化・高付加価値化を目指してきたが、米国から足枷を掛けられ、大幅なペースダウン。
  (5)地方政府の財政 地域開発で上昇させた地価から、地方政府の財政を賄ってきた。地方政府は、地価低下で財政赤字拡大し、新規開発が低調となる。

 6)世界から孤立化の進展
  (1)大中華思想が招く、世界各国との摩擦。
  (2)WTO加盟は、中国の貿易輸出を飛躍的に伸ばしたツールであるが、都合の悪い条件には理屈をつけて先送りしてきた。つまり、中国は享受を精一杯受け取るが、条件の義務は放置してきた。

 7)今後、土地価格の低下、住宅価格の低下が予想される。

 8)中国経済に大型企業の綻びが相次ぐ
  (1)海航集団
  (2)華融資産管理
  (3)中国恒大集団

 8)今後の中国経済の先行きは長期低迷に入った可能性
  (1)1990年以降から経済低迷した日本に似通った環境に近づいている。
  (2)中国の不動産市況悪化は、中国経済の成長を損ねるリスクがある。
   ・日本の1990年のマンション価格の年収倍率は、東京18.1倍⇒現在10倍強。
   ・中国の倍率は、日本のバブル時よりはるかに高く、不動産市況は長期低迷の可能性がある。2021年のマンション価格、深圳58倍、北京55.8倍、上海45.6倍、広州40.7倍。中国の都市部の個人保有比率は9割と、日本の6割より高いため、いったん冷え込むと日本以上に需要ニーズに急ブレーキがかかる怖さがある。
  (3)中国の地方政府の財政赤字が急速に膨らみ、後ろ向きの債務・雇用対策に追われ、経済成長どころではなくなる恐れがある。
  (4)中国共産党・政府による規制強化
   ・IT、教育、不動産業界などに負の圧力強化が経済に与える影響を懸念する。

●3.関係筋:中国当局は地方政府に対し恒大集団の破綻可能性に備えるよう指示(フィスコ)

 1)米ダウ・ジョーンズの報道(9/23、19:50分)による。

 2)一部の報道で、「中国当局は中国恒大集団の破綻準備指示」(DZHフィナンシャル)

 3)米ウォール・ストリート・ジャーナルが9/23に報じた「備えの指示」(時事通信より抜粋
  ・恒大集団が、秩序だった処理ができない場合に限って介入するよう指示。社会不安の回避。
  ・住宅購入者や経済全体への波及抑制。
  ・会計・法律の専門家を集めて、恒大の地元事業の財務調査を行う。
  ・地元の国有企業や不動産開発会社が、恒大のプロジェクトを引き継ぐ準備をする。
  ・法執行チームを組織して、市民の怒りや抗議活動を監視する。
 以上の内容から、当局は同社の救済に消極的な姿勢を示唆したと受け止められている。

●4.中国当局は9/23、中国恒大にドル建て債で目先のデフォルト回避を指示(ブルームバーグより抜粋

 1)ドル建て社債で9/23に金利支払いを迎えるのは8,350万ドル(約92億円)。
 2)中国恒大のドル建て社債を保有する2者は、香港時間9/23午後5時の時点で、9/23に受け取りの利息をまだ受けていないと、明らかにした。
 3)社債の約款によると、利払いができない場合、デフォルト(債務不履行)を宣言されるまでに、30日の猶予期間がある。
 4)中国当局は、金融市場を揺るがし、成長の足枷となり得る同社の破綻を、政府が当面回避したい考えであることが窺える。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)9/23、祝日「秋分の日」で、休場

 2)9/24、日経平均+609円高、30,248円
  ・足元で世界的に株式市場の下押し要因となっていた、中国不動産大手の中国恒大集団の債務問題を巡る不安がいったん後退し、短期筋による株価指数先物の買い戻しが先行した。
  ・円安・ドル高の進行も輸出関連株への買い安心感を誘い、主力株はほぼ全面高となった。
  ・自民党総裁選や衆院選を控えるなか、日本株の先高観は根強いとの声も聞かれた。

●2.日本株は下落幅の約6割戻したので、今後の展開に注目したい

 1)特に、8/20以降、日経平均を買い仕掛けて急上昇を牽引したバークレイズの先物動向には注意したい。
                 8/18         9/24
  バークレイズの先物買残枚数 ▲1,851枚売残 ⇒ +99,002枚買残

 2)バークレイズが逆回転した時のリスクは大きいと予想されるので、警戒したい。

●3.中国恒大集団のデフォルト問題次第では、日本株、特に中国関連銘柄の下落リスクに注意

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4716 日本オラクル     業績好調
 ・7564 ワークマン      業績堅調
 ・3038 神戸物産       業績好調
 ・7532 パン・パシフィック  業績堅調

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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