相場展望6月24日 今回の下落は『不安心理のガス抜き』で、 『正常化に向かって徐々に慣れさせる』FRBの手法か?

2021年6月24日 09:36

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)6/21、NYダウ+586ドル高、33,876ドル
  ・前週の下落が過剰反応との見方が出たうえ、世界経済の力強い回復が株高を支えるとの見方が改めて広がった。
  ・前週後半の下落相場が行き過ぎとの見方が広がり、下げがきつかった景気敏感株が幅広く買われた。

【前回は】相場展望6月21日 米2年/10年国債利回り差縮小⇒景気後退?⇒株下落? 米国株の変調は、日本株にとってマイナス

 2)6/22、NYダウ+68ドル高、33,945ドル(日経新聞より抜粋
  ・パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の議会証言で、早期利上げを懸念させる発言がなく、株の買い安心感につながった。主力ハイテク株が買われ、ナスダック総合指数は過去最高値を更新した。景気敏感株や消費関連株の一角も買われた。
  ・パウエル議長は、インフレ率の高まりについて「一過性の供給制約が和らげれば低下していく」と述べた。

 3)6/23、NYダウ▲71ドル安、33,874ドル(日経新聞)
  ・6/22のパウエルFRB議長の議会証言では金融引き締めを急がない姿勢を示し、米景気に配慮する姿勢を示したことから、利上げ観測が後退し、買いが先行した。
  ・ただ、今週に入って上昇が目立った景気敏感株の一角に利益確定売りが出て、相場の上値を抑えている。
  ・ハイテク株が多いナスダック総合指数は+0.13%高と小幅だが3日続伸。

■2.米国株式の今回の下落は『不安感のガス抜き』、毎月約13.2兆円の市場への資金供給続く

 1)NYダウの6/18大幅安(▲533ドル安)と翌営業日6/21の大幅反騰(+586ドル高)。
 
 2)『今回の下落は、金融政策転換への不透明感で溜まったガス抜き』を狙った、FRB高官(セントルイス連銀総裁)発言によるショック療法と思われる。6/22のパウエルFRB議長による下院議会証言では、『金融引き締めを急がない姿勢』を示し、景気に配慮する発言をして、FRB高官の発言を打ち消している。また、毎月1,200億ドル(約13.2兆円)もの市場への資金供給継続に変更なし。

 3)VIX指数(恐怖)は、6/18に20.7と、20を超えると不安心理が高まった状態とされ、投資家の先安懸念を示す。しかし、6/23のVIX指数は16.32と、市場の不安心理が一掃された状況に戻っている。

 4)低金利と過剰マネーがまだ続くとする楽観的投資家が多いため、注意喚起したと見る。

 5)重要イベントに注目
  ・6/22、パウエルFRB議長の議会証言 : 緩和には慎重で景気に配慮した発言
  ・6/25、米個人消費支出(PCE)発表  : FRBが重視する指数で注目
  ・7/01、米6月ISM製造業景況感指数
  ・7/02、米6月雇用統計

 6)長期金利低下金利・短期金利上昇による、金利差の縮小 ⇒ 景気後退を示唆か?
  ・10年国債利回り  1.3%台に一時低下
  ・2年国債利回り   0.25%台に上昇

 7)商品価格の下落は、景気後退を示唆か? 一時的か?
  ・木材価格    1,700ドル⇒800ドル台
  ・金       1,903ドル⇒1,770ドル
  ・銅        467ドル⇒ 421ドル

●3.パウエルFRB議長の発言:「米経済は持続的改善」「物価はここ数ヵ月で顕著に上昇」

 1)6/21、発言内容の要旨(ロイターより抜粋
  (1)経済は、新型コロナによる影響から「持続的に改善」。
  (2)労働市場は、「伸びも継続」。
  (3)インフレ率は、「ここ数ヵ月で顕著に上昇」。
  (4)現行の金融政策や、焦点のテーパリング(量的緩和の縮小)については、詳しくは触れなかった。

 2)6/22、米下院議会の証言用原稿から抜粋
  (1)インフレ率の高進は実際に、供給不均衡の解消で弱まる可能性が高い。
  (2)低賃金労働者や黒人、ヒスパニック系の人々が依然として失業の影響を受けている。
  (3)景気回復は依然として不均一であると懸念。
  (4)ワクチン接種が継続され、経済の再開が進むにつれ、雇用の伸びは「今後数ヵ月で上向く」と予想される一方、「パンデミック(世界的大流行)は引き続きリスクをもたらしている。
  (5)FRBは、回復が完了するまでの間、経済を支えるためにっ出来る限りのことを行う、と強調。

●4.米6月マークイットPMI(購買担当者景気指数)(フィスコ)

 1)       6月   5月
  製造業PMI    62.6   62.1  低下予想に対して上昇、2018年来で最高
  サービス業PMI  64.8   70.4  予想以上に低下
  総合PMI     63.9   68.7  前月からの低下は6ヵ月ぶり

 2)米経済は、新型コロナワクチン接種が進み急回復が続く一方、人手不足や輸送の遅れ、賃金上昇含むコスト上昇が、サービス業の重荷となっている。(日経新聞)

 3)製造業も「倉庫の在庫が憂慮すべき速度で減少」しており、今後指数の伸びが重くなる可能性がある。

●5.米5月新築住宅販売件数76.9万戸と、4月81.7万戸からの増加予想に反し減少(フィスコ)

●6.米・5月中古住宅販売件数580万戸と、予想573万戸を上回ったが、4月585万戸から減少

 1)全米不動産業者協会(NAR)発表、6月は前月比▲0.9%減少し、4月来で最小(フィスコ)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)6/21、上海総合指数+4高、3,529(亜州リサーチ)
  ・中国10年国利回りが6月3日以来の水準に急低下したのを好感し、割高感の薄れたハイテク株など高PER(株価収益率)の成長株と医薬品株が物色された。
  ・米利上げの前倒し観測が浮上するなど、外部環境の不透明感を嫌気した売りも出た。

 2)6/22、上海総合指数+28高、3,557
  ・昨夜の米国株高や原油上昇も好感し、エネルギー関連株が上げを牽引し、自動車株も上昇した。
  ・半面、不動産株、証券株、防衛関連株は冴えなかった。

 3)6/23、上海総合指数+8高、3,566
  ・長期金利上昇が一服し好感したが、米中対立激化の懸念がくすぶり、上値は限定的。
  ・ハイテク関連株の上げが目立ち、自動車株もしっかり。
  ・半面、銀行株は冴えない。

●2.中国GDP成長率が鈍化傾向(現代ビジネス)

 1)2020年10~12月⇒2021年1~3月
  +3.2%      +0.6%

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)6/21、日経平均▲953円安、28,010円(日経新聞)
  ・前週末、FRB高官が「2022年利上げ」に言及したことをきっかけに米株式市場が大幅下落したのを受け、東京市場でも投資家のリスク回避姿勢が鮮明となり、幅広い銘柄で売り優勢となった。
  ・米国で長期金利が低下し、短期金利が上昇したことが、景気鈍化の兆しとして警戒感が高まり、景気過熱や物価上昇を前提とした取引に修正を余儀なくされた投資家の巻き戻しが東京市場に波及したとの見方があった。

 2)6/22、日経平均+873円高、28,884円
  ・米国株の急騰を好感し、朝方から日本株は急反発で始まった。(ロイター)前日の日銀ETFの約2ヵ月ぶり買いで安心感につながった。前日の下げを演じた売り方の買戻しもあり、相場が押し上げられた側面もある。
  ・高値付近では戻り売りに上値を抑えられる場面もあり、前日の下げ(▲953円)を帳消しにはできなかった。(日経新聞)

 3)6/23、日経平均▲9円安、28,874円(日経新聞)
  ・前日に今年最大の上げ幅を記録したが、米景気や金融政策の先行きに対する不透明感が拭えず、戻り待ちの売りがやや優勢になった。
  ・医薬品や景気敏感株の一角が売られた。
  ・パウエル米連邦公開市場委員会(FRB)議長の議会証言が、早期利上げ懸念を打ち消す内容ではなかったと市場で受け止められ、朝高ながら次第に失速した。

●2.日本株は『米国株連動と、外資短期筋の売り仕掛け&アルゴ売り指令』で下落

 1)日本株は、NYダウと連動する相関関係が高い。

 2)もともと日本株には下落要因はなく、米国株の早期利上げ観測で外資系短期筋が主導したもの。従って、日経平均の大幅反発は自律反発の範囲内であって、踏み上げ相場にならない。日本株が上昇するためには、米国株の上昇が前提となる。

 3)日銀ETFは、6/21TOPIX前引け▲2.55%下落で、701億円購入
  ・購入基準は▲2%超の下落対応に変わった可能性がある。
  ・日銀ETF購入効果もあって、6/22は+853円高と大きく反発した。しかし、NYダウは下げ幅を上回る反発に対し、日経平均は下げ幅を埋めきれなかった。ここに、日本株は米国株に対する力弱さが端的に表している。
  ・6/22の日銀ETF買いで、外資系短期筋は日本株の売り仕掛けがしづらくなったが、逆に買い仕掛けの環境ではない。当面は、米国株との連動相場が続く可能性が高い。

 4)6/21の下落は、当面の『ガス抜き』で収まる可能性がある
  ・日米欧の中央銀行がテーパリングに傾くなか、市場に『過剰マネーであることの恐怖感』
      が醸し出されていた。
      その不安感のガスが溜まっていただけに、『ガス抜き』が必要だったと考えられる。
   5)今後の見通し : 『株価ボラティリティの高まりは、始まった』
     ・2020年3月から始まったパンデミック後の上昇相場は、『ゼロ金利と過剰マネー』が
      引き起こした。
     ・パンデミック後の経済回復が見えてくると、
      『正常化に向かって、金利上昇と過剰マネーの収縮』へと駒を進めることになる。
     ・世界の中央銀行が引き起こした金融緩和は、すでに収束に向かい始めている。
      日米欧の中央銀行がテーパリング(量的緩和の縮小)に向かって、すでに第1歩を
      おそるおそる踏み出している。
     ・日銀でさえ、金融正常化に向かっての3月末に「ETF(上場投資信託)購入」の政策転換を実施している。

     「ETF購入方針の変更」 : 購入するETFをTOPIX型に1本化(日経平均型の除外)これにより、日経平均株価上昇を狙った投機筋の動きを封じた効果が発揮して、日経平均は下落した。
     「ETF購入の事実上停止」:4月以降、ETFを購入したのは4/21と6/21の各701億円のみ行っただけで、日経平均が大幅下落した時に限定。日経平均の買い支え力が薄まった。

     ・以上の環境変化から『株価のボラティリティの高まりは、始まった』と受け止める。
 

●3.企業動向

 1)千代田化工  グリーン水素製造プラントをENEOSと共同開発 (フィスコ)
          電気分解独自技術で水素価格を現在の3分の1のキロ330円目指す
 2)東芝     血液1滴からガン判断事業化へ       (時事通信)
 3)東武百貨店  早期退職200人募集

●4.企業業績

 1)メルカリ   2021年6月期純利益+50億円、上場以来で初の黒字(東京商工リサーチ)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4528 小野薬品 医薬品専業。業績堅調。
 ・2531 宝    傘下に宝酒造、タカラバイオ。業績堅調。
 ・9005 東急   パンデミック後の旅客回復、不動産好転期待。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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