相場展望5月31日 ワクチン接種期待で大幅上昇も、世界はテーパリングへ 『不況の株高 ⇒ 好景気の株安』に注意

2021年5月31日 09:02

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)5/27、NYダウ+141ドル高、34,464ドル
  ・米失業保険申請件数が市場予想より少なく改善し、雇用回復が続いていることで景気敏感株を中心に買い優勢だった。
  ・NYダウは一時+285ドルに上げ幅を広げたが、長期金利が上昇するとハイテク株に下げ銘柄が多くなった。

【前回は】相場展望5月27日 冴えない相場展開は、テーパリングを予期したか? 米経済指標(5/28個人消費支出、6/4雇用統計)に注目

 2)5/28、NYダウ+64ドル高、34,529ドル
  ・顧客情報管理のセールスフォースが好決算を発表し、1銘柄でNYダウを約80ドル押し上げた。
  ・もっとも、NYダウは過去最高値圏にあり、一時+150ドルを超えたが、3連休前ということもあり短期的な利益確定売りが出て上値は重かった。

 3)5/31、「メモリアルデー」の祝日のため、休場

●2.米株式市場の上昇は、テーパリング議論開始発言で、FRB(米連邦準備制度理事会)が後手に回る懸念が沈静化したため

 1)テーパリング(量的緩和の段階的縮小)は、(1)雇用と(2)インフレの見通し次第と思われる
  注目の統計指標
  ・雇用統計           6/04発表
  ・5月消費者物価指数(CPI)  6/10発表

 2)注目の会合
  ・米連邦公開市場委員会(FOMC) 6/15~16開催
  ・ジャクソンホール会合      8月開催

●3.米・1~3月期個人消費は前期比年率+11.3%と、予想+10.9%を上回った(フィスコ)

●4.米・1~3月期GDPは前期比年率+6.4%と、予想+6.5%と同水準だった(フィスコ)

●5.米・先週分新規失業保険申請件数は40.6万件と、予想42.5万件・前回44.4万件から改善

 1)失業保険申請は、4週連続で減少し、コロナ流行以降で最少を更新した。ワクチンの接種が広がり、事業活動再開が進んでいることが背景

 2)失業保険継続受給者数は364.2万人と、予想368万人・前回375.1万人から改善(フィスコ)

●6.米・4月耐久財受注は前月比▲1.3%と、予想+0.8%・3月+3.2%を下回った(フィスコ)

●7.米・4月中古住宅販売成約指数は前月比▲4.4%減と、予想+0.4%増・3月+1.7%を下回る(フィスコ)

●8.米財政赤字、今後10年間で▲1,595兆円(共同通信)

 1)バイデン米政権は5/28、2022会計年度(2021年10月~2022年9月)の予算教書の全体版を発表した。インフラ整備や社会福祉への重点投資に伴い、財政赤字は今後10年間で累計▲14兆5,310億ドル(約1,595兆円)に達する。

●9.米、ガソリン価格が高騰、経済活動の活発化とタンクローリー運転手不足で(NHK)

 1)ガソリン価格:5/24時点の全米平均価格は1ガロン=3.02ドル。2014年以来7年ぶり。

 2)高騰の理由 :
  (1)全米最大のパイプラインがサーバー攻撃で供給停止に追い込まれた。
  (2)ガソリンを運ぶタンクローリーの運転手確保できず、供給不足。
  (3)ワクチン接種の進展で、多くの人が旅行に出かけるなど、経済活動が一段と活発化し、ガソリン需要が高まった。

 3)今後も高騰か:全米の空港の利用者がコロナ禍前の水準に戻ってきていることから、今後、航空需要も回復すれば、エネルギー価格がさらに上昇するという予測もあり、市民生活にどこまで影響するかに関心が集まっている。

●10.企業動向

 1)ボーイング   不具合修正を巡り米当局と調整のため、787を再び納入停止(ブルームバーグ)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)5/27、上海総合指数+15高、3,608
  ・中国人民銀行(中央銀行)は3日連続で、対ドルレートで人民元高に設定し、3年ぶりの水準で推移している。
  ・元高による資金流入期待が、相場を引き続き支え、大幅買い越しが続いている。
  ・業種別では、ハイテク関連、なかでも半導体株が急伸した。不動産株も物色された。反面、金融株は安い。

 2)5/28、上海総合指数▲8安、3,600
  ・上海総合は、このところの急ピッチな上昇が続き、足元では約3カ月ぶりの高値水準を切り上げている。
  ・5/31公表の製造業PMIが気掛かり材料となった。
  ・人民元高を背景に、資金流入期待感が強まっている。
  ・業種別では、医薬品株が安く、ハイテク株は反落している。反面、証券株は連騰。

●2.米、中国水産大手・大連遠洋漁業金槍魚釣の輸入差し止め、漁船団の強制労働(産経新聞より抜粋

 1)米国税関法では、強制労働・囚人労働・児童労働で作られた製品を輸入禁止している。

 2)インドネシア人乗組員らが、肉体的虐待や賃金未払いに遭い、借金返済のためとして事実上強制的に漁船に乗せられた者もいたとしている。

 3)米税関・国境警備局は、中国・新疆ウイグル自治区で少数民族を強制的に働かせて作られた綿や衣類などの輸入差し止め措置を取っている。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)5/27、日経平均▲93円安、28,549円(日経新聞)
  ・前5営業日で+600円程度上げていたため、利益確定売りが優勢となった。
  ・米MSCIが株価指数の銘柄入れ替えに伴い、日本株から29銘柄を除外するとあって関連銘柄の売りによる売買高が膨らみ、相場の重荷になった。
  ・東証1部の値下がり銘柄数は1,647で、全体の7割超を占めた。
  ・売り一巡後は、ハイテク株など成長株が買われ、下げ渋って下落幅を縮小した。

 2)5/28、日経平均+600円高、29,149円
  ・米景気の力強さが継続するとの見方から、景気敏感株を中心に買い優勢となった。
  ・前日の米MSCIの銘柄入れ替えに伴うイベントも通過し、需給不安が後退、短期筋の先物買い戻しが主導するかたちで、現物株は上げ幅を拡大する展開となった。

●2.ワクチン接種進展を受け、日経平均は5/28大幅上昇したが、世界はテーパリングに舵取りへ

 1)ビットコインの急落は、テーパリング(金融緩和の段階的縮小)で世界の余剰マネーの増加率が鈍化することを、先取りした動きと解釈もできる。

 2)米・欧・日の世界の3極の中央銀行は、現状を超える金融緩和は目論んでいない。むしろ、テーパリングに向けた下準備が始まったと受け取るべき時期に入ったと推察する。

 3)既に、テーパリングに向けて動き始めた中央銀行も出現
  ・カナダ中央銀行       :既にテーパリングを実施
  ・イングランド銀行      :国債購入額を5月から減額
  ・ロシア、ブラジルの中央銀行 :利上げを実施
  ・欧州中央銀行(ECB)    :テーパリング議論が出始めた

 4)テーパリングとなれば、株式市場から資金引上げ現象が発生し、相場にはリスク。
  ・余剰マネーが引き起こす『不況の金融緩和で株高 ⇒ 好景気の金融引き締めで株安』に注意したい。

●3.日銀のETFの現状と課題(朝日新聞より抜粋

 1)現状(2021年3月末時点)
  (1)ETF(上場投資信託)保有額が35兆8,796億円と、前年比+20.7%増。実質、日本最大の大株主となった。
  (2)含み益は、15兆6,297億円。
  (3)損益分岐点は、日経平均ベースで2万円程度。

 2)問題点
  (1)日経平均株価が損益分岐点の2万円を下回ると、含み損が発生する。そうなると、日銀が政府に納めるお金が減り、ツケを国民が被ることになる。
  (2)企業の新陳代謝や投資家の売買を阻害するなど、弊害が目立ってきている。
  (3)株式は国債と違い、保有の期限が無い。
  (4)そのため、ETFの売却が意識され始めると、株価の下落要因になる。

 3)日銀のETFへの見識
  (1)日銀の鈴木人司審議委員は5/26の講演で、「ETFなどの残高の増加ペースを極力抑制していくことが望ましい」と指摘した。

●4.ルネサスが公募増資2,185億円し、英半導体会社を買収(ロイター)

 1)増資資金で、英半導体大手のダイアログ・セミコンダクターを買収する。

●5.クレディ・スイスは、英グリーンシル問題を受け、ソフトバンクGとの関係を断ち切る(ブルームバーグ)

 1)英金融サービス会社のグリーンシル・キャピタルは、3/8に英国の裁判所に会社管理手続きを申請し、経営破綻した。グリーンシルは、企業の商取引で生じる売掛債権を対象にした金融を手掛けていたが、提携先の複数のファンドが離反して資金繰りが行き詰まった模様だ。法的管理下で事業の売却を模索する。(日経新聞より抜粋

 2)Cスイスは、3月に破綻した英金融グリーンシルの主要な支援者であるソフトバンクGと距離を置く。(ブルームバーグ)関係者によると、Cスイスは今後、ソフトバンクGと新たなビジネスを行わないと語った。

 2)グリーンシルに対しては、ソフトバンクGの「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」が2019年に約14億6千万ドルを出資していた。(日経新聞)

●6.IHIは、アイダホ州で小型原発開発に2,000万ドル(約22億円)出資し参加へ(読売新聞)

 1)大手プラントの日揮は4,000万ドル出資済み。

 2)同計画は、米政府の支援を受け出力60万キロ・ワット級の新型原発を建設し、2029年の運転開始を目指している。

 3)IHIは、原子炉格納容器の供給や技術面での協力を見込んでいる。

●7.旅行業界、東京オリンピック公式観戦ツアー販売再開の動き(NHK)

●8.デパート各社の東京都内店舗は6月1日から平日は全館通常営業へ(NHK)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・2326 デジタルアーツ   情報漏洩などのセキュリティ。業績好調。
 ・3064 Monota Ro     工場・工事用資材のネット通販。増益。
 ・4578 大塚        製薬大手。業績好調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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