三菱重工とJAXA、みちびき4号機の打ち上げ成功 日本版GPS衛星整う

2017年10月10日 16:13

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H-IIAロケット36号機打上げ (写真:三菱重工発表資料より)

H-IIAロケット36号機打上げ (写真:三菱重工発表資料より)[写真拡大]

 10日7時01分37秒、三菱重工とJAXAは、「みちびき4号機」(準天頂衛星)を搭載したH-IIAロケット36号機を打ち上げた。ロケットは計画通り飛行し、打上げ約28分20秒後に「みちびき4号機」を正常に分離した事を確認したと発表した。これにより、来年度から始まる予定の高精度の衛星測位システム、いわゆる日本版GPSに必要な全ての人工衛星が整うこととなった。

【こちらも】三菱電機、日本版GPSの実証実験開始 準天頂衛星からのCLAS用いた世界初の試み

 なお、H-IIAロケットの打ち上げは、これで30回連続での成功となった。

●日本版GPS衛星

 準天頂衛星は、初号機が2010年9月に打ち上げられた後、今年に入り2~4号機が打ち上げられた。来年度には4機体制での高精度な測位サービスを開始。加えて、2023年度を目処に7機体制とし、さらなる精度の向上とアジア太平洋地域にも活用の場を広げるようだ。

 数センチメートル級の測位精度を実現するためには、8機以上の衛星が見える必要がある。現在のGPSは米国のGPS衛星を使用するが、GPS衛星は地球全体に配備されているため、概ね6機しか見えない。これが10メートルの測位誤差を生む原因である。

 今回の打ち上げ成功により、準天頂衛星システムは準天頂衛星3機と静止軌道衛星1機の4機体制となる。準天頂衛星3機と米国のGPS衛星6機を併用して、衛星測位を開始。センチメートル級の測位が可能な社会の幕開けだ。

●試験サービスを開始

 来年4月からの運用に向けて、内閣府は今年9月より、「みちびき」の試験サービスを開始。これに伴い、内閣府の「みちびき」サイトから仕様書やライブラリを公開している。試験サービスは、センチメータ級測位補強サービスと災害・危機管理通報サービスである。この2分野が当所計画であり、粛々と進行しているようだ。

●想定するサービス

 高精度な測位は、AIやIoTと融合しながら、より快適で安全な社会を構築する可能性を秘める。ホットな話題である自動運転、ドローンによる自立運搬、IT農業による生産性の向上など候補は多くある。

 例えば、自動運転分野では、高速道路の合流や自動車の追い越しを、高精度な測位で支援し、安心な走行を手助けするのであろう。また、ドローンが日常生活で頻繁に活躍する社会では、ドローン同士の衝突回避やその運行制御は重要な課題である。数センチメートル級の測位は必須な技術であろう。

●高精度な測位システム(日本版GPS)のテクノロジー

 高精度な測位システムの実現には、準天頂衛星システム「みちびき」に加えて、2つのテクノロジーが必要であろう。先ず、準天頂衛星システムからのセンチメータレベルの測位信号を受信する端末が必要である。例えば、CEATEC AWARD 2017での総務大臣賞は、マゼランシステムズジャパンの「次世代準天頂衛星対応多周波マルチGNSS高精度受信機開発」が受賞している。

 次に、三次元の高精度マップの作成である。自動運転や自立走行では、センシングやAI技術で周囲の状況把握は可能であるが、それをより効率的に支援するのがこのマップである。三次元の高精度マップ上の何処に居るのかを把握し、センシング情報と併せて、安全に制御するのが妥当であろう。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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