日銀の総裁候補になった植田和男氏に、求められるべきは「平常心」

2023年2月19日 17:48

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 4月8日に任期が満了する黒田東彦日銀総裁の後任として、経済学者の植田和男氏(元日銀審議委員)を充てる人事案が、14日政府から国会に提示された。副総裁には内田真一日銀理事と氷見野良三前金融庁長官の2名が予定されている。国会の勢力関係を見ると、今後国会での質疑や議決を経て原案通りに決定されるものと思われる。

【こちらも】日銀総裁を振り返る やはり黒田・日銀は超異色だったと言わざるを得ない!

 情報が流れた10日に記者からの質問を受けた植田氏は、「現在の日銀の政策は適切で、金融緩和の継続が必要」と答えた。「総裁リスト入り」が報じられたばかりの植田氏が、現在の日銀の政策に違を唱えたり、目指すべき方向を口にすることはあり得ないから、この程度しか口にできなかったということだろう。

 植田新総裁が誕生した暁に選び得る政策は、(1)更なる緩和の拡大(2)緩和の継続(3)緩和の縮小のうち、(2)か(3)しかない。

 (1)は世界の経済環境を見ても、日本の置かれている状況を考えても、既に「異次元の緩和」で極限状態にあるから、更に進めることは実態的に不可能で、いの一番で選択肢から外れる。

 (2)は一番波風の立たない穏当な選択だが、代わり映えがなさ過ぎる。黒田総裁の後任としてのアイデンティティーが問われることになりかねない。(3)は分かりやすいが、10日の発言との整合性を問われる恐れがあるから、就任後時期を見て・・・という選択をするようでは総裁に相応しくない。

 日本銀行法が規定する日銀の目的は、「我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うこと」および「銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資すること」。だから社会(マスコミ)が求めるものとのギャップがあることは、否めない。現在声高に語られている日銀への期待は、日本銀行法の「目的」を逸脱していると感じられる。

 黒田総裁が就任まもなく「インフレ2%」をターゲットにして、異次元の金融緩和を10年間継続してもぴくりともしなかった物価は、ロシアがウクライナに侵攻することであっという間に上昇した。それを望んでいなかった「悪いインフレ」だ、とする議論があること自体に違和感を抱く。

 異次元の金融緩和で学習したことは、極限まで金利を引き下げて10年間続けても「消費が活発になって物価が上がる」とは限らないということだ。

 植田新体制になったとしても、マスコミに乗せられないように平常心を忘れず、風呂敷の広げ過ぎには注意して欲しい。畳むのに苦労しますから・・・(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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