相場展望8月22日 米国株:長期金利再上昇、SQ通過で銘柄転換リスク 日本株:日経平均29000円目標クリアで反動に注意

2022年8月22日 09:14

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)8/18、NYダウ+18ドル高、33,999ドル(日経新聞より抜粋
  ・7月分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を受け、利上げペースが減速するとの観測が相場を支えた。ただ、7月中旬から続く相場の戻りで短期的な過熱感への警戒は強く、NYダウは小幅安に転じる場面もあった。
  ・議事要旨によると、経済活動や物価に及ぼす効果を検証するため、「どこかの時点で利上げペースを落とすのが適切になる」との見方で一致した。
  ・市場では「利上げ減速が今後の基本シナリオになる可能性が高い」との見方が浮上し、ややハト派寄りの内容だったとの受け止めが多い。
  ・インフレピークアウトに伴う利上げ減速で、株式市場に資金が流入しやすくなるとの見方が強まった。
  ・投資家心理を測る指標となる米株の恐怖指数(VIX)は低下した。5日連続で不安心理が高まった状態とされる20を終値で下回った。VIXの低下で、株式を買いやすくなったファンドから連日、まとまった資金が流入していると指摘する金融機関もあった。ただ、上値は重かった。
  ・一部テクニカル指標は相場の過熱感を示唆し、目先の利益を確定する売りが出た。
  ・シスコシステムズが大幅上昇、インテル・IBMが買われ、反面、ベライゾンが安い。

【前回は】相場展望8月18日 米国株:楽観で「需給相場」入り、忘れてはいけない「FRBの金利引上げ継続とQT(バランスシート圧縮)」

 2)8/19、NYダウ▲292ドル安、33,706ドル(日経新聞より抜粋
  ・7月中旬から上昇基調が続いていたため、短期的な利益確定売りが優勢になった。
  ・米長期金利が一時2.99%と1ヶ月ぶりの水準に上昇したのも株売りを誘った。
  ・機関投資家が運用指標とするSP500は前週まで4週続伸しており、過熱感を指摘する声が強まっていた。今週は▲1.2%安と5週ぶりに下落した。7月から続く戻り相場が一巡したとの見方があり、週末を前に利益確定や持ち高調整の売りが出た。
  ・主要通貨に対するドル高が再び進んでおり、「海外売上高の大きい企業の収益圧迫要因として意識された」との声もあった。
  ・米長期金利が前日比で一時+0.11%上昇し、割高感から高PERのハイテクが売られた。
  ・アップルやセールスフォースが下げ、景気敏感株や消費関連の売りが目立った。

●2.米国株:米長期金利の再上昇・SQ後の相場の流れ転換、に警戒したい

 1)米長期金利上昇が、米株相場の下落を誘う
  ・米長期金利(10年物国債)は8/19に一時2.99%まで上昇、終値も2.976%と金利上昇が勢いを増している。長期金利上昇すると相対的に割高感が意識されやすいハイテク株が多いナスダック総合指数が、NYダウ以上に下落した。
 8/19 : NYダウ▲0.86%下落、ナスダック総合▲2.0%下落

 2)相場の過熱を示す「ミーム株」が下落し転じた
  ・企業業績などに裏打ちされない「ミーム株」は、相場のカナリア。
  ・例、ベッド・バス・アンド・ビヨンドが一日で▲20%安、AMC▲10%安。
  ・明らかに米株式相場の騰勢は弱回っている現象が出てきた。

 3)米株式先物相場は8/19にSQ(特別清算)を迎えた、その後の相場転換の可能性に注目
  ・米株式市場は約2ヶ月に及ぶ反騰局面が続いただけに、SQ通過後に反動安となる可能性が高まると見る。8/19はNYダウ・SP500・ナスダック総合の主要3指数ともに下落した。
  ・反騰局面では、ハイテク株の急反発が目立った。戻りの目標達成感が出てきやすい。SQ後は、金利上昇と景気後退懸念から、ハイテク⇒内需・ディフェンシブ銘柄に転換する可能性があるので注視したい。

●3.米リッチモンド連銀総裁、FRBはインフレ抑制の決意、景気後退リスクでも(ブルームバーグ)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)8/18、上海総合▲14安、3,277(亜州リサーチより抜粋
  ・中国経済の不透明感が改めて意識される流れとなった。
  ・国内では新型コロナ新規感染者数が増加しているほか、猛暑による電力不足の影響で一部地域では工場操業が停止。もっとも、下値を叩くような売りは見られない。
  ・中国当局の景気対策に対する期待感は持続している。胡春華・副首相は8/17、経済情勢は更に鈍化する恐れがあるとして、国内消費の回復を加速させる必要性に言及。
  ・業種別では、金融が下げを主導し、食品・酒造が冴えない、反面、ハイテクは高い。

 2)8/19、上海総合▲19安、3,258(亜州リサーチより抜粋
  ・引続き景気悪化の懸念が重石となった。
  ・国内では新型コロナ新規感染者数が増加しているほか、猛暑による電力不足の影響で一部地域では工場操業が停止されている。
  ・景気対策の期待感が相場を支え、下値は限定的。
  ・政府高官は相次いで、消費や投資の拡大で経済を支える必要性に言及している。
  ・また、週明け8/22に公表される銀行貸出しの指標となる最優遇貸出金利に関しては、住宅ローン金利の指標となる5年物が4.45%⇒4.35%、実質的な政策金利と呼ばれる1年物が3.70%⇒3.60%に引下げられるとの見通しがコンセンサスだ。
  ・業種別では、自動車が下げを主導し、機械・電子部品も安かったが、電力は高い。

●2.中国株:中国経済に暗雲

 1)暗雲の内容
  ・新型コロナ再感染拡大:ゼロコロナ政策で、行動制限強化 ⇒経済先行き不安
  ・不動産市場の落込み長期化:住宅販売は前年同期比▲3割減⇒景気・地方財政悪化
  ・雇用の低迷:特に16~24歳の失業率は▲19.9%と過去最悪⇒社会の不安定化
  ・中国共産党大会:大会までは守りの姿勢で現状維持⇒現状打開を図れないリスク
  ・一帯一路「巨額融資」曲がり角:成長鈍化と融資国の「焦げ付き」リスク

●3.中国共産党、インターネットの管理に失敗すれば「長期政権はない」(テレ朝)

 1)これは習主席の重要な指摘。

 2)中国では、ツイッターやユーチューブなどへのアクセスが原則遮断され、国内のSNSなどは厳しく検閲されている。

●4.ゴールドマンと野村、中国経済見通しまた下方修正、コロナや猛暑で打撃(ブルームバーグより抜粋

 1)ゴールドマンS : 従来+3.3%⇒+3.0%
   野村      : 従来+3.3%⇒+2.8%

 2)中国政府は今年のGDP成長率目標を+5.5%前後に設定したが、達成できないとの見方が数カ月前から広がっていた。ブルームバーグ調査の予想は+3.8%となっている。

●5.中国テンセント、4~6月景気悪化で広告大幅減、純利益は前年同期比▲56%減(時事通信)

 1)従業員数を▲5%近く削減した。(ブルームバーグ)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)8/18、日経平均▲280円安、28,942円(日経新聞より抜粋
  ・心理的節目の29,000円を割込んだ。前日までの4営業日で+1,400円超上昇し、短期的な過熱感が高まり利益確定売りが優勢だった。前日の米国株が下落したことも重荷。
  ・ハイテクなど値嵩のグロース(成長)株を中心に売られ、一時▲370円を超えた。
  ・もっとも、先高観から押し目買いも入り下値を支えた。
  ・「過度なインフレ警戒が後退したことから買われてきたが、さすがに過熱感が強まる。8月下旬のジャクソンホール会議が近くなり、結果を見たい投資家も多い」との指摘。
  ・ファストリ・リクルート・テルモ・オリンパスが売られ、バンナム・任天堂が買われた。

 2)8/19、日経平均▲11円安、28,930円(日経新聞より抜粋
  ・相場の短期的な過熱感が意識されるなか、週末を控えて持ち高調整や利益確定目的の売りが優勢になった。米株価先物が下落したことも、売りを促した面がある。
  ・日経平均は前週後半から急ピッチで上昇し、約7ヶ月ぶりの高値水準となる29,000円近辺まで強含んでいた。もう一段の上昇には、米国の物価情勢や金融政策などを見極める必要があるとの声は根強く、29,000円を上回る水準では売りが出やすいとの指摘が聞かれた。
  ・日経平均の影響度が大きいファストリが▲1%超下げ、1銘柄で▲38円ほど下押した。
  ・第一三共・エーザイなど医薬の下げが目立ち、ソニー・京セラ・日揮・フジクラが上昇

●2.日本株:心理的節目29,000円達成と、米株SQ通過で、需給の流れ転換に警戒

 1)日経平均は8/17に29,222円と心理的節目の29,000円を達成した。米国株式も8/19のSQ(特別清算指数)の通過を境に、銘柄転換に注意が必要。

 2)日本株は、6/21以降上昇したが、短期筋の外人投資家による先物の買い戻し主導によるものである。併せて、現物市場でも日経平均の上昇寄与度の高い値嵩株への買い仕掛けで日経平均は1/5の29,332円と並んで29,000円台を回復した。値嵩株への集中買いは、NT倍率の上昇で裏付けできる。

 3)米国株・日本株ともに反動高局面が約2カ月続いた。日本株はテクニカル指標で見ると、過熱感が点灯している。
  ・東証プライム・騰落レシオ:8/19の(25日平均)123.72、(6日平均)144.42
  ・PER:8/17に17.04倍
  ・ストキャスティクス:8/19にFAST 87、SLOW 92
   ⇒ 小さな悪材料に反応しやすくなっている。

 4)秋口の相場の特徴
  ・9/28配当権利取りを狙った買いが入りやすい。但し、9/28までの相場。
  ・10月からの秋相場で、ハイテク⇒内需・ディフェンシブ銘柄に物色の流れが変わる可能性を想定。

■IV.注目銘柄(投資はご自身の責任でお願いします)

 ・4385 メルカリ   業績回復基調
 ・4502 武田薬品   業績好調・高配当
 ・6182 ロゼッタ   業績回基調
 ・6201 豊田自動織機 業績堅調

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