相場展望9月2日 外資系買い仕掛け? 題目:(1) 衆院総選挙で経済対策 (2) ワクチン接種上昇で経済正常化 (3) 日本株の割安

2021年9月2日 09:02

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)8/30、NYダウ▲55ドル安、35,399ドル(日経新聞)
  ・NYダウは、景気敏感株の一角に目先の利益確定売りが優勢だった。米長期金利の低下を受けて金融株が売られた一方、高PERのハイテク株は上昇。
  ・長期金利が1.27%まで低下し、利ザヤ悪化の警戒から金融株の下げが目立った。航空機のボーイングや化学のダウなど景気敏感株の一部が下げた。

【前回は】相場展望8月30日 パウエル議長講演を、(1)株式市場は都合良い解釈で好反応、(2)債券・為替市場は緊張感漂う反応

 2)8/31、NYダウ▲39ドル安、35,360ドル(日経新聞)
  ・米8月消費者信頼感指数113.8と市場予想123.1から大きく下回り、米個人消費の伸び鈍化が懸念された
  ・デルタ型感染拡大や供給網の混乱の長期化と物価上昇が、米景気の回復鈍化につながる可能性も意識された。
  ・月末とあって、利益確定売りも出やすかった。
  ・一方、緩和的な金融環境が当面続くとの見方が投資家心理を支え、NYダウの下げ幅は限られた。

 3)9/01、NYダウ▲48ドル安、35,312(日経新聞)
  ・米国主要株価指数が過去最高値圏で推移するなか、NYダウは景気敏感株を中心に利益確定や持ち高調整の売りが優勢だったが、下値は堅かった。
  ・一方、緩和的な金融環境が続くとの見方から、長期金利の低下を追い風として高PER(株価収益率)にハイテク株が多いナスダックには買いが入った。
  ・雇用サービス会社のADPが発表した非農業部門雇用者数(政府部門除く)は前月比37.4万人と市場予想の半分と大幅に下回った。9月もデルタ型感染の影響が続く可能性もあり、雇用回復の鈍化が意識された。

●2.米国株をリスク側から見た一考察

 1)テーパリングは「すでに相場に織り込みずに」とのコメントが多数あるが、果たしてそうだろうか?そのコメントは、米国市場だけを見たコメントである。米国にとどまらないで世界に影響が及ぶテーパリング効果を見誤ると、誤算が生じるのではないか。

 2)新興国では、米FRBが垂れ流したドルが蔓延している。テーパリング実施は、新興国からドルを米国に回収することでもある。つまり、テーパリングは、新興国の信用収縮をもたらし、新興国の株式市場の大幅下落をもたらす。そして、そのマイナス要因が、米国市場にブーメラン効果をもたらす。

 3)2013年バーナンキ・ショックの場合(日本は先進国であるが、米国株の影響度で見た)
   NYダウ   ▲5.8%下落 :5/22~6/24
   日経平均   ▲20.4%下落 :5/22~6/13、NYダウ下落比▲3.5倍のマイナス効果

 4)NYダウのPERは24.04倍(9/1時点)と買われ過ぎである。テーパリングを契機に、PERの正常化が意識されれば、NYダウ・ナスダック・SP500は適正水準までの調整(下落)が起こったとしても不思議ではない。

 5)9/3発表の米雇用統計を控え積極的な売買は出来ない状況にあるが、米国株は堅調が続くと思われるが、季節的に材料が乏しく9月相場は波乱含みになる可能性も秘めているという見方も出来そうだ。

●3.米8月ADP雇用統計は前月比+37.4万人と、予想+62.5万人の半分(フィスコ)

 1)伸びは7月+32.6万人から拡大したものの、予想外の2カ月連続の30万人台。

●4.米7月中古住宅販売成約指数は前月比▲1.8%、前年同月比▲8.5%鈍化ペース(フィスコ)

 1)ただ、需要に対し十分な供給が追い付かない状況で、7月中古住宅の価格は+18%高。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)8/30、上海総合+5高、3,528(亜州リサーチ)
  ・中国政府による景気テコ入れ策に対する期待感が相場を支える流れとなった。
  ・中国人民銀行は農村振興を支援する会議を開き、金融支援を強化する方針を確認。
  ・市場の一部では、農振振興のほか、ハイテク製造やグリーン産業支援のため、人民銀行が9月に預金準備率と最優遇金利を引き下げるとの観測も流れている。
  ・ただ、上値は限定的で、各分野に対する中国政府の締付けにより、経済成長が鈍化するとの警戒感がくすぶっている。
  ・業種別では、非鉄・鉄鋼・エネルギー・素材株が高く、自動車株もしっかり。反面、金融株が冴えない。

 2)8/31、上海総合+15高、3,543(亜州リサーチ)
  ・中国経済指標の下振れを受けて、中国政府は景気の落ち込みを回避するため、テコ入れ策を強めるとの見方が改めて広がった。
  ・中国製造業PMIは50.1となり、市場予想50.2を下回った。また、非製造業PMIは47.5となり、景況判断の分かれ目となる50を1年6カ月ぶりに割り込んだ。
  ・景気先行き不安で売りが先行したものの、下値は堅く、プラスに転じた。
  ・業種別では、金融株が相場を牽引し、不動産・資源素材・自動車株が買われた。反面、ハイテク株は冴えなかった。

 3)9/01、上海総合+23高、3,567(亜州リサーチ)
  ・経済対策への期待感が一段と高まる流れとなった。
  ・中国8月財新製造業PMIは49.2に悪化し、景況判断の分かれ目となる50を1年4カ月ぶりに下回った。昨日発表の国家統計局の8月中国製造業PMIも下振れし、非製造業PMIは1年6カ月ぶりに節目の50を割り込んでいる。
  ・業種別は、金融株が牽引し、ゼネコンや建機・セメントのインフラ建設関連株が急伸し、食品飲料・不動産・医薬品・運輸株が買われた。反面、石炭株は安く、石油・非鉄・自動車・ハイテク株が売られた。

●2.中国・8月非製造業PMIは47.5と、予想52.0を大幅に下回った(フィスコ)

 1)8月は節目の50をも大幅に下回った。
 2)7月実績53.3から▲5.8も低下しており、7~9月期国内総生産は低い伸びにとどまる可能性がある。

●3.中国・8月製造業PMIは50.1と、予想50.2を下回った(フィスコ)

●4.中国・習近平が目指す「共同富裕=格差解消」が、最大の中国リスクを招く(ダイヤモンド/真壁昭夫・法政大学大学院教授

 1)中国は経済の高度成長の過程で、『富』は共産党幹部と民間企業の創業者に集中し、『2つの富裕層』が出現した。
  (1)インフラ投資で国有・国営企業が高成長 ⇒ 共産党幹部の富裕
  (2)情報・通信分野で民間企業が急成長   ⇒ 民間企業創業者の富裕

 2)「貧富の格差の急拡大」は、国民の不満を増大させ、共産党政権の維持にとって脅威となる。

 3)習政権は、国民の不満軽減を図る姿勢 ⇒ 『共同富裕』の考えを示す。

 4)そうした背景と、共産党批判を封じ込めるため、⇒ IT先端企業の創業者への締付け強化 ⇒ 民間企業創業者から、貧困層に「強制的な富の移転」を図って格差解消。しかし、もう1つの富裕層である共産党幹部に対しては、共産党内部からの批判が強まるため手を付けられない。

 5)(1)中国の貧富の格差解消は事実上難しいく、国民の雇用確保も達成困難が増す。
   (2)民間部門のエネルギー減殺で、中国経済の成長率を低下させる。以上から、習近平政権の『共同富裕』は不完全なものとなり、かつ中国経済にとって重大なマイナス要因として、最大の中国リスクになる可能性がある。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)8/30、日経平均+148円高、27,789円(日経新聞)
  ・前週末のパウエル議長講演で、テーパリングは年内に始めるのが適当と述べた一方、利上げを急がないとの姿勢を示したため、米株式の3指数ともに上昇したのを背景に、日本株市場は買い優勢になった。
  ・香港や台湾などアジア株式市場が総じて堅調だったことも支援材料となった。
  ・買い一巡後は、今週の米国や中国の経済指標の発表が相次ぎ、景気減速懸念が意識され、一段の上値を追う動きが限られた。

 2)8/31、日経平均+300円高、28,089円(日経新聞)
  ・日経平均は7/15以来およそ1カ月半ぶりの高値を付けた。
  ・朝方は、空運・陸運・金融株に売り優勢となり一時▲200円近く下げたが、その後、短期筋が米国株先物の堅調な動きを手掛かりに買い戻しに動き、相場を押し上げた。
  ・ファーストリテイなど値嵩株の主力銘柄が上げ幅を拡大した。
  ・政府の経済対策に対する期待も相場を下支え、日経平均は1年ぶりに「月末高」で終えた。

 3)9/01、日経平均+361円高、28,451円(日経新聞)
  ・最近の株価戻りの速さから、売り方の買い戻しも巻き込み、上げ幅を広げた。
  ・ただ、菅首相の衆院解散を否定する内容の発言が伝わると、日経平均は伸び悩む場面があった。
  ・衆議院解散の観測で日本株に注目が集まり、資金が振り向けられた面もあるようだ。

●2.9月相場は、過去「売られやすい月」だが、『株高の9月』となる可能性が高まってきた

 1)「衆議院総選挙で株高」になると経験則を意識した外人投資家の買い仕掛けで、売り込んでいた空売りのアンワインド(巻き戻し)を巻き込んで大幅高もあり得る。

 2)買い仕掛けの材料
  ・「衆議院総選挙は株高」になるとの経験則
  ・ワクチン接種率の上昇による経済正常化への期待高まり
        1回目   2回目完了  時点
    日本  57.2%、   46.2%   8/31
    米国  60.96     51.77%   8/17
    英国  70.50     62.91    8/17
    ドイツ 64.72     60.11    8/17
  ・日本株のPERから見て割安
    NYダウ 24.04倍 vs 日経平均 13.25倍 (9/1時点)
    米国株に比べ、出遅れが目立つ日本株に注目が集まりやすい状況にある。
  ・日経平均の潮目変化の兆しか
    この12カ月の月末は1勝11敗と下落している。
    しかし、8/31は日経平均+300円高、9/1は+361円高と大幅高。

●3.日本株は、米国でテーパリング実施による株価下落率は、NYダウを3~4倍上回る可能性

 1)米テーパリングの実施で、世界株価がピークアウトする可能性が出てきたと思われる。
  ・FRBからの資金供給が前提として、米株高が示現されてきた。その前提条件が転換されれば、当然、資金流入減少を見込んだ株式市場から資金流出の動きが早期に出るもの。

 2)日本株は、米国でテーパリング実施による株価下落率は、NYダウを3~4倍上回る可能性がある。(2013年バーナンキ・ショック時は、NYダウ下落率の▲3.5倍下落)

 3)米テーパリングの実施で、世界株価がピークアウトする可能性が出てきたと思われる。
  ・FRBからの資金供給が前提として、米株高が示現されてきた。その前提条件が転換されれば、当然、資金流入減少を見込んだ株式市場から資金流出の動きが早期化するため。

●4.デジタル庁は9/1発足、国などのデータ公開を見据え、民間の開発が活発に(NHK)

●5.家庭用パスタやコーヒーなどが9/1から相次ぎ値上げ、原材料価格高騰で(NHK)

●6.企業動向

 1)JR西日本  最大2,786億円資本増資で、コロナで悪化の財務基盤強化(NHK)
 2)イオン    子会社と中四国でスイーパー展開の「フジ」と経営統合へ(NHK)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・4543 テルモ     医療機器大手。業績堅調。
 ・7747 朝日インテック 循環器治療ガイドワイヤ。業績堅調。
 ・6762 TDK      電子部品大手。業績好調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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