21年上半期の旅行業倒産、新型コロナ影響し3年連続増加 東京商工リサーチ調査

2021年7月10日 09:12

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 東京商工リサーチが2021年上半期における旅行業と宿泊業の倒産状況調査を発表し、サービス業における新型コロナウイルスの影響が深刻なことが分かった。

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■旅行業の倒産件数が3年連続で増加

 8日、東京商工リサーチが「2021年上半期(1-6月)旅行業の倒産状況調査」を発表した。同時期における旅行業の倒産件数は18件で、前年同時期の15件から3件(20.0%)増加するとともに、18年同時期の13件から3年連続で増加した。このペースで推移した場合、年間の倒産件数では14年(37件)以来となる30件超えが予想される。

 倒産の原因で最も多かったのは「販売不振」で15件、ついで「他社倒産の余波」「既往のしわ寄せ(赤字累積)」「事業上の失敗」が各1件。また新型コロナウイルスの影響を一因とする倒産は16件で、調査からは、業績不振に新型コロナ禍が追い打ちをかけた状況が透けて見える。

■小規模な業者の倒産が大半を占める

 負債総額は17億5,000万円で前年同期比93.9%減となり、2年ぶりにマイナスとなった。負債総額が大きく減少したのは、20年6月に大阪府の旅行業者ホワイト・ベアーファミリーが倒産したためで、同社の負債額351億円は旅行業者における倒産では過去最大だった。

 負債額別で最も多かったのは1,000万円以上5,000万円未満の9件、ついで5,000万円以上1億円未満が7件などとなっており、負債額10億円以上の大型倒産は発生しなかった。資本金別で最も多かったのは1,000万円以上5,000万円未満の7件、従業員数別では5人未満の15件が最も多かった一方で、20人以上の倒産はゼロであり、零細や小規模な旅行業者の倒産が大半を占めている。

■宿泊業の倒産件数は大きく減少も今後に注意

 同日、東京商工リサーチは「2021年上半期(1-6月)宿泊業の倒産状況調査」も発表した。同時期における宿泊業の倒産件数は43件で前年同時期の72件から40.2%減少した。ただし19年が高水準だった反動でマイナスとなっただけで、18年の38件、19年の30件を上回っている。

 倒産の原因で最も多かったのは「販売不振」で34件、ついで「既往のしわ寄せ」が3件、「設備投資過大」や代表者の死亡などを含む「その他(偶発的原因)」が各2件などとなっている。また新型コロナウイルスの影響を一因とした倒産件数は22件だった。

 倒産件数の減少の原因については、政府や金融機関の支援と見られるものの、新型コロナウイルスの影響が長期化しつつあることで倒産件数が「増加に転じてもおかしくない」という。

■大型倒産が負債総額を押し上げ

 負債総額は1,197億2,700万円で、前年同期比178.9%増と2年ぶりにプラスとなった。これは4月に「ホテルグリーンプラザ軽井沢」「軽井沢おもちゃ王国」などを運営していた東京商事が倒産したためで、同社の負債額約1,004億円が負債総額を押し上げた。

 負債額別で最も多かったのは1億円以上5億円未満の20件、ついで1千万円以上5千万円未満が10件、5千万円以上1億円未満が4件などとなっている。資本金別では1千万円以上5千万円未満が16件、従業員数別でも5人未満が26件と旅行業と同様に零細や小規模な宿泊業者の倒産が多かった。(記事:県田勢・記事一覧を見る

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