相場展望6月17日 米金融政策の正常化(量的緩和縮小・金利上昇)への動き 米国株式は、景気後退回避の金融政策転換で曲がり角に

2021年6月17日 08:46

印刷

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)6/14、NYダウ▲85ドル安、34,393ドル(日経新聞)
  ・過去最高値圏にある中、6/15~16開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に持ち高調整の売りが優勢となった。
  ・一方、米長期金利が1.5%を下回る水準で落ち着いているため、高PER(株価収益率)のハイテク株が買われて相場を下支えした。
  ・ナスダック総合とSP500は過去最高値を更新した。

【前回は】相場展望6月14日 米5月CPIはインフレ加速懸念の後退で、次のFOMC待ち 米下院での巨大IT企業規制法案提出の動向に注目

 2)6/15、NYダウ▲94ドル安、34,299ドル(日経新聞より抜粋
  ・米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表を6/16に控え、様子見ムードが強まった。株式相場は過去最高値圏で推移してきたため、持ち高調整の売りがやや優勢だった。
  ・FOMCに関しては、テーパリング(資産購入の縮小)について、パウエルFRB議長がどのように触れるのか関心が高い。同時に示す政策金利見通しで、2023年の利上げ開始が示されるとの観測がある。
  ・前日、堅調だったハイテク株は軟調だった。5月小売売上高は前月比▲1.3%減と市場予想▲0.6%減を上回ったため、消費関連株の一角が下げた。原油高を受けて、エネルギー株が買われ、相場を下支えした。

 3)6/16、NYダウ▲265ドル安、34,033ドル(日経新聞)
  ・FOMCで金融緩和の縮小観測が強まり、NYダウは下落した。
  ・金融緩和縮小観測を受けて、景気敏感株や小売など消費関連株の一角が利益確定売りに押され下げた。
  ・一方、米債券市場で長期金利が上昇し、金融株が上昇した。

●2.米国株は高値圏にあり、リセッション回避のための金融政策の転換で曲がり角か?

 1)長期金利低下1.454%は底⇒6/17現在1.581%に急騰。今後、金利の再上昇が見込まれる。

 2)超金融緩和による過剰マネーが引き起こした価格暴騰が目に余る。
  (1)ミーム株(ゲームストップ、AMCなど)
  (2)木材
  (3)農産物
  (4)仮想通貨(ビットコインなど)

 3)経済指標からは、『物価上昇でインフレ上昇&経済活動鈍化』を示唆していることが窺える。

 4)FRBの金融政策の指標とする『雇用の回復』まで金融緩和を続ければ、強度のインフレをFRBが主導したと非難される恐れが高いと予想する。そもそも、中央銀行が『雇用回復』と目標とした金融政策を採るのは間違っている。むしろ、FRBによる過剰マネーが引き起こした弊害が目に付く状況になってきている。

 5)FRBは、早くインフレの芽を摘み取る政策に転換しないと、景気後退(リセッション)を招く可能性が高いと予測する。

●3.FOMCでテーパリングの観測が強まり、金融政策の正常化に向けて動き出したとの見方広まる(日経新聞より抜粋

 1)FOMCで、テーパリング(量的金融緩和の縮小)の議論を始めるか否かが注目された。FOMCの結果、市場が想定した以上のペースで利上げ予想が前倒しされるとの見方が広まり、NYダウは下落し、長期金利は上昇した。

 2)パウエルFRB議長は、FOMC後の記者会見で、「委員会は資産購入策について議論することを決めた」と語った。

 3)FOMC参加者18人のうち13人が、2023年中の利上げ開始を予想し、予想金利の中央値は0.625%と前回3月の0.125%から大きく切り上がった。2023年中に2回の利上げで合計0.5%の金利上昇を予想していることになる。

●4.市場は、金利高やインフレ上昇の準備へ(フィスコより抜粋

 1)米連邦準備制度理事会(FRB)は6/15~16開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で大規模金融緩和を維持する見込み。
  ・FRBは年内のインフレが『一時的』に3%近くまで上昇していると予想しているものの、需給ギャップが解決されれば、来年のインフレの伸び率は緩やかになると、見ている。
  ・雇用はパンデミック前と比べて依然として800万人近くが欠如した状態で最大雇用に程遠く、大規模金融緩和を維持することが当面必要との考え。
  ・しがたって、金融緩和の縮小の協議開始は時期尚早と見ている高官も少なくない。

 2)一方、市場ではインフレ率の上昇などを背景に、FRBが8月末のジャクソンホールで開催する年次会合で、金融緩和の縮小の協議を開始するとの見方を強めている。
  ・著名投資家のポール・ジョーンズ氏は6/14に、「インフレの上昇は、FRBが予想しているような『一時的な現象ではない』」可能性に言及した。そして、FRBが物価の上昇を無視したならば、インフレヘッジとして、商品や金・暗号資産の購入に動く投資方針を明らかにした。
  ・反対に、FRBが「雇用は目標達成の速やかな軌道上にある」と述べた場合は、テーパータントラムになるだろうと指摘し、『株式相場の下落や、国債相場の下落につながる』とジョーンズ氏は指摘した。
   テーパータントラム:金融緩和縮小や利上げなど金融政策変更で、通貨下落・株価下落・資金流出といった市場のかんしゃく(市場が動揺する状況)
  ・JPモルガン銀行のダイモンCEOも6/14、モルガンスタンレーの会合で同行が、『高金利やインフレの上昇に備えている』と言及した。

●5.JPモルガン、正常化に向けて一歩、米テーパリングは2022年早期開始(ブルームバーグより抜粋

 1)米連邦準備制度理事会(FRB)は、来年の早い時期にテーパリング(債券購入の段階的縮小)を開始し、金融政策の正常化への第一歩を踏み出すだろうと、JPモルガンのストラテジストが6/14のリポートで予想した。

●6.米5月生産者物価指数は前月比+0.8%と、予想+0.5%・4月+0.6%を上回る(ブルームバーグより抜粋

 1)物価上昇圧力さらに強まる。

 2)前年同月比の伸びも+6.6%上昇と、予想▲0.8%減・前月の+6.2%増を上回り、2010年11月以降で最大となった。

 3)背景には、材料価格の高騰や、物流面の制約、人件費の上昇などがある。また、顕在化する繰越需要が供給能力を上回っていることも、物価を一段と押し上げている。

 4)パウエルFRB議長は、インフレ高進は一過性と繰り返し主張し、多くのエコノミストも同様の見方を示してきた。

●7.米5月小売売上高は前年比▲1.3%と、4月+0.9%からもさらに下回った(フィスコ)

●8.米5月輸入物価指数は前月比+1.1%と、予想+0.8%・4月+0.7%を上回る(フィスコ)

●9.米5月住宅着工戸数は157.2万戸(年換算)と、予想163万戸を下回った(フィスコ)

 1)5月住宅建設許可件数は前月比▲3%の168.1万戸と、4月173.3万戸から予想以上に減少

 2)住宅建設は引き続き木材価格の高騰や、その他の建材不足が圧迫要因になっている。

 3)10年国債利回りは1.48%(6/15)まで低下、為替はドル売りが優勢となった。

●10.バイデン政権は、米独禁法当局のトップにIT規制強硬派の選出でGAFA監視強化(時事通信)

 1)米独占禁止当局である連邦取引委員会(FTC)の委員長に米コロンビア大学准教授のリナ・カーン氏を、米上院が6/15に指名した。

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)6/14、「端午節」のため休場

 2)6/15、上海総合▲33安、3,556(亜州リサーチ)
  ・対外関係の悪化が不安視され、経済指標の伸び率鈍化見通しも気掛かり。
  ・業種別では、金融・素材株が安い。半面、ハイテク株が高い。
 
 3)6/16、上海総合▲38安、3,518(亜州リサーチ)
  ・対外関係の悪化が不安材料として引き続き意識されたほか、中国の経済指標の発表も気掛かり材料となった。
  ・業種別では、消費関連株の下げが目立ち、非鉄や鉄鋼・化学品など素材株が冴えない。中国政府が主要備蓄金属を近く放出すると、メディアが報じたことも嫌気された。半面、金融株が高かった。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)6/14、日経平均+213円高、29,161
  ・ワクチン接種の職場接種が前倒しされるなど一段と進展し、国内経済活動が正常化に向かうとの観測や、米長期金利の低下傾向を受けて高PERのグロースに見直し買いが入った。

 2)6/15、日経平均+279円高、29,441円
  ・前日の米株式市場のSP500とナスダック総合の過去最高値更新の流れで、投資家の買いがハイテク株を中心に入った。そして、5/10の29,518円以来、約1カ月ぶりの高い水準を付けた。
  ・ドル円が110円台と円安に傾いたことも、追い風となった。

 3)6/16、日経平均▲150円安、29,291円
  ・前日の米国株式市場が3営業日ぶりに反落したことで、ハイテク中心に売り優勢となった。また前日までに上昇していた反動もあり利益確定売りも出た。
  ・ワクチン接種の進展に伴い経済正常化を見込んだ買いが相場を支えた。

●2.日経平均株価の急騰は、外資系短期筋の閑散相場を狙った買い仕掛けによるもので注意が必要

 1)6/14~15の日経平均+500円超の上昇は、外資系短期筋が『薄商いを利用した買い仕掛け』によるもので、注意したい。
               6/14       6/15
   東証1部売買金額  1兆9,646億円  2兆3,745億円

 2)買い上がりを主導した一角のCスイスは、6/16に売り転換したことに注目。

 3)米長期金利上昇の流れからすると、ハイテクなど成長株は売られやすくなる傾向となる。

 4)日本株の上昇には、(1)米国株の上昇 (2)外資系短期筋の買い、が必要であるが、米国の金融政策転換観測が広がる中では、強気一辺倒はリスクがあると予想する。

●3.企業動向

 1)武田薬品   米ノババックスのワクチンを日本で年内供給開始(時事通信)
 2)日本郵船   LNG(液化天然ガス)を燃料とする自動車運搬船12隻発注(日経新聞)
         発注金額は1,000億円超で、重油に比べ二酸化炭素25%削減
 3)ブリジストン 中国子会社を売却(日経新聞)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・7085 カーブス   シニア女性体操教室。コロナ後に期待。
 ・9308 りそな    金利上昇によるメリットに期待。
 ・9020 JR東日本   ワクチン接種進展に期待。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

記事の先頭に戻る

関連キーワード

関連記事