相場展望6月7日 米イエレン財務長官『インフレと金利上昇を容認』発言? 米好景気で人手不足なのに、なぜ雇用は戻らないのか? ⇒ 米経済成長の持続にとって阻害要因

2021年6月7日 08:50

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)6/3、NYダウ▲23ドル安、34,577ドル(日経新聞)
  ・市場予想を上回る経済指標の発表が続き、米景気の順調な回復が確認された。このため米長期金利が上昇すると、PER(株価収益率)が高いハイテク株に売りが出る流れとなり、NYダウは小幅反落した。
  ・堅調な経済指標を受け、早期の金融緩和解除を警戒する流れ。(ブルームバーグ)
  ・米民間雇用統計を受けインフレ警戒で、半導体関連が安い。(ブルームバーグ)
  ・ナスダック▲1.03%下落、SP500▲0.36%下落。

【前回は】相場展望6月3日 中国経済成長率4~6月+8.1%⇒10~12月+5.3%に鈍化(ブルームバーグ)、但しOECDは+8.5%を予想

 2)6/4、NYダウ+179ドル高、34,756ドル(日経新聞)
  ・5月雇用統計で雇用者数の増加ペースは加速しているが、市場予想を下回ったため、米連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和の縮小を急ぐほどではないと受け止められた。
  ・長期金利が低下し、金利上昇時に売られやすいハイテク株など高PER(株価収益率)株が買われた。
  ・雇用統計で景気の底堅さが確認できたと、建機などの景気敏感株の一角も買われた。

●2.米財務長官6/5、『インフレ率、一時的に3%に加速も、動向注視』(時事通信より抜粋

 1)イエレン財務長官は6/5、ロンドンで開催された先進7カ国(G7)財務相会議の後の記者会見で、上昇が目立っている米国のインフレ率について、「年内は最大3%前後に達する可能性がある」と語った。

 2)イエレン氏は、新型コロナ危機後の経済活動再開に伴う需要の急拡大などがインフレ率上昇の背景だと指摘。影響は一時的と見ていると説明した。

 3)市場では、米国の中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)が金融緩和策の早期縮小に動くと警戒する向きもある。しかし、イエレン氏は、コロナ危機で大勢の失業者が復職できず、「労働市場には大きな緩みが残ったままだ」と強調した。

●3.イエレン財務長官、『金利が上昇しても、社会や金融当局にとってプラス』(ブルームバーグより抜粋

 G7財務省会合の終了後、帰国途中にブルームバーグのインタビューに応じ語った。

 1)インタビュー内容
  (1)バイデン政権が提案する総額4兆ドル(約436兆円)規模の歳出計画は、インフレ上昇に寄与し、結果として金利上昇につながったとしても、米国にとっては好ましい。
  (2)金利がやや高い環境になったとしても、社会の観点ならびに米金融当局の観点では、実際にプラスになる可能性がある。
  (3)あまりにも低すぎるインフレ、あまりにも低すぎる金利と、ここ10年にわたって闘ってきた。正常な金利環境に「戻る事をわれわれは望んでいる」とし、「これが状況を若干和らげる一助になるのであれば、それは悪い事ではない。むしろ良い事だ」と語った。

●4.米雇用問題:好景気で人手不足なのに、何故760万人がコロナ禍前の職場に戻らないのか?

 1)人出不足が及ぼす影響 ⇒ 米好景気の阻害条件になる可能性
  (1)製品生産の遅れ(例えば、住宅では建材不足と急激な値上がりで新築住宅着工が減少)
  (2)サプライチェーンの遅れ(納入時期の遅れ)(例えば、住宅では家具などの納入遅延)
  (3)賃金上昇による労務費コスト上昇と、販売価格への転嫁(人手不足のため賃上げで採用)

 2)職場復帰できない理由
  (1)コロナ感染への恐怖が就業を妨げる
  (2)学校・保育所の再開遅れに伴う子育て負担が家庭にのしかかり就業を妨げる
  (3)失業給付の特別加算が大きく、働くと収入ダウンするとして職場復帰意欲を削ぐ
   失業保険・週  351ドル(全米平均)
   上乗せ ・週  300
   合計    651 ⇒ 時給換算18.6ドルと、米国の最低時給7.25ドルを大きく上回っている。

 3)労働市場復帰への対策
  (1)ワクチン接種のさらなる進展(接種キャンペーンの拡充)で安心・安全の浸透強化
  (2)失業給付の特別加算打ち切りの早期化
   ・共和党知事の25州が、6月半ばから職場復帰を促進のため特別加算を打ち切る。残る半分の州との比較で、この特別加算と雇用の関係が明らかになりそうだ。
   ・ただ、この特別加算の期限は9月上旬に到来する。
  (3)失業給付特別加算の再々延長禁止

●5.米・5月非農業部門雇用者数55.9万人増、予想+67.5万人・4月+26.6万人(フィスコ)

●6.米・5月失業率5.8%と、予想5.9%・4月6.1%から改善した(フィスコ)

●7.米・5月ADP雇用統計(民間雇用者数)97.8万人と、予想65万人・4月74.2万人を上回る  

 1)企業の積極的な採用で、1年ぶりの大幅な伸びとなった。(フィスコ、ブルームバーグ)

●8.米・5月ISM製造業景況指数64.0と、予想63.2・4月62.7を上回った(フィスコ)

●9.米・先週分新規失業保険申請件数38.5万件と、予想38.8万人・前回40.6万人から改善(フィスコ)

●10.米・4月製造業受注は前月比▲0.6%と、予想▲0.2%減・3月+1.1%から悪化(フィスコ)

 1)1年ぶりのマイナスで、ドルは続落した。

●11.OPECプラス、段階的に原油増産の方針、価格は高騰(朝日新聞より抜粋

 1)石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど協力産油国でつくる「OPECプラス」は6/1、原油の協調減産幅を7月まで段階的に少なくする方針を維持する事を決めた。6月は前月より日量35万バレルの増産となる。

 2)ただ、コロナ禍からの経済回復で高まっている石油需要に対し、増産ベースは緩やかで原油価格は高騰している。6/1の終値は67.72ドルで、年初から約20ドル高くなっている。

●12.米ブラックロックのフィンクCEOは、『インフレが大きな衝撃になる』語る(ブルームバーグ

 1)世界最大の資産運用会社ブラックロックのフィンク最高経営責任者(CEO)が語った内容。
  (1)インフレ急加速の可能性について、投資家は過小評価している恐れがある。
  (2)投資家の大部分は、過去30年あまりにわたりインフレ率が鈍化した経験しかない。この意味で、これはかなり大きな衝撃になるだろう。

 2)鉄鋼や木材含む物品の価格は今年に入り上昇し、インフレ高進の不安が米国市場にはすでに浸透している。米国の消費者物価指数(CPI)の上昇率が、1980年3月に『14.8%』に達した事実。

 3)物価上昇が懸念されるようになった場合、
  (1)中央銀行であるFRB(米連邦準備制度理事会)は金融政策の転換が必要になる。
   ・余剰マネーの吸収
   ・金利上昇
  (2)バイデン政権が提案する巨額のインフラ投資を含む追加経済対策の修正が求められる。
   ・財政支出の圧縮・停止
   ・気候変動への適応過程が物価上昇を招くが、さらなるインフレを受け入れる覚悟がわれわれにあるだろうか?

●13.FRBは既発の社債購入分137億ドル(約1兆5,000億円)の売却開始へ(ブルームバーグより抜粋

 1)売却は段階的かつ秩序だったものとし、市場への悪影響は最小限にする。
 2)この措置は、金融政策とは無関係で、政策変更ではないと、FRB報道官が述べた。

●14.バイデン大統領、法人税で最低税率15%の導入を、共和党に提案(ブルームバーグより抜粋

 1)多くの税優遇措置や税控除で納税額を減らしている企業から、申告所得からの納税ではなく、財務指標記載の利益をベースに最低15%の法人税納付を義務付ける案を提案。

 2)共和党が反対している法人税率の21%⇒28%への引き上げはいったん棚上げとなる。ただ、この増税案は別の形で実現を目指す可能性がある。

 3)インフラ投資計画の財源として、内国歳入庁(IRS、国税庁)の徴収強化で、富裕層の納税者の監査を増やすなどで税収増を図る事にしている。

●15.物価上昇

 1)米木材の先物価格 (1,000ボードフィート当たり)
  2020年5月 353.7ドル⇒2021年5月 1,327ドル(上昇率375%)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)6/3、上海総合指数▲12安、3,584(日経新聞)
  ・小幅続落した。
  ・中国5月財新非製造業購買担当者景気指数(PMI)が前月比で低下した。
  ・朝方は資源株高や深圳株の上昇を手掛かりに買いが入ったものの、中国国内の新規の買い材料が乏しいなか、戻り待ちの売りが次第に優勢となった。

 2)6/4、上海総合指数+7高、3,591(亜州リサーチ)
  ・前日までの続落を受け、反発した。
  ・ワクチン接種進展による経済回復の期待が高まったが、米中関係の悪化懸念が再燃と来週に重要経済指標を控え(6/7に5月貿易統計、6/9に物価統計)、様子見ムードが漂った。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)6/3、日経平均+111円高、29,058円(ブルームバーグ)
  ・米連邦準備制度理事会(FRB)が政策手掛かりとする雇用統計の発表を6/4に控えるなか、米国の経済成長加速や日本国内ワクチン接種進展におる景気への楽観から、電機や自動車、情報・通信、医薬品などを中心に幅広い業種が上昇した。
  ・日経平均は上げ幅を一時+200円を超えたが、29,000円超では利益確定売りが出た。

 2)6/4、日経平均▲116円安、28,941円
  ・米長期金利の上昇による成長株の売りと、日本時間6/4夜に発表の米雇用統計を見極めたいとして売買を手控える動きが強かった。
  ・バイデン政権が米国人に対して中国企業59社への株式投資を禁じる措置拡大で、米中対立の深刻化につながるとの見方も相場の重荷となった。

●2.日経平均株価は『戻りを試す』過程にある

 1)5月初旬の▲2,070円下落に対する、戻りの過程であり、新高値を更新する流れに至っていない。
   5月前半の下落からの『戻り率』
  (1)米NYダウ    +98.2%
  (2)米SP500     +98.2%
  (3)米ナスダック総合 +70.0%
  (4)日経平均     +49.4%
  (5)TOPIX    +67.4%

 2)チャート面から見ると、
  (1)三尊形成を形成途上で、下落前にあると見る事が出来る 
  (2)踏み台としての上昇過程と見る事も出来る
  いずれにしても、分岐点が近づいているといえる。

●3.総務省6/4発表、家計調査によると4月消費支出は前年同月比+13.0%上回った(ロイター)

 1)ロイター予測は+9.3%だった。

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・6324 ハーモニック・ドライブ 精密制御減速装置・メカトロが主力。利益絶好調の伸び。
 ・2726 パル          ヤングレディ衣料。利益急回復。
 ・4911 資生堂         ワクチン接種進展で化粧品需要に期待。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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