相場展望5月24日 米国株式は、経済指標好調に比べ、鈍化がみられる 『インフレ懸念』を織り込み始めたか?

2021年5月24日 08:42

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■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)5/21、NYダウ+188ドル高、34,084ドル
  ・米長金利が低下し、高PER(株価収益率)のハイテク株が買われ、相場を牽引した。
  ・前日に急落した仮想通貨ビットコインが反発し、投資家心理が改善した面もある。

【前回は】相場展望5月20日 良い所取りしてきた株式市場、悪材料に反応強める 仮想通貨ビットコイン急落で、NYダウ一時▲580ドル安

●2)5/21、NYダウ+123ドル高、34,207ドル(日経新聞)

  ・5月PMIが予想外の過去最高を記録し、景気回復の強さが示され、NYダウは一時+300ドル超の上昇をした。
  ・仮想通貨ビットコインが下げ止まり、投資家心理が改善。しかし、その後、中国当局の取締り強化が伝わり、改めて売り直された。
  ・欧米の景況感が改善し、景気敏感株を中心に幅広い銘柄が上げた。
  ・米長期金利が1.6%台前半で落ち着いていることから、ハイテク株も買いが入った。
  ・ただ、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁が、債券購入の縮小に関する議論を早めに始めるべきだとの見解を示すと、SP500は上げ幅を失った。大型ハイテク銘柄中心のナスダック100指数も値下がりした。(ブルームバーグ)

●2.米国株は経済指標の好調さに比べて、株価上昇に鈍化がみられる

 1)米国株はワクチン接種の進展に伴う経済活動の正常化に好反応して、景気敏感株を中心にして株価を切り上げてきた。

 2)しかし、正常化が進み、コロナ禍前の水準に達してきており、今後、経済成長率の伸び率が乏しくなる可能性が出てきた。

 3)雇用状況は、雇用統計が示しているものよりも、実質的に強いと思われる。賃金水準の比較的高い層の雇用回復は進んでいる。時給の低いサービス部門の回復の遅れが、雇用統計の改善度に表れていると思われる。しかし、ワクチン接種拡大でレストランなど飲食部門の再開が始まっており、今後、雇用統計に反映してくる。また、失業保険の給付額増額のため未就業を決め込んでいた層も、給付増額が終了する夏以降は職場に復帰すると見られる。したがって、雇用統計は遅効性があるため、急激に改善すると見込まれる。

 4)米連邦準備制度理事会(FRB)は、雇用統計の改善が進んでいないとして、テーパリング(量的金融緩和の段階的縮小)を議論しないスタンスを継続している。また、FRBは「インフレは一時的」として、期待インフレ率の上昇を軽視している。しかし、(1)穀物・鉄鉱石・非鉄などの商品市況の高騰が、企業コスト上昇による販売価格の値上がりが浸透し始めてきている。(2)企業の雇用活動が再開しているが、応募者が少なく、人出不足の状況になっている。そのため、賃金上昇を招いていることも、企業コストを引き上げている状況にある。

 5)以上のことから『インフレ懸念』は高まっており、『一時的ではなく持続性がある』と思われる。

 6)FRBが雇用統計の数値を見てから『テーパリング』を考え始めたときは、『時遅し』の様相になる可能性が高いと思う。

 7)バブル崩壊の足音が聞こえる。
  (1)ビットコインは、7百万円まで急騰後、半値近くまで急落している。 
  (2)SPAC(買収目的会社)ブームは短期間で過ぎ去り、損失が急拡大している。

 8)米国株式市場の鈍化傾向は、『インフレ懸念を見込んだ動き』であり、決断の遅いFRBを先回りした動きを示唆していると理解できなくもない。

●3.米バイデン政権、インフラ投資を180兆円に縮小、投資計画で野党へ譲歩案(共同通信・NHK)

 1)当初計画2兆2,500万ドル(240兆円)規模から1兆7,000億ドルへ約25%削減を表明。除外項目は、半導体の国内生産や先端技術の研究開発や製造業支援。(ただし、別法案での実施を目指す、としている)減額したのは、道路建設費、ブロードバンド(高速大容量)通信網整備費。

 2)野党・共和党は更なる投資計画5,700億ドル(約62兆円)への絞り込みと、財源確保のための法人税増税反対を求めている。共和党との隔たりは大きく、政権は引き続き、超党派での妥協点を探るが、協議が前進するかは依然、不透明。

●4.FOMC・4月議事録要旨では、多くの委員が『資産縮小の議論を始める』可能性を示唆

 1)4月米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録要旨が5/19に公表された。多くの委員が、『米国債など資産購入の縮小の議論を始める』可能性を示唆していることが判った。

 2)5/19公表後、米長期金利が上昇し、NYダウが一時▲580ドルと下げ幅を広げる場面があった。その後、景気正常化期待と長期金利低下で反発し▲164ドル安まで下げ幅を縮小した。

●5.米5月製造業PMIは61.5と、予想60.2・4月60.5から予想外の上昇で過去最高(フィスコ)

 1)5月サービス業PMIは70.1と、予想64.4・4月64.7を上回った。

 2)5月総合PMIも68.1と、4月63.5を上回り、過去最高を記録した。

 3)米国債相場は反落、10年債利回りは1.62⇒1.63%へ上昇。ドル買いが強まった。

●6.米・4月中古住宅販売件数585万戸と、予想607万戸・3月601万戸から減少(フィスコ)

 1)中古住宅販売件数が市場予想を下回っても、住宅価格の上昇に歯止めがかからなければ、インフレ高進懸念からテーパリング(量的金融緩和の段階的縮小)観測が強まり、株式市場の上値を抑制する可能性もあるので注意したい。(モーニングスター)

●7.ビットコイン、中国が改めて採掘取締りを表明、41,000から37,000ドルに急落(フィスコ)

●8.米FRB、「デジタル・ドル」を本格検討へ、先行する中国を意識(読売新聞)

●9.欧州関連

 1)イタリアの銀行ウニクレディトは、ハイブリッド債の利払い見送り(ブルームバーグ)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)5/20、上海総合指数▲4安、3,506
  ・李克強首相が5/19、コモディティ価格の安定化方針を出して、商品市況安につながったが、下値は限定的だった。
  ・2022年冬季オリンピックを控えて北京市では域内人口の80%以上のワクチン接種をしている。
  ・業種別では、石油・石炭・非鉄・鉄鋼など資源・素材株が下げを主導した。

 2)5/21、上海総合指数▲
  ・新規材料が乏しいなか、中国の金融引き締めが再び認識された。
  ・経済活動正常化を背景に、中国ではインフレ懸念が依然としてくすぶっている。
  ・金利上昇圧力が強まる状況にある。
  ・原油や金属などの先高観が強く、商品関連銘柄の物色が相場を支えている。

●2.TikTok創業者が退任へ、中国のバイトダンスCEO(共同通信)

 1)動画投稿アプリ「ティックトック」を運営する中国のIT企業、北京字節躍動科技(バイトダンス)は5/20、創業者で最高経営責任者の張一鳴氏がCEOから年末までに退任すると明らかにした。

 2)米中対立を背景とした米国事業の締め付けや、中国当局によるIT大手への統制強化との関連は不明。

●3.中国、青海省で5/22にM7.3、雲南省でも5/21にM6.1の地震(AFP)

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)5/20、日経平均+53円高、28,098円
  ・決算発表が一巡し材料が乏しい中、小幅反発。(ブルームバーグ)成長が見込める半導体関連や電機や精密に買戻し、東エレクやアドテストが上昇。

 2)5/21、日経平均+219円高、28,317円
  ・米株式市場でハイテクが買われた流れを受け、値嵩さハイテク株に買いが入った。一時+300円超となったが、緊急事態宣言の延長懸念などで景気敏感株の一角が売られ相場の重石となった。

●2.日本株は、海外・国内の短期筋の日替わり売買で、方向性に欠く展開が続く

 1)いずれにしても、日本株は米国株式市場次第で変化はない。

 2)決算という材料もなくなり、個別材料で動く展開になってきている。

 3)7月上旬まで、方向感のない展開が続く可能性がある。

●3.インド変異株、感染力が従来の2倍以上、「極めて強く警戒」と西村経済再生相(ロイター)

●4.企業動向

 1)ソニー、川重  産業用遠隔操作ロボット共同開発へ新会社 (TBS)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・7270 SUBARU  米国向け販売好調。業績回復。
 ・6981 村田製作所  半導体・スマホ向け部品好調。
 ・8604 野村     業績堅調。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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