自動車社会の将来像

2021年2月17日 08:36

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トヨタの燃料電池大型商用トラックの新型プロトタイプ(画像: トヨタ自動車の発表資料より)

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●「脱炭素・CO2排出制限」と「自動車のEV車シフト」

 地球温暖化、脱炭素、CO2排出制限と喧しいが、「脱炭素・CO2排出制限」と「自動車のEV車シフト」は、必ずしも同じ思想から発生したのでは無い。

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 中国が「現状の電源構成と発電技術」のままでEV車化すれば、内燃機関の車の排気ガスだけで大気汚染するよりも、石炭火力発電所がこのEV車に供給するための発電時に排出するガスの方が環境悪化させる事は明白だ。

 「中国」と「EV車転換」のキーワードから考察すれば、「内燃機関が主流であり続ければ、未来永劫欧米や日本に技術的に追い付けない中国の技術レベル」と、「ゲームの土俵とルールを変えれば何とかなるとの独裁国家の思惑」からの動向に過ぎない。

●欧州勢の誤算

 当初、欧州勢は省燃費をハイブリッド技術で先行する日本のメーカーに対抗して、好燃費のディーゼルエンジンで対抗する戦略を組み立てていた。

 しかし、VWのディーゼルエンジン排気ガス偽装事件によってその戦略が破綻した。

 日本のハイブリッド技術に降伏するのを潔しとしない欧州勢は、市場規模に惹かれて「中国のEV転換戦略」に追従して、EV、EVと雪崩をうった。

 欧州各国の電源構成とかインフラは、正しく分析されたとは思えない。

●途上国の自動車産業

 三菱自動車が韓国の自動車産業に技術支援を行っていたが、この連携業務の終了に際して、本来回収すべき治型具等を置き土産に残し与えたそうだ。

 この事象に対して、真偽のほどは不明だが、某社の社長が激怒したとの話が伝わって来た事がある。

 曰く、「これで彼らは日本に追い付くまでに要する期間を、10年は縮める事が出来ただろう」と。

 古い設計のエンジン技術を与えただけでも、10年間もの格差を埋め合わせられる程、日本の技術は進んでいる。

 日本人は、ややもすれば、「性善説」に基づき、寛容と思いやりの精神を発揮するが、近隣諸国には通じない。

 米軍供与の戦闘機のブラックボックスを、無断で開けて、結局元に戻せずに米軍を激怒させた国もあれば、日本の技術指導を受けて製造した鉄道車両技術を、そのままパクったにも拘わらず、「独自開発技術」だと強弁して、第三国に「技術移転」しようとする国もある。

 これらの国々は、知的財産に対する国際的なルールなんぞは、馬耳東風でシカトを決め込む。それに対して、お人好しの日本側は、ただ手をこまねいているだけの状況だ。

●中国の電源構成はCO2大量排出型

 中国が「EV車」に転換しても、それを動かす電気は「排出レベルが極めて劣悪な旧型石炭火力発電」で発電する。

 「ベースロード電源を見据えたEV推しか」の記事で引用した各国の電源構成の表を見ると、中国の電源構成は、70.8%がCO2排出を伴う。

 CO2排出を伴う「石炭+石油+天然ガス」では日本は77.3%で、一見日本の方が酷い印象を与えるが、天然ガスが37.5%で、石炭は33.2%でしか無い。

 そして日本の石炭火力発電は「クリーンコール技術」によるもので、従来タイプと較べてクリーンだ。

 中国は石炭が67.9%と圧倒的に多い上に、前近代的な「煙もくもく」の石炭火力発電所では、その排出レベルが極端に異なる。

 こんな劣悪な発電環境の電気でEV車を動かすよりも、純粋な内燃機関の日本車を動かす方が余程「大気汚染」にとっては有利な筈だ。

●将来の自動車の役割分担

 どうしても「ガソリン車を除外したい」のなら、将来的には、車両の用途別の原動機は以下の様な「分担」となるだろう。

 ・大型車による長距離・大量輸送は「燃料電池車」(写真1参照)

 因みに、写真のトラックは、荷重量は8万ポンド(約36トン)、航続距離は300マイル(約480km)以上と、幅広い商用トラックニーズに適応できる設計となっている。

 ・長距離移動を伴う可能性のある一般乗用車は「燃料電池車」「水素エンジン車」「ハイブリッド車」
 ・遠距離高速バス、観光バスは「燃料電池車」「ハイブリッド車」
 ・過疎地の軽乗用車、軽貨物車は「ハイブリッド車」

●EV車が担えるのは僅かな分野だ

 ・EV車が担える分野は、市街地の一定ルートを巡回する「路線バス」
 ・市街地内での「近距離配送トラック」
 ・一般家庭のセカンドカーとしての「近隣専用の乗用車」
 ・EV車としての加速性能だけが取り柄の、複数保有層向け「スポーツカー」

 EV車に「1充電走行距離」の問題が解消し、従来の内燃機関と同等の性能が実現したとしても、インフラ整備や電力事情解消のための発電設備拡張等で問題があり、水素インフラを整備した方が有効な事に変わりは無い。

 勿論、開発途上国ではガソリン車、ディーゼル車が絶対に必要であると同時に、趣味性の高いスポーツカーは、極一部を除いてはガソリン車で在り続けるだろう。

 EV車の「ワンポイントリリーフ」は多分失点が多く、将来「クローザー」は「水素」となるだろう。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る

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