相場展望11月11日号 ワクチン開発・普及が、株・債券などの急落を招く恐れ 株式市場は、(1)米・新大統領(2)ワクチン開発で急騰

2020年11月11日 07:50

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■I.米国株式市場

●1.米株式市況の推移

 1)11/09、NYダウ+834ドル高の29,157ドル
  ・バイデン新大統領当選情報と、ファイザーの新型コロナワクチン開発の好結果を受けて一時+1,600ドル超上昇した。ドル高・円安で105.33円(前日103.37円)。
  ・これだけの上昇幅を記録しながら、コロナ禍で上げたハイテク株の下落が特徴。前日比、ズーム▲17.4%、ネットフリックス▲8.6%、アマゾン▲5.1%など。

【前回は】相場展望11月9日号 大統領が誰?訴訟?関係なし、社会構造変革株に投資 新型コロナの影響で、最高と最悪の決算が共存

 2)11/10、NYダウ+262ドル高の29,420ドル
  ・新型コロナワクチンの普及から景気回復期待が膨らみ、景気敏感株が引き続き強い。
  ・NYダウは強い半面、ハイテク株が多いナスダック総合指数株の売りが続いている。米国株主要3指数の内、NYダウが上昇、ナスダックとS&P500が下落と分かれる。

●2.コロナワクチン開発進展⇒経済正常化⇒金融緩和の正常化⇒金融収縮で株・債券の急落を招く恐れ

 1)新型コロナのワクチン開発で、経済の正常化が進展すると、今までの金融緩和政策も正常化に向かう可能性が出てくる。

 2)つまり、超金融緩和策からの正常化とは、世界に雪崩れ込んだ資金の回収を日米欧などの各国中央銀行が始めることである。

 3)結果として、超金融緩和で膨らんだ株式・債券市場から、資金が流出する局面を迎える。

 4)市場から資金が流出に向かうと、金融市場(株式、債券、金など)は収縮に対応しようとして、返済資金作りのための換金売りが売りを呼び急落する可能性があり、警戒したい。

●3.経済正常化への軌道を織り込み、米10年債利回りは3月来の水準の0.97%に上昇(フィスコから抜粋

 1)欧米で新型コロナが再流行し、欧州ではマイナス成長に再度落ち込む可能性を懸念。

 2)その中、米製薬大手のファイザーのワクチンは有効性90%以上と発表、11月中に米食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可申請と報じられた。

 3)モデルナ、アストラゼネカ、J&Jも最終治験入りし、異例な速さでの開発で、投資家は2021年中ごろには、経済正常化することを期待している。

 4)ゴールドマンサックスは、欧州経済は9~12月期の悪化で、2020年の世界経済の国内総生産(GDP)▲3.9%減を予想。2021年は+6%増にV型回復を予想している。

 5)米国では、2021年1月の大統領就任式を待たずに1兆ドル規模の追加経済対策を成立させる可能性もあり、成長を支援すると見ている。

 6)これらを受け、米10年国債利回りは0.97%と3月以来の高水準に上昇し、1.0%も視野に入った。この状況は、経済がパンデミック前の水準に回復するとの見通しを反映している。

 7)ワクチンの承認・実用化で、大幅に落ち込んでいた旅行関連などの業種の大幅回復を予想している。

 8)ただし、(1)ファイザーのワクチンの保管・運搬にはマイナス70~80度の超低温で管理しないと品質確保できないため、超低温施設・物流の整備が必要となる。(2)配送されたロットごとに品質確認・解凍・注射と、非常に大掛かりなオペレーションを必要とする。(3)若者にワクチン接種をどのように受けさせるのか。などの問題解決はこれからの事項となる。(Newsweek)
なお、モデルナ社のワクチンは、超低温保管の必要がない。(ロイター)
加えて、(4)ワクチン接種後の有効期間が3カ月程度という声もあり、長期間化が必要。 

 9)東京都医師会・尾崎会長は『予防効果があるのか? 出来た抗体がどれぐらい持つのか、まだ分かっていない、「マイナス80度」の設備がいるので、かかりつけ医でワクチンを打つことは不可能に近い、早計に言う話ではない』との見方を11/10の記者会見で述べた。(PAGE)

 10)日本政府はファイザー社から、6,000万人分のワクチン供給を受けることで基本合意している。(共同)

●4.バイデン氏、(1)対日外交は『実務重視』、(2)保護主義政策の急転換は難しく、TPP封印(時事から抜粋

 1)対日外交は、首脳間関係の重視から、オバマ政権時と同様に「同盟中心の実務的な関係重視」に転換すると見られる。
  ・中国への対抗は、日本などの同盟国と連携する考え方を明言している。
  ・在日米軍駐留経費の日本側負担は、実務者交渉を重視し、法外な要求はしない、と見ている。
  ・環太平洋連携協定(TPP)は、公約である政策綱領への記載を見送った。「いかなる新たな貿易協定交渉は入らない」と綱領に記し、バイデン氏持論のTPP再交渉を封印した。これは市場開放に慎重な米国中西部の「ラストベルト」(さび付いた工業地帯)の選挙での激戦州に配慮した綱領となっている。

 2)激変が予想される政策
  ・エネルギー政策:地球温暖化の国際的枠組み「パリ協定」には復帰する。
  ・脱炭素で大規模投資:再生可能エネルギーや電気自動車(EV)の市場拡大を見込む。
  ・資源開発:規制対応する。

 3)中国との『戦略的競合』関係は長く続きそう(FNNプライムオンラインより抜粋
  ・同盟国やパートナーとの緊密な協力関係を構築する。
  ・インド太平洋地域で確固たる軍事プレゼンスを維持する。
  ・新疆ウイグルと香港の危機的状況を踏まえ、米国的価値と人権擁護を推進する。
  ・中国によるプロパガンダを封じ込める。
  ・国際機関で主導的な役割を果たす。

●5.ファイザーがコロナワクチンの大規模臨床試験で90%以上の感染防ぐと報告(ブルームバーグ)

 1)ファイザーは、米FDAに緊急使用許可申請が11月第3週になると語った。

 2)米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長「モデルナもファイザーと類似の結果を出す可能性がある」と語った。

●6.新型コロナの世界の感染者5,000万人超で、冬の欧米に「第2、3波」が襲来(FNN)

●7.米ブラックロック、ネジレ議会継続でインフレ期待後退を予想、成長株を選好 (ブルームバーグより抜粋

 1)11/3投票の米選挙の結果、大統領の所属政党と上下両院の一方の多数派が異なる「分割政府」になった場合、『財政刺激策の規模は抑えられ、インフレ期待後退し、債券利回りの上昇余地が限定的なものとなる』と11/7公表のレポートで分析している。『ある程度の財政出動は短期的にはあり得るが、民主党が上下両院を制した場合に比べると規模と範囲は控えめな水準になる』見通しだ。

 2)大統領選は民主党のバイデン氏が当選を確実にし、民主党が下院の過半数を維持したが、上院で過半数を獲得できる公算は小さくなった。
 
 3)分割政府の見通しで、利回りは低下しており、こうした状況はクレジットや成長企業にとって追い風だ、とブラックロックは指摘。短期的には『低金利と利回り追求、成長株』の市場環境に回帰する方向だという。

 4)ブラックロックは、(1)バイデン次期政権と(2)ネジレ議会の組み合わせで、(1)質の高い大型株やテクノロジーとヘルスケア銘柄が好調に推移すると予想。(2)新興国市場、特に日本を除くアジアで貿易を巡るセンチメントが改善し好影響を受けそうだと指摘した。

●8.米政権移行が長引けば、今後も株式市場や為替市場が影響を受ける可能性もある(DZH)

 1)トランプ政権は最後の悪あがきを行うのではないかとの声が出ている。

●9.FRBは、新型コロナ拡大続けば、資産価格に大幅下落のリスクを予想(ブルームバーグより抜粋

 1)米連邦準備制度理事会(FRB)は、新型コロナのパンデミック(世界的流行)による経済的影響が今後数カ月で悪化した場合、主要市場の資産価格がさらに打撃を受ける可能性があると警告した。

 2)商業用不動産の価値が既に下落し始めており、弱さが見られるとした。生命保険会社の負債は2008年の金融危機以来見られなかった水準に達していると言及。エネルギー、旅行、接客業といった経済セクターは特に、パンデミック長期化の打撃を受けやすい、と付け加えた。

 3)ワクチンの生産・流通の遅れが長引いた場合、始まったばかりの景気回復を阻害し、デフォルト(債務不履行)の引き金となりかねない、とした。

 4)FRBは今回の報告で、地球温暖化が市場変動につながるとも、説明した。

●10.米ダラス地区連銀総裁、米経済の短期の下方リスクを懸念、長期的には楽観(ロイター)

●11.企業動向

 1)米連邦航空局(FAA)が、ボーイング737MAXの運航再開許可を11/18にも発表か(ブルームバーグ)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)11/09、上海総合指数は+61高の3,373
  ・米大統領選でバイデン氏が当選確実にしたため、ハイテク分野を巡る米中対立が和らぐと期待され、前日比+1.9%高と反発した。(フィスコ)

 2)11/10、上海総合指数は▲13安の3,360
  ・前日までの上昇が急ピッチだったこともあり▲0.4%安、売り圧力が意識されたが、大きく売り込む動きはない。(亜州リサーチ)

●2.アント社、IPO中止で評価額は最大▲14.5兆円減少か


■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)11/09、日経平均は+514円高の24,839円
  ・米大統領選でバイデン候補が当選確実にしたことで、米政治の不透明感が後退、米追加経済対策が早期に実行されるとの米景気回復への期待が広がった。
  ・日本企業の業績に対する投資家の安心感も高まり、アジア株ともども大幅高。

 2)11/10、日経平均は+65円高の24,905円
  ・欧米の株高を受け、日経平均は29年ぶり25,000円台を回復したが、成長株に利益確定売りが出た。
  ・マザーズとジャスダックの新興株の大幅下落と、米実質金利上昇に警戒感。

●2.日本株

 1)日経平均は数銘柄の操縦で、上下にコントロールできる。しかし、TOPIX指数を、恣意的に株価操縦するのに難しさがある。

 2)11/06は、外資短期筋が先物合計で+10,762枚もの大量の買い越しをし、日経平均を+219円高へと牽引して、国内勢の買いを誘った。11/09は、国内大手の買い仕掛けに対し、外資系は売り浴びせで上手く利益確定をした。11/10も外資系はNY夜間市場で約800円高と仕掛けをし、日経平均終値+65円高へ縮小。このように、外資系の手口は、NY市場の夜間取引で日経平均先物を吊り上げて、翌朝の日本株市場で売り浴びせるというパターンが見受けられる。

 3)本日11/11も、NYダウは+171ドル高にもかかわらず日経平均の夜間市場は約+450円高となっている(日本時間11/11、午前3時50分現在)。このことから、今日の日経平均(現物)はリズム的に「朝高⇒終値で縮小」を予想する。外資系短期筋の日本株に対する見方は、日本株の長期上昇は見ておらず、株価の波を起こして儲けるというスタンスのように見受けた。

●2.政府新型コロナ対策分科会・尾身会長「全国的増加は間違いない。急速拡大の可能性」(PAGE)

●3.10月の景況感指数は54.5と、Go Toで改善し、2年9カ月ぶりの水準(朝日新聞)

●4.企業業績

 1)ソフトバンクG 9月中間決算、純利益+1兆8,832億円と過去最高で前年同期の4.5倍。米携帯のTモバイルUS株式売却や投資企業の株価上昇が貢献。(時事)
 2)資生堂     12月通期の純損失を従来▲220億円予想から▲300億円赤字に(共同)
 3)IHI      3月通期の営業利益+200億円で前年+480億円から落ち込む(ロイター)コロナで航空エンジンが低迷。

■IV.注目銘柄(株式投資は自己責任でお願いします)

 ・3563 スシロー     増益基調
 ・2326 デジタルアーツ  セキュリティ分野で業績拡大期待
 ・4502 武田薬品     黒字転換

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

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