アルツハイマーの原因となる線維が宇宙空間で独自の形成、創薬に貢献か NINSなど

2020年6月18日 11:54

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地上で形成されたアミロイド線維(上)とISSの日本実験棟きぼうでの微小重力環境下で形成されたアミロイド線維(下)。 独特な構造をもつ。 (c) JAXA/NINS

地上で形成されたアミロイド線維(上)とISSの日本実験棟きぼうでの微小重力環境下で形成されたアミロイド線維(下)。 独特な構造をもつ。 (c) JAXA/NINS[写真拡大]

 自然科学研究機構(NINS)は15日、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」で、微小重力環境におけるアミロイド線維形成を調べた結果、地上とは異なる構造が形成されることを発見したと発表した。アミロイド線維はアルツハイマー病などが発症する原因と考えられ、本成果が創薬づくりに貢献することが期待されるという。

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■さまざまな病気を引き起こすアミロイド線維

 タンパク質が規則正しく重合したのがアミロイド線維だ。プリオン病や糖尿病などの原因と考えられるアミロイド線維が脳に蓄積されると、神経細胞に変化が生じ、脳が萎縮することでアルツハイマー病が発症する。これらの病気の治療や予防のためは、線維が形成されるメカニズムの理解が不可欠だが、その詳細は不明だという。

 NINS、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、名古屋市立大学の研究者らから構成されるグループは、微小重力環境におけるアミロイド線維の形成実験を計画した。地上から約400キロメートル上空のISSにある「きぼう」では、微小重力環境など宇宙環境を活かした実験や研究が実施可能だ。2017年からきぼうにてアミロイド線維の形成実験を実施し、地球に持ち帰ったサンプルを調査した。

■微小重力環境が生み出す特殊な線維形成メカニズム

 その結果、微小重力環境ではアミロイド線維の形成が地上よりも遅いことが判明した。また形成されたアミロイド線維の形態を詳しく調べた結果、地上とは異なる構造をもつアミロイド線維が確認された。研究グループによると、対流などに影響されずにゆっくりと伸長することで独自の構造が形成されているという。

 今後は、本成果をもとに構造を詳しく分析することで、アミロイド線維が原因の病気の発症メカニズムが分子レベルで明らかになり、創薬づくりに役立つことが期待されるとしている。

 研究の詳細は、国際学術誌・ネーチャー・パートナー・ジャーナル(NPJ) Microgravityにて12日に掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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