日米の緊急金融緩和は本当に効いたのか

2020年3月19日 11:27

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 FRBが日曜日の緊急会合に踏み切り、100bpの利下げや国債買入を決定するなか、株式市場はネガティブに反応した。

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 「FRBが急いで利下げを講じなくてはならないほどの懸念があるのではないか」との不安を煽ったとして、むしろ予定されたFOMCを待たなかったFRBへの批判的な声が強まる結果となってしまったが、同様に政策決定会合を前倒した日銀についても、「ETF買入拡大を決定したにも関わらず、株価が下がった」との厳しい声があがる1日となってしまった。

 スピーディな対応を評価する声もあれば、拙速と批判する声もあり、両中銀の政策を如何に評価すべきかについては難しいところであるが、それぞれ「必要とされる場所」に資金を供給する旨の政策を講じたところは高く評価されるべきである。

 ファンドやトレーダーにおいては、むしろこの下げ相場にどこまで乗れるか、という状況であり、中央銀行が株価の下支えに躍起になるのは逆効果で、実体経済が厳しい局面でのラストリゾートとしての役割さえ果たせばよい。

 市場のネガティブ反応の背景について考えると、最も重要なのは原油安によるインフレ期待の下押しバイアスではなかろうか。原油市場における「歴史的な価格低迷」を受け、10年物の米国債と物価連動国債の差が示す「期待インフレ率」は歴史的な低水準に沈んでおり、つまり、実質金利の低下という緩和効果を米国は得られていないのが実態である。

 実質金利が下がらないことでコモディティ価格が上がり辛く、金が足元で下落しているのも「実質金利の上昇」に拠るものと考えられる。WTIで1バレル30ドルが続いたとしても、新型コロナウイルス感染拡大策に伴う消費減退見通しも併せ考えれば、100bpを下回る現状の期待インフレ率は長期化しかねない。

 実体経済に対しても、マーケットに対しても「緩和効果」を及ぼすのは名目金利ではなく実質金利であることを踏まえれば、結果として100bpでは利下げが足りなかったと言わざるを得ない。

 米国株式市場の底打ち→リバウンドの条件として原油価格の上昇を挙げ続け、サウジアラビアの増産に伴う原油価格の急落を米国にとっての大きなリスクと考えるが、100bpの利下げが「効かなかった」ことの背景にこの原油安が存在していると結論付けざるを得ない。

 中国や米国が戦略備蓄を積み増す旨を表明するなか、我が国ではノーアクションだが、「原油安のリスク」はもう少し世界で意識されるべきであろう。

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