日産・スカイライン「プロパイロット2.0」を2年前の装備と比較してみる

2019年9月17日 11:06

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「プロパイロット2.0」(インテリジェント高速道路ルート走行)のイメージ。(画像: 日産自動車の発表資料より)

「プロパイロット2.0」(インテリジェント高速道路ルート走行)のイメージ。(画像: 日産自動車の発表資料より)[写真拡大]

 2019年7月にマイナーチェンジされた日産・スカイラインの目玉は、やはり「プロパイロット2.0」だろう。ハイブリッド車(HEV)にしか搭載されないのだが、ステアリングホイールから手を放して安心して走行できると試乗記でも話題しきりである。

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 日産自動車では、このプロパイロット2.0を「360度センシング」と謳っている。7個のカメラ、5個のミリ波レーダー、12個の超音波センサー(ソナー)を備えており、文字通り自車の周り360度の障害物すべてを検知する。

 カメラは、フロントカメラ3個、AVMカメラが4個。AVMは、日産がいう「インテリジェントアラウンドビューモニター」のことで、前後左右4つのカメラで撮影したものを、クルマを上空から見下ろしているかのように1つの映像としてモニターに映す技術だ。12個の超音波センサーは、すでに日産・リーフにも搭載されているもので、自動駐車システム「プロパイロットパーキング」にも活用されている。

 さて、ミリ波レーダーについてだが、2年前、2017年秋発売の高級セダントヨタ・レクサスLSには、リアバンパー左右2つに加えてフロントバンパーの左右に初めてミリ波レーダーが搭載された。当時、やっとドイツのアウディに追いついたかという程度だった。

それに比べると、2019年の日産・新型スカイラインには、フロント中央に1つ、フロントバンパー左右に2つ、リアバンパー左右に2つで計5つのミリ波レーダーが装備されており、2年を経て衝突回避などの装備が大幅に進化していることがうかがえる。徐々に普及したことで、当時課題となっていたコストの問題も低減したと思われる。

 しかし、まだまだ検知能力が十分とは言えない。現在使用されているミリ波レーダーの周波数帯は24GHzと思われるが、これであると「人の検知」は難しいとされている。検知角度が少なく、例えば、歩行者が道路を横切れば検知できるが、道路わきに立っているだけでは検知できない。

 また、事故が多発する交差点(類型別交通死亡事故の3位)での死角も多い。これを79GHzまで上げると検知角度は広がり、クルマのすぐ隣に小さな子供がいても検知できるようになるという。

 そのため、その他にもカメラや超音波センサーを多数装備して補うことにより、日産・スカイラインのプロパイロット2.0では「360度センシング」が可能となっているのだ。

 さらに「プロパイロット2.0」には、「3次元高精度地図データ」が採用されており、カメラなどでは限界がある遠くの道路状況を先読みすることを可能としている。その精度はセンチメートル単位ということで、車線のどの位置を走行しているのかも認識できるという。ある試乗レポートによれば、車線の真ん中を的確に維持することが出来ており、自分で運転しているよりも安定していると評価がある。

 日産・新型スカイラインの「プロパイロット2.0」は、2年前の装備よりも確実に進化している。しかし、細かい点ではまだまだ人間の命を完全にゆだねるというわけには行かず、実験段階だ。さらに、2年後の2021年には完全自動運転となっているのだろうか?

 日産もホンダも技術的先進性では最先端を行くレベルを持っているのだが、問題は、その開発を実車に装備して商品力を上げ、売り上げと利益率を上げる力とする、いわば「計画性」だ。つまり、現代製造業に要求されるトヨタの「TNGA」に匹敵する、「開発・量産・販売体制」の一貫した管理が出来ていないことだ。第四次産業革命を受け入れ、乗り切るにはどうしても必要な「資金効率向上」に必要な経営技術だ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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