ミッション(変速機)事情は花盛り しかしEV時代に消えゆくのみか?

2019年3月23日 17:33

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トヨタの無段変速機(CVT)「Direct Shift-CVT」。(画像: トヨタ自動車の発表資料より)

トヨタの無段変速機(CVT)「Direct Shift-CVT」。(画像: トヨタ自動車の発表資料より)[写真拡大]

 現代のミッション(変速機)は大きく分けると、MT・AT・CVT・DCT・電気式CVTと分類できるのかもしれない。50年前私が運転免許を取得した時代、日本では、ATはトヨタAT「トヨグライド2速」が発売になった程度である。アメリカ車ではMTは少数でATが多数だったが、日本車では当時ATは5%程度と言われていた。

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 その後、ATの普及率は拡大していったが、「燃費が5%悪い」と言われていた。それは、トルクコンバータが常に働いており、エンジン駆動中は常にクラッチが少々スリップしているような状態だったからだ。その後ロックアップ装置ができて、スタートの時のように、「半クラッチ状態」、つまり少しクラッチを滑らせていないと「エンスト」が起きてしまうようなときだけトルクコンバータを通し、エンジン回転がある程度になったら直結とするようになった。

 こうしてATは燃費もよくなったが、CVTの無段変速にはかなわなかった。それは、エンジンが理想的回転で回り続けるので燃費が向上できたからだ。しかしCVTの、「ラバーフィール」と評されるアクセルの踏み心地について、「エンジン回転が上がるのに車速が遅れる」フィーリングが嫌われた。しかし最近トヨタのCVTは、1段目を直接つなげることで発進時の遅れ感を解消している。

 それから、ドイツなど欧州車が得意とするDCTがある。これは、ドライクラッチ操作を自動で行うのだ。クラッチ操作が難しいとされるので、半クラッチ状態など自動で上手に行ってくれる。このミッションは2つのミッションを組み合わせたような構造で、交互に変速動作をすることで、なめらかなフィーリングとすることができた。CVTに近い理想的なエンジン回転数を確保し、CVTのようなラバーフィールを逃れている。

 こうしてミッションは、それぞれの構造を補うように開発が進んでいる。しかしなんといっても、「トヨタ・電気式CVT」を別に考えなければなるまい。これは、ミッションだけでなくクラッチの役割も兼ね、トルクミックス機能が特徴だ。「トヨタのHVは複雑なメカニズム」と思っている専門家もいる。しかし幸いにも、かなりシンプルで小さく軽くできているのはびっくりさせられる。それはクラッチが別に必要とならないからだ。

 「トヨタ・電気式CVT」は、エンジン入力、モーター入力、回生ブレーキ、発電、駆動軸出力などを僅かなギアで繋ぎ、モーターの負荷を調節することで、ギアを「から回し」から「モーターのみ」・「エンジンとモーター」・「エンジン直結」と無段階の調節できる優れモノだ。これは世界に誇るトヨタの発明だが、その仕組みを語れるディーラーが存在しないのは残念だ。

 これからEV時代になると、「トルクミックス」は必要がなくなる。高速までモーターを使用するのならミッションは必要になるかもしれない。現在、必要性が議論されている状態だ。ミッションの新たな役割を専門家諸氏に問いたい。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

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