iPS細胞から高効率で血小板を量産する手法を発見、日本医療研究開発機構

2018年7月16日 06:57

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骨髄や血管内の生体内において、乱流が発生しているときに巨核球から血小板が生成されて いることが分かった。それを応用して生体外で発生させる縦型培養装置を開発し、物理パラメータを適合させることによって、1千億個以上の血小板を作製することに成功した。(画像:日本医療研究開発機構発表資料より)

骨髄や血管内の生体内において、乱流が発生しているときに巨核球から血小板が生成されて いることが分かった。それを応用して生体外で発生させる縦型培養装置を開発し、物理パラメータを適合させることによって、1千億個以上の血小板を作製することに成功した。(画像:日本医療研究開発機構発表資料より)[写真拡大]

 血小板は輸血において欠かせないものである。基本的には献血による輸血が主流ではあるのだが、将来的にこの手段だけでは血小板が不足するおそれがあり、現在、iPS細胞から血小板を量産する方法が研究されている。既存の方法では大量生産が難しかったのだが、今回、日本医療研究開発機構などの研究グループが、iPS細胞から高効率で血小板を量産する手法を発見することに成功したという。

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 研究に名を連ねているのは、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)、滋賀医科大学薬理学講座、慶應義塾大学輸血・細胞療法センター、名古屋大学マイクロ・ナノシステム工学専攻、自治医科大学分子病態治療研究センター、千葉大学再生治療学研究センター、宮崎大学医学部解剖学講座、メガカリオン社、佐竹化学機械工業攪拌技術研究所である。

 さて、従来の血小板培養法は、培養皿を用いた静置培養であったが、これは量産が困難である上、既に活性化が始まり凝集を生じている血小板ができてしまい、輸血に必要とされる非活性型の血小板を得ることが難しいという問題があった。

 研究グループは、まずマウスの生体内の観察から、血液の乱流(動きが不規則に絶えず変動している乱れた状態の流体)が巨核球から血小板を生成するキーとなっていることを突き止めた。そこで、乱流を人工的に発生させることのできる、縦型培養装置を開発し、さらに乱流エネルギーや、せん断応力などの物理パラメータを適合させることで、実際の輸血に必要な高品質な血小板を作成することを可能としたのである。

 輸血用血小板としての実用化に実際に必要な数がどれくらいであるかというと、最低限1000億個だという。従来の方法ではiPS細胞を70億個用意して26日間を要したものが、10mlの培養液から1ccあたり200~400万の血小板が作成可能になった。つまり、理論上は、250億個の巨核球から、5日で1000億個の血小板を生産できると計算されたのである。理論の通りの生産結果が得られたわけではないが、乱流が血小板製造のキーである事実が突き止められた影響は大きいという。

 なお、研究の詳細は「Cell」に掲載されている。(記事:藤沢文太・記事一覧を見る

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