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AI需要で成熟世代チップが供給逼迫、台湾VSMCのシンガポール新工場は稼働前に完売

(Vis.com.tw)[写真拡大]
パワーマネジメントICやディスプレイドライバICなどの成熟世代(マチュアノード)半導体を主力とする台湾のファウンドリ、バンガード・インターナショナル・セミコンダクター(VIS)は月曜(8月3日)、調達に関する厳しい見通しを示した。2027年に買い手が負担するウェーハ価格の引き上げ幅は、2026年を下回らないという。さらに、シンガポールに建設中の新工場では、第1フェーズのウェーハ生産枠が稼働開始前にすべて長期契約で埋まっている。AIサーバーの電源供給装置から自動車制御、スマートフォンのディスプレイまで、成熟世代チップを部品表に組み込む電子機器メーカーにとって、2027年の価格と供給枠を確保するための交渉余地は急速に狭まっている。
■調達における「構造的」の真の意味
Taipei Timesは8月5日、VISの2026年第2四半期決算について報じた。VISのファン・ルー(Fang Leuh)会長は、2026年第2四半期の決算説明会でアナリストに対し、「来年の全体的な価格引き上げ幅は、今年を下回ることはない」と述べた。また、AI主導の需要急増は短期的な上昇局面ではなく、構造的な成長だとの認識を示した。VISは現在、2027年の価格設定について顧客と交渉している。8インチウェーハの生産能力はすでにフル稼働か、それに近い状態にあり、確定受注を見通せる期間は前四半期の3カ月から4カ月へ延びている。
VISが発表した2026年第2四半期の売上高は142億4500万台湾ドル(約4億3900万米ドル、約694億円)で、前四半期比13.7%増、前年同期比21.8%増となった。株主に帰属する税引き後利益は29億7500万台湾ドル(約9200万米ドル、約145億円)に達し、前年同期比45.6%増となった。1株当たり利益は前年同期の1.10台湾ドルから1.56台湾ドルに上昇し、粗利益率は2025年同期の28.0%から32.3%に改善した。
ファン会長が用いた「構造的」という言葉は、単なる修辞ではない。需要主導で最終的に需給が調整されたコロナ禍後の半導体不足と、供給側の制約が重なっている現在の環境とを区別する表現である。
需要面では、AIインフラの展開により、パワーマネジメントIC(PMIC)に対する複数年にわたる持続的な需要が生まれている。PMICは、GPUサーバーラック内で電力を調整、分配、変換するチップである。最新のAIサーバークラスターは、従来型サーバーよりもラック当たり多くの電源関連部品を必要とする。NVIDIAのBlackwell世代GPUシステムは、複数の電源系統にまたがる数十の高電流・高電圧電力変換回路に依存している。VISのウェイ・ジーシー(Wei Jih-Shih)社長によると、2025年上半期には売上高に占める割合が1桁台前半だったAI関連製品は、2026年下半期にはすでに2桁台に達し、前年同期比でほぼ倍増しているという。さらに、2027年にかけても成長が見込まれている。
供給面の状況も厳しい。VISが製造するPMICは、BCD(バイポーラ・CMOS・DMOS)プロセス技術を利用している。これは3種類のトランジスタを単一のダイに統合する特殊な製造手法で、8インチ(200mm)ウェーハによる生産に適している。TrendForceの予測によると、世界の生産能力が縮小する中でも、AI向けパワーICの需要により、8インチファブの稼働率は80%を上回る見通しだ。
AIサーバー需要がBCDの生産能力を強く圧迫する一方、世界の8インチウェーハ生産能力は縮小している。TrendForceは、TSMCとサムスンによる計画的な工場閉鎖を背景に、2027年上半期まで8インチの生産能力がマイナス成長になると予測している。VISや中国のファウンドリが進める限定的な増強では、この減少を補えない見通しだ。The Registerは2026年4月、サムスンの8インチファブ閉鎖により、一般サーバー向けPMICの生産能力がさらに逼迫し、リードタイムが大幅に延びると予想されると報じた。
決算説明会では価格動向が中心に語られたが、調達上、より差し迫った問題は、特定のBCD製品やパワーマネジメント製品を価格にかかわらず確保できるかどうかである。業界データによると、PMICのリードタイムは1年前の21~26週間から、現在は35~40週間に延びている。2027年の生産枠について長期契約を結んでいない買い手は、価格上昇だけでなく、供給割り当ての制約に直面する可能性がある。
■稼働前に全量契約済みとなったシンガポール新工場
月曜の説明で特に注目されたのが、VISとNXPセミコンダクターズの合弁会社、VisionPower Semiconductor Manufacturing Company(VSMC)がシンガポールに建設している12インチ(300mm)工場の状況だ。同工場は2027年第1四半期に量産を開始する予定である。NXPセミコンダクターズの年次報告書によると、VSMCへの出資比率はVISが60%、NXPが40%で、NXPは同施設の生産能力の40%を利用する権利を持つ。
同施設の第1フェーズにおける月間生産枠は、すでに全量が契約済みとなっている。第1フェーズの生産能力は当初、月産5万5000枚と計画されていたが、プロセスの複雑さと製品構成の調整を受けて4万4000枚に下方修正された。この月産4万4000枚の全量が、顧客との長期契約によって確保されている。最初の生産フェーズには、新たに交渉できるスポット生産枠が残っていない。
生産能力の見直しに伴い、プロジェクト費用も修正された。総投資額は78億ドルから67億ドル(約1兆586億円)に減額された。原文によると、このうちVISの負担額は24億ドル(約3792億円)、NXPは16億ドル(約2528億円)とされている。建設と製造装置の設置は当初予定を上回るペースで進んでおり、すでに200台を超える装置が工場へ搬入された。ファン会長によると、歩留まりは良好で、損益分岐点の達成とフル稼働の時期は当初予想より早まる見込みだという。
シンガポール工場が単なる生産能力増強にとどまらない理由は、その製造範囲にある。VSMCは、TSMCからライセンス供与された30~40ナノメートルのプロセス技術を使い、高度な2.5Dチップパッケージングに用いられるシリコン中間層を製造するインターポーザの受託製造サービスを追加する。
シリコンインターポーザとは、シリコン貫通電極(TSV)と呼ばれる微細な銅配線が形成された薄いシリコン層で、演算用ダイとパッケージ基板の間に配置される。NVIDIAのGPUアクセラレータをはじめとする主要なAIチップで採用される2.5Dパッケージングでは、インターポーザを介することで、プロセッサと広帯域メモリの間を、従来の基板上の配線では実現できない密度と速度で接続できる。
TSMCは現在、先端パッケージングサービス「CoWoS」の一部としてインターポーザを自社向けに製造しており、CoWoSの生産能力はAIサプライチェーンの制約要因となっている。シンガポール工場にインターポーザの製造能力を設けることで、VSMCはAIパッケージングのサプライチェーンにおける新たな供給元になろうとしている。TSMCによる内製中心の供給構造が続くこの市場では、構造的な供給不足が生じている。
「インターポーザのファウンドリサービスを追加することで、VSMCは成熟世代の12インチプロセス能力を単に拡張する存在から、より多様で付加価値の高い用途を包含する拠点へと変わる」と、同社は月曜に発表した決算資料で説明した。
シンガポール工場におけるインターポーザ製品の量産は、標準的な成熟世代ウェーハの生産立ち上げと同じ2027年第1四半期に開始することを目標としている。
■2026年第3四半期の見通し
2026年第3四半期について、VISのウェイ社長は、ウェーハ出荷量が前四半期比1~3%増加すると予測した。この緩やかな増加は需要不足ではなく、生産能力の制約によるものだ。平均販売価格は、主にAIサーバー向けPMICの堅調な受注と季節的な在庫積み増しを背景に、今四半期に2~4%上昇する見通しである。粗利益率は、1米ドル=32台湾ドルを前提に、32.5~34.5%になると予測している。
第3四半期の設備稼働率は90%に達し、第4四半期にはさらに上昇する見込みである。VISは、この動きについて、季節的な在庫サイクルではなく、持続的かつ構造的な需要によるものだと説明した。2026年の設備投資額は600億~700億台湾ドル(約18億5000万~21億6000万米ドル、約2923億~3413億円)に据え置かれた。その約85%をシンガポール工場に充て、残りを8インチ生産能力の維持と増強に割り当てる。
■業界全体に広がる価格改定の波
月曜のVISによる警告は、単独で発せられたものではない。サプライチェーンの各層で同時進行する半導体製造サービスの価格改定を示す最新の動きであり、2027年を見据えた明確なシグナルでもある。
世界の専業ファウンドリ市場の約73%を占めるTSMCは、2027年1月からの適用に向け、全プロセス世代を対象とした最大10%の価格引き上げ交渉を妥結した。契約量を超えるAIチップの生産枠を必要とする顧客への追加料金は、最大25%に達する可能性がある。UMC(United Microelectronics Corporation)は2026年4月、同年下半期からの値上げを顧客に通知しており、2027年に向けたより広範な交渉も激しさを増すと予想されている。
価格改定はファウンドリにとどまらない。テキサス・インスツルメンツは2026年だけで3回の値上げを実施した。STマイクロエレクトロニクス、インフィニオン、NXPも同年、それぞれ2回値上げしている。受動部品メーカーのWalsin Technologyと太陽誘電は抵抗器やコンデンサを値上げし、コネクタメーカーのMolexとTE Connectivityは最大30%の値上げを実施した。
TrendForceは現在の局面を、AI需要によって成熟世代の生産能力がほかの用途から振り向けられ、広範な価格改定が生じている状況だと説明している。2026年下半期には8インチファブの稼働率が90%に達し、特に電源関連の生産ラインで逼迫が強まり、幅広い製品で価格が上昇しているという。
2027年の引き上げ幅が2026年を下回らないというファン会長の発言は、他の大手ファウンドリ経営者の公の発言よりも踏み込んだものだ。TSMCのC.C.ウェイCEOは、同社の価格設定方針を「機会主義的ではなく、戦略的だ」と説明している。UMCの最高財務責任者(CFO)は、2027年に向けた交渉が激しさを増すとの見方を示している。しかし、値上げ幅が縮小しないとの方向性を明言したのはファン会長だけであり、値上げが頭打ちになるのではなく、さらに強まる可能性を示している。
■調達担当者に残された選択肢
成熟世代ファウンドリからPMIC、ディスプレイドライバIC、アナログチップを調達しているOEMや電子機器メーカーにとって、月曜の説明は取り得る対応策が限られていることを示す。
長期契約が主要な手段となるが、VSMCのシンガポール工場における第1フェーズの生産能力については、その選択肢はすでに閉ざされている。ファン会長は第2フェーズの検討が始まったことを明らかにしたが、時期や生産能力は確定していない。
VISの台湾拠点における既存の8インチ生産枠は引き続き交渉対象となっている。しかし、稼働率が90%以上で、4カ月先までの確定受注が見えている状況では、買い手は構造的に不利な立場で交渉することになる。
調達部門は、ファン会長が示した価格動向だけでなく、業界データが示す供給割り当てのリスクも反映し、2027年の部品表(BOM)の前提を見直す必要がある。リードタイムの余裕を拡大すること、プロセス移行が可能な場合には代替調達先を認定すること、2027年の計画策定が終わる前に長期契約(LTA)の交渉を加速することが、供給データから導かれる具体的な対応となる。
消費者への影響は、より緩やかに波及する見通しだ。成熟世代チップは完成品を構成する多くのコスト要因の一つであり、大手OEMには、利益率の圧縮、サプライチェーンの最適化、小売価格の段階的な調整など、値上がりを吸収または分散するための限られた選択肢がある。最終製品の価格上昇が一斉に起きるわけではない。値上げされた部品が複数四半期にわたるサプライチェーンを通過するにつれ、2026年と2027年の製品更新を通じて徐々に影響が表れるとみられる。
台湾ドルから米ドルへの換算は、2026年8月4日時点の中間市場レートである1米ドル=約32.41台湾ドルに基づく概算である。米ドルから日本円への換算は、1米ドル=158円で計算した概算値である。
■注目ポイントQ&A
●VISが2027年に2026年を下回らない価格引き上げを見込むのはなぜですか?
2つの要因が重なっているためです。需要面では、AIサーバーの展開により、VISが得意とするパワーマネジメントIC(PMIC)に対する複数年にわたる需要が生まれています。AI GPUラックは、従来型サーバーよりも1ラック当たり多くの電源関連チップを必要とします。
供給面では、TSMCとサムスンが従来の8インチ施設を縮小しているため、2027年上半期まで世界の8インチウェーハ生産能力が減少する一方、短期的にはこれを補う規模の新たな供給が見込まれていません。VISは現在、フル稼働か、それに近い状態にあり、4カ月先まで確定受注を見通せます。このため、過去の市場低迷期にはなかった構造的な価格交渉力を持っています。
成熟世代半導体における需要増加と供給縮小の同時進行が、ファン会長のいう「構造的」な状況です。短期的な循環によって自然に解消される状況ではない、という見方です。Taipei Timesも、2026年第2四半期の決算説明会における同社のこうした説明を報じています。
●シンガポール工場とは何ですか?また、第1フェーズが全量契約済みであることはなぜ重要ですか?
VISとNXPセミコンダクターズの合弁会社、VisionPower Semiconductor Manufacturing Company(VSMC)が、シンガポールのタンピネスに建設している12インチウェーハ工場です。2027年第1四半期に量産を開始する予定で、成熟世代の特殊チップと、AIアクセラレータのパッケージに使われるシリコンインターポーザの両方を生産する計画です。
第1フェーズの生産枠は、すべて長期契約によって顧客に割り当てられています。このため、まだ契約していない買い手が利用できるスポット生産枠はありません。シンガポール工場を現在の供給逼迫を緩和する新たな調達先として期待していた企業も、第1フェーズでは生産枠を確保できません。第2フェーズは予備的な検討段階にあり、時期や生産能力は確定していません。
●パワーマネジメントICの価格は2027年に上昇しますか?また、どの程度上昇しますか?
月曜に示された見通しによると、VISの平均販売価格は2026年第3四半期だけで2~4%上昇すると予想されています。ファン会長は、2027年の値上げ幅が2026年を下回ることはないと述べています。業界の流通業者データによると、2026年のスポット注文価格は前年の水準を約10~15%上回っています。
影響を受けるのは、スマートフォン、ノートパソコン、自動車システム、AIサーバーラックなどに使われるPMIC、ディスプレイドライバIC、アナログ部品です。PMICのリードタイムは1年前の21~26週間から現在は35~40週間へ延びており、買い手は価格上昇と納期長期化の両方に直面する可能性があります。ただし、VISは2027年の具体的な値上げ率までは示していません。
●AIインフラの拡大は、一般消費者向け電子機器のチップ価格上昇につながりますか?
はい。AI向け製品が既存の生産能力を取り込むことで、ほかの用途に使える供給枠が減少するためです。AI GPUサーバーが必要とする高電圧・高電流のBCD(バイポーラ・CMOS・DMOS)プロセスチップは、スマートフォン、ノートパソコン、家電製品向けのPMICと同じ8インチファブで製造されています。
AIサーバー向けの注文が8インチBCD生産能力に占める割合を増やすと、従来の民生機器向けに使える生産枠が減り、成熟世代チップ全体の供給と価格に影響します。TrendForceは、BCD生産能力の逼迫を、現在の価格改定局面を引き起こす構造的な要因と位置づけています。
同様の供給配分の変化は2021年と2022年の自動車用半導体不足でも見られましたが、AIによる需要は、過去の成熟世代半導体の需要拡大よりも規模が大きく、長期化する可能性があるとされています。
元記事: Chip Foundry Warns 2027 Wafer Price Hikes Will Be Steeper as Singapore Fab Sells Out
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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