AMDがAnthropicに最大50億ドル出資へ、Claude活用でNvidia「CUDA」の牙城に挑む

2026年7月24日 19:01

印刷

記事提供元:Tech Times

(Amd.com)

(Amd.com)[写真拡大]

AMDは「Advancing AI 2026」イベントにて、次世代サーバーCPU「EPYC Venice」や統合システム「Helios」などの新ハードウェアを発表した。同時に同社は、AIスタートアップのAnthropicへ最大50億ドルの戦略的出資を行い、最大2ギガワット規模のGPU導入とソフトウェア開発における緊密な協行を発表した。最先端モデル「Claude」を活用してROCmエコシステムを強化し、Nvidiaが支配するCUDAソフトウェア市場の壁を切り崩す狙いだ。

■Anthropicとの戦略的提携:50億ドルの出資とエンジニアリング協業

サンフランシスコで開催された「Advancing AI 2026」でAMDが発表した最も重大なニュースは、スペックシートの数値ではなく、Anthropicとの戦略的パートナーシップであった。

Anthropicは、AMDのフラッグシップラックシステム「Helios」に搭載されるInstinct MI455XなどのMI450シリーズGPUを最大2ギガワット(GW)規模で導入することを決定した。第一弾の1GW規模の配備は2027年前半から開始される予定である。あわせてAMDは、Anthropicに対して最大50億ドル(約8,200億円、1ドル=164円換算)の戦略的株式投資を行うことを公表した。

さらに戦略的影響力が高いのが、両社によるエンジニアリングでの協同作業である。AnthropicはClaudeを活用し、AMD Instinct GPU向けワークロードの最適化やROCmソフトウェアの開発加速に取り組む。Nvidiaがデータセンター向けAI GPU市場の80%〜88%を占める最大の要因は、18年の蓄積を持つ並行計算プラットフォーム「CUDA」にあるとされる。AMDはフロンティアAI自体の力を活用し、長年同社を阻んできたエコシステムの不備に直接アプローチする構えだ。

■Advancing AI 2026で披露された主要ハードウェア

イベントでは、CPU、GPUファミリー、ラックシステム、ソフトウェアの4つの大きな製品成果が発表された。

Zen 6マイクロアーキテクチャに基づく第6世代サーバープロセッサ「EPYC Venice」は、TSMCの2ナノメートル(nm)プロセス「N2」で量産される業界初のx86サーバーチップとなる。N2プロセスは従来のFinFETからGate-All-Around(GAA)ナノシート構造へ移行しており、TSMCの公開スペックによれば前世代のN3Eと同電力で10%〜15%の性能向上、または同性能で25%〜30%の消費電力削減を実現する。Veniceは最大256コアまで拡張可能で、同社の内部推計によれば前世代のEPYC Turinに対し約1.7倍のスループットを提供するという。また、NvidiaのVera CPUと比較した100kW電力制限下の内部プロジェクションでは、約3.3倍のスループットを達成するとAMDは主張している。

新しいInstinct MI400シリーズは、CDNA 5アーキテクチャとHBM4メモリを採用した3つのアクセラレータで構成される。最上位の「MI455X」は、12個のスタックにわたる432GBのHBM4メモリを搭載し、帯域幅は19.6TB/sに達する。これはNvidiaの次世代GPU「Rubin」が搭載予定の288GBと比較して50%広いメモリ容量となる。さらに、標準イーサネット上で動作するオープン規格「UALink」をサポートし、単一ファブリックで最大1,024基のアクセラレータ接続を可能にする。

また、AMD初となる完全統合型ラック規模システム「Helios」も発表された。1ラックに72基のMI455X GPUとEPYC Venice CPU、Pensando Vulcano ネットワークチップを収め、 pooled HBM4 メモリは31TBに及ぶ。価格は1ラックあたり500万〜550万ドル(約8億2,000万〜9億200万円、平均約5.25万ドル/約8億6,100万円)で、Microsoft AzureやOracleが初期顧客として確定している。ただし、2026年分のHBM4供給はハイパースケーラー向けに割り当て済みとされており、一般の購入者が入手できるのは2027年以降になる可能性がある。

■ROCm 7の進化とCUDAエコシステムへの挑戦

AMDの市場シェア拡大を制限してきた最大の要因は、ハードウェアの性能ではなくソフトウェア環境であった。NvidiaのCUDAは18年にわたり、ライブラリやフレームワークとの統合、エンジニアのノウハウを蓄積してきた。

2026年中頃にリリースされた「ROCm 7」では、PyTorchの公式バックエンドとして本格サポートされ、vLLMやSGLangといった主要な推論フレームワークとも統合が進んだ。MLPerf Inference 6.0のベンチマーク結果によると、現行のMI300XやMI355Xは一般的な推論ワークロードにおいてNvidia H100の約90%〜95%の処理能力に達している。しかし、大規模トランスフォーマーモデルの学習においては、cuDNNの成熟度などによりCUDAが依然として20%〜30%優位に立っている。

AMDとAnthropicの協力はまさにこのソフトウェアギャップを直接ターゲットにしている。Anthropicの最先端AIがカーネルレベルやライブラリレベルの最適化課題に取り組むことで、ROCmの開発速度を劇的に高める狙いがある。

■大規模需要の確保と将来のロードマップ

今回のAnthropicとの2GW規模の配備契約に先立ち、AMDは2025年10月にOpenAIと6GWのパートナーシップを、2026年2月にMetaと6GWのパートナーシップを結んでいる。いずれの提携においてもAMDは顧客企業に対して最大1億6,000万株分のワラント(購入権)を発行しており、潜在的な株式希薄化リスクには注意が必要とされる。

これらにAnthropicやMicrosoft Azure、Oracleなどの需要を合わせると、AMDの公表済みパイプラインは合計約20GW規模に達する。

基調講演でリサ・スーCEOは、2027年に向けた次世代CPU「Verano」および「MI500」シリーズのロードマップも示し、複数世代を通じてMI300Xの最大1,000倍のAIパフォーマンス向上を目指すと述べた。

イベント期間中、AMDの株価は553ドル(約9万692円)付近で推移し、2026年初頭の2倍以上に上昇した。8月4日に予定されている2026年第2四半期決算に向けて、市場の期待が高まっている。

■注目ポイントQ&A

●AMD Heliosラックの価格と構成内容はどのようになっていますか?

Heliosの価格は1ラックあたり500万ドルから550万ドル(平均約525万ドル、日本円で約8億6,100万円)です。構成には72基のInstinct MI455X GPU、Zen 6基盤のEPYC Venice CPU、Pensando Vulcanoネットワーク、およびROCmソフトウェア環境が完全統合されています。なお、HBM4の供給制約から一般顧客への大規模納入は2027年以降になると見込まれています。

●AMDのROCmソフトウェアは現在NvidiaのCUDAと比べてどの程度の水準ですか?

ROCm 7ではPyTorchや推論フレームワークへの対応が大幅に強化され、標準的な推論処理ではNvidia H100の90%〜95%の性能を発揮します。一方で、大規模トランスフォーマーモデルの学習処理においては、ライブラリの成熟度から依然としてCUDAが20%〜30%優位に立つとされています。AMDはAnthropicとの提携により、この学習領域での性能差の解消を目指しています。

●Anthropicとのパートナーシップがハードウェア販売以上に重要な理由は何ですか?

単なるハードウェアの大量購入にとどまらず、AnthropicのフロンティアAIモデル「Claude」自体を用いてROCmのカーネルやライブラリの最適化・自動開発を行う点が戦略的に極めて重要です。Nvidiaの強力な参入障壁である「CUDAエコシステム」を崩すための最も直接的なアプローチと位置づけられています。

元記事: AMD Bets $5 Billion on Anthropic to Fix the One Thing Holding Back Its AI Chips

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

関連キーワード

関連記事