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ドイツの政策転換でユーロ高へ
●ドイツが財政政策を大転換
ドイツが財政政策を転換することで、ユーロ円・ユーロ・ドル共に上昇し、ドイツ株の上昇が続いている。
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ユーロ・円は1ユーロ=160円を突破し、ユーロ・ドルも昨年11月以来の1ユーロ=1.08ドル台までユーロ高・米ドル安が進んだ。
ドイツの連立政権は、5,000億ユーロ(約80兆円)規模のインフラ基金創設と「債務ブレーキ」改革に合意。
市場からの期待は高く、さらなるユーロ高・ドイツ株高が進むのだろうか?
●きっかけとなった債務ブレーキ改革
ドイツは憲法によって、財政赤字をGDP比0.35%に制限し、財政赤字を抑える債務ブレーキという仕組みがある。2009年の金融危機時に、当時のメルケル首相のもとでとられた。
この債務ブレーキが財政出動を抑制し、経済成長を阻害しているという批判があった。
経済低迷に悩むドイツは、2月の総選挙で中道右派のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)が第1党となり、第3党となったショルツ首相が所属する中道左派の社会民主党(SPD)と、連立を組むこととなった。
2大政党は、債務残高がGDP比60%以内の場合、構造的な借り入れをGDP比1.4%に引き上げることや、ドイツの再軍備、州政府の構造的な純借り入れ上限の引き上げなど、政策に盛り込んでいる。
第2党の極右政党ドイツのための選択肢(AfD)は、債務ブレーキ改革に反対しているが、連立を組む予定の環境政党・緑の党は賛成している。
●改革の背景
背景にはドイツ経済の立て直しだけでなく、ウクライナ戦争が大きくかかわっている。
ウクライナ戦争後にロシアからの天然ガスの供給が途絶え、以来エネルギー価格の高騰が続き、工業国のドイツに大きな打撃を与えている。
トランプ政権の誕生による安全保障環境の変化への対応で、国防費の増額が迫られている。ウクライナ戦争が終結したとしてもロシアの脅威は変わらない。
市場としてはユーロ圏一の経済大国でありながら、頑なな緊縮財政国だったドイツの転換が好感されることは想像に難くない。
改革の内容次第では失望売りやユーロ安へと反転する可能性もある。(記事:森泰隆・記事一覧を見る)
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