現時点でEV車を改めて評価しよう

2024年4月11日 17:00

印刷

規制緩和さえすれば過疎地での内燃機関搭載車向けのインフラ再整備は簡単だ ©sawahajime

規制緩和さえすれば過疎地での内燃機関搭載車向けのインフラ再整備は簡単だ ©sawahajime[写真拡大]

 今頃になって、ようやくEV車に対する冷静な評価と、行き過ぎた「EV車推し」への反省が、世界的にも見られる様になった。

【こちらも】EV車で逆転を狙った自動車後進国

●「EV車シフト」の元凶

 単純な考え方から行けば、EV車は「電動モーターと車載電池さえ準備すれば、複雑な機構の内燃機関や変速機を造れなくても“自動車”はでっち上げる事が出来る」と、考えた事だろう。

 中国は、自国のレベルでは内燃機関に関しては、日本には勿論の事、欧米にも、韓国のレベルにさえも未来永劫追いつく事が不可能だと認識した筈だ。

 都合の良い事に、1党独裁の体制は、強権発動で何事も好き勝手に、国民を服従させる事が出来る。リニア反対で屁理屈をこねていた某知事なんぞは、中国なら或る日行方不明になっておしまいだ。

 EV車を普及させたいと考えれば、内燃機関搭載車の登録台数を抑制して、EV車への登録を推奨すれば、車が必要な人は、たとえEV車の性能に不満があっても、EV車を購入せざるを得ない。

●中国の優位性

 前述の様な政治体制に加えて、EV車製造に必要とされるレアアースの類の自国生産が可能である事が大きい。

 また、他国から原材料を輸入して加工するにしても、環境問題や人権問題に何等の配慮する事無く、世界基準とかけ離れた酷い状況下での、低コストでの生産が可能である。

 それによって、容易に「価格競争力」の優位性が確保出来る。

 勿論、他国から導入した技術も、「自国開発」と言い張り、他国の知的財産権なんてシカトして、何等恥ずる事も無い。

 外国との合弁企業に対しては、秘匿技術を裸にしようと画策し、合弁が破綻して撤退する際には、工場設備等を「接収」する様な対応をする。

 国際法に配慮する感性が欠如しているのも「優位性」と言うべきか~。

●欧州の安易な目論見

 欧州は日本がライバルだと考えている。

 「クリーンディーゼルエンジン」で日本の「ハイブリッド」に対抗しようとしたが、VWの米国での排気ガス偽装により破綻した。

 因みに、当時の米国のクリーンディーゼルエンジン規制を「偽装無し」でクリア出来ていたのは、やはり日本、マツダだけだった。

 日本に屈する事を潔しとしない欧州は、「EV車のポテンシャルを冷静に分析」する事無く、「技術で中国なんぞに負ける筈は無い」と考えて、中国サイドに加担し、EV車推しの尻馬に乗ったのが実情だろう。

●当時の評論家の論調

 「世の中はEV車に向かうのに、日本は取り残される」と、EV車礼賛を繰り返す「評論家」が当時は幅を利かせていたが、息してるか?

 欧州でもEV車見直しが進み、米国でも風向きは変わりつつある。

 言い出しっぺの中国でも、「EV車の墓場」画像がネットには溢れている。

 自動車は地球上の、極寒の地から、灼熱の砂漠、酸素も薄くなる高高度の土地と、あらゆる環境下で使用される。

 各所にドラム缶で燃料を保管する事も可能で、トラブルフリーで活動出来る信頼性の高さから、トヨタ・ランドクルーザーが中東の砂漠地帯で、政府軍、反政府ゲリラ双方に圧倒的に支持されている。

 その地では、ジープよりもランドローバーよりも評価されている訳だが、反政府ゲリラが「テスラ・サイバートラック」をメインに使用する様になったら、筆者は一切EV車批判をしない積りだ。

●インフラの整備が簡単な内燃機関

 過疎地のガソリンスタンド廃業等の現状から、内燃機関への逆風と評する向きもあるが、日本の様な規制の厳しい国であっても、危険物取扱の資格保有者確保の規制を緩和すれば対応は可能だ。

 極論すれば、ドラム缶で納屋に入れて置いても、燃料補給は可能だし、「可搬式ガソリン計量販売設備」なら、最新型で無くとも、昔は普通に見かけた写真の様な設備で、十分対応は可能だ。

●EV車が内燃機関搭載車並みになった場合でも

 EV車が、現状の様な発火事故や、トラブル頻発の未完成な状態では無くなり、曲がりなりにも限定的な分野で使い物になるまで成長したと仮定しよう。

 それでも内燃機関搭載車に見劣りする部分が多く存在する。

 1)生産から耐用年数を使用後の廃棄までのトータルでは環境負荷はEV車の方が悪い。

 2)ある程度満足出来る1充電走行距離が確保出来ても、充電時間が長くかかる。

 3)「電欠」で路上エンコした場合は、牽引や車載車で救援する以外に方法が無い。

 4)各国の電力事情に左右される。

 5)車両重量が重く、道路に対する負荷がかかる。

 6)車重や加速との関係で、タイヤ摩耗が激しく維持費がかさむ。

 7)車載電池交換は非常に高額である。

 8)小規模な事故修理でも構造上割高になる。

 9)極寒等の気候の影響が極端に出る。

 いろいろ挙げればきりが無い。

 「地球温暖化」だの「脱炭素」だのと言った、政治的思惑からのEV推進圧力に対して、そろそろ、冷徹な眼で見て、EV車に客観的な評価を下すべきだと考える次第である。

 欧米は変なプライドを捨てて、HV車(ハイブリッド車)技術に関して、日本に縋って来れば良いだけの話なのだ。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る

関連キーワード

関連記事