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富士通へ強まる逆風、英国史上最大の冤罪事件の不条理! (2)
驚かされるのは、ホライゾンのシステムに重大なリスクがあることは、稼働前の1998年に内部文書で指摘され、1999年には政府に対して「ホライゾンの欠陥一覧」が届けられているのに、政府が調査や確認をした形跡がないということだ。何らかの理由で「意識的な不作為」が行われた可能性が高い。
【前回は】富士通へ強まる逆風、英国史上最大の冤罪事件の不条理! (1)
冤罪に気づいた元局長達がポスト・オフィスを訴えた裁判で、英国の高等法院(高等裁判所に相当)は2019年に「ホライゾンシステムにバグやエラーなどの欠陥がある」ことを認め、ポスト・オフィスに合計5775万ポンド(約107億円)の支払いを命じた。
結果として、稼働前から一部の関係者に欠陥が指摘され、政府に対しても同様の報告がされていた「ホライゾン」が、見直しされることなく現場に投入されたため、未曾有の冤罪事件を生み出したことになる。全ての鍵は、ホライゾンの欠陥を知りながら握り潰した責任者にあるだろう。
切ないのは、トンデモナイ冤罪だと明白に認知されているのに、ポスト・オフィスの監査組織による訴追行為が法律に基づいでいることと、監査組織自体が冤罪を認めていないために被害者の救済が迅速に進まないことだ。
9日に英国のスナク首相は「早急に被害者の容疑を晴らし、補償するための新法を制定する」と表明している。逆に言うと、新法が制定されるまで被害者は救済されないということだ。
冤罪を引き起こした責任を問う声が富士通に向かいつつあることで思い出されるのが、東芝が米国の原子力事業で巨額の損失計上に至り、その後の混乱や上場廃止のきっかけになった事例だ。
東芝の米国原発子会社WH(ウェスチングハウス)が買収した米国原子力サービス会社S&W(ストーン&ウェブスター)が隠していた債務が、あっという間に1兆円規模にまで膨らむことが判明し、東芝の足を引っ張った。東芝がWHを適切に管理できていなかったと見做さざるを得ない例だ。
富士通の英国子会社である富士通UKに在籍していた元社員によると、2004年~2008年まで富士通UKの社長を務めた人物の口癖が「Keep Japan out(日本には内緒にしておけ)」だったと言うから、富士通と子会社である富士通UKの関係が知れようと言うものだ。望まれるのは「東芝のような結末を迎えないこと」だろう。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る)
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