相場展望8月26日 米株式市場は巨大予算案を囃すが、『影』も注視 日本株は25日MAで頭を打ち上値切下げに注意

2021年8月26日 08:19

印刷

■I.米国株式市場

●1.NYダウの推移

 1)8/23、NYダウ+215ドル高、35,335ドル(日経新聞)
  ・米食品医薬品局(FDA)は米ファイザーと独ビオンテックが共同開発した新型コロナワクチンを正式承認した。接種率の高まりと経済再開に期待が集まり、投資家心理の改善につながった。
  ・ハイテク株比率の高いナスダック総合は3日続伸となり、過去最高値を更新した。

【前回は】相場展望8月23 日 テーパリングでも楽観論続き高値圏相場が継続へ  注意すべきは、むしろ『景気後退』

 2)8/24、NYダウ+30ドル高、35,366ドル(日経新聞)
  ・ワクチン普及で今秋から登校や出社などが順調に進み経済再開が進むと期待され、景気敏感株を中心に買いが優勢となった。
  ・化学のダウや建機のキャタピラー、原油先物が上昇し石油株、米長期金利が上がり金融銘柄が上昇した。
  ・もっとも、米連邦準備制度理事会(FRB)による金融政策を見極めたいとのムードも強く、取引終了にかけて伸び悩んだ。

 3)8/25、NYダウ+39ドル高、35,405ドル(日経新聞)
  ・朝方は、過去最高値に近づいていることもあって、短期的な利益確定売りが先行。
  ・その後、ワクチン普及や、米下院では3.5兆ドルの予算案を可決したことを受け、米政権の大型財政支出による景気拡大を期待した買いが次第に優勢になった。
  ・米企業では従業員にワクチン接種を事実上、義務化するところが増えている。経済活動の再開が進むとの見方が広がった。
  ・長期金利が上昇し、利ザヤ改善を見込んだ金融株が買われた。
  ・ただ、NYダウの上値は重かった。8/27のパウエルFRB議長のジャクソンホールでの講演内容を見極めたい投資家が多く、積極的に上値を追う動きは限られた。

●2.米国株市場は、(1)ワクチン接種率上昇と(2)巨額な追加経済対策の期待で高値圏を強く形成も、『影』の部分を見落とさないように

 1)米国株の現況
  ・米国主要3指数は、余剰マネー効果と企業好成績で過去最高圏にあるだけに、短期的な過熱感を警戒した売りが出やすくなっている。
  ・半面、追加の経済対策や新型コロナのワクチン普及の期待から買いも入り、下値は堅くなっている。

 2)今後出てくる好材料と影
  ・米下院は8/24、子育て支援などに10年間で3.5兆ドルを支出する予算案を可決した。少し前に、米議会上院が可決し、下院に送付した5,550億ドルのインフラ投資法案を含めると合計で4.1兆ドル(約451兆円)もの巨大な景気刺激策である。バイデン政権の成長戦略のメインを成すだけに、長期的な米経済成長につながる。
  ・この予算案の問題点は、歳出に対する歳入の『増税』が入っていないことである。増税案がなければ、膨大な国債発行を迫られ、政府は巨額の負債を抱え、長期金利上昇と急激なインフレを招く可能性が濃厚となる。
  ・早急に増税案を取りまとめ、議会で可決する必要がある。バイデン大統領が、大統領候補としての『公約』には高所得層などからの増税案を掲げていただけに、それが抜け落ちたのは不可解な事象である。
  ・株式市場は、『良い所取り』して株価上昇材料として囃して浮かれているが、巨大予算案の裏に秘める悪材料にも気が付くべきではないか。歳入策としての増税なき、4.1兆ドルもの巨額歳出の予算案だけでは、『長期金利の急騰』と『悪性インフレ』を招き、『株式市場に大きな試練』をもたらす『影』としてのリスクにも注視したい。もし、悪性インフレとなった場合のFRBは、慌てて『オーバーキルの金融政策』に急激に舵をとる可能性が高いが、そうなった場合の株式市場・金融市場は大混乱を引き起こす可能性があり得るので警戒したい。

●3.米下院、3.5兆ドルの予算決議案を8/24に可決(フィスコ)

●4.FRBの金融緩和の年内縮小観測は根強い(フィスコより抜粋

 1)米連邦準備制度理事会(FRB)が当初開催が予定されていたジャクソンホールでの会合が、デルタ型変異株の感染拡大リスクのため、8/27にオンライン方式に変更された。

 2)このため、FRBもデルタ型変異種の流行が、景気に与える影響を見直す必要性を認識し、パウエル議長が8/27の会合で、金融緩和縮小の計画を発表するとの思惑が後退しつつある。

 3)ただ、FRBが年内に金融緩和縮小を開始するとの市場の思惑も根強い。ゴールドマン・サックスのエコノミストは、11月の緩和縮小発表確率を当初の25%から45%に引き上げた。現在の国債等購入額の月1,200億ドルを、月額150億ドルずつ規模を縮小し、2022年9月にテーパー終了を目指すと見ている。

 4)同時に、
  (1)新型コロナウイルスのデルタ変異株の感染拡大状況
  (2)政府の雇用緊急支援失効後の労働市場の動向
  (3)アフガニスタン状況の悪化
  など依然、不透明感はくすぶる。

●5.世紀の空売りのバーリ氏、米長期国債下落に308億円の空売りの賭け(ブルームバーグより抜粋

 1)バーリ氏が創業し、最高経営者(CEO)を務めるサイオン・アセット・マネジメントは6月末時点で、上場投資信託(ETF)を2.8億ドル(約308億円)プットオプション(売る権利)を保有していることが、米規制当局への届け出で分かった。

 2)このプットオプションは、米国債利回りが上昇すれば(価格は下落)利益が得られる。

 3)オンライン形式で開催されるジャクソンホールでのシンポジウムを控えて、資産購入のテーパリング(段階的縮小)の年内開始の示唆があれば、米国債弱気派の正しさが証明されるだろう。

 4)ブルームバーグ調査では、年末の米10年債利回りの予想中央値は1.6%であり、バーリ氏の弱気見通しは、ウォール街ストラテジストの予測にほぼ沿っている。

 5)また、シティは年末の米10年国債金利は2%に上昇すると見ている。

●6.NY債券市場は8/24、ワクチン普及期待の株高を受け、長期債下落・金利上昇 (日経新聞)

 1)新型コロナワクチンの普及への期待から、米株式相場が上昇。

 2)安全資産とされる債券は売り優勢となり、米10年国債利回りは前日比+0.04%高い1.29%に上昇した。

●7.バイデン大統領「アフガニスタン、8/31米軍撤収後テロ攻撃リスク上昇」警告(フィスコ)

 1)バイデン氏、アフガン撤退時期を堅持。(ブルームバーグ)ジョンソン英首相が招集した今回のG7からの延長要請に耳貸さず。

●8.米国省(日本8/26)、アフガン出国を目指す米国民は依然、少なくとも4,100人(フィスコ)

●9.米7月耐久財受注は前月比▲0.1%と、予想▲0.3%ほど悪化せず(フィスコ)

■II.中国株式市場

●1.上海総合指数の推移

 1)8/23、上海総合+49高、3,477(亜州リサーチ)
  ・前週末の米国株高も好感し、自律反発の買いが入った。
  ・新型コロナのデルタ型の世界的感染拡大や、中国政府の締付けスタンスが依然と不安視されている。
  ・業種別では、機械関連株の上げが目立ち、プラスチック製品・紡織・電気・建材・電子部品・飛行機株の一角が買われた。

 2)8/24、上海総合+37高、3,514(亜州リサーチ)
  ・中国政府の経済対策の対する期待感が相場を支える流れとなった。
  ・中国人民銀行(中央銀行)総裁は、「与信を安定させ、実体経済と中小企業を支える」と表明した。資金流出の警戒感もやや薄らぎ、香港経由の取引も買い越しに転じた。
  ・業種別では、消費関連・非鉄・鉄鋼の上げが目立ち、薬品株はしっかり。

 3)8/25、上海総合+25高、3,540
  ・中国政府による景気テコ入れ策に対する期待感が相場を支えた。
  ・中国人民銀行が10~12月期にも追加の金融緩和に踏み切ると予測されている。
  ・中国で再び感染が拡大したが終息しつつあり、社会行動の正常化が進むとの見方が広がったこともプラス材料となった。
  ・業種別では、非鉄・鉄鋼・エネルギーなどの資源・素材株の上げが目立っている消費関連株もしっかり。反面、金融株は安かった。

■III.日本株式市場

●1.日経平均の推移

 1)8/23、日経平均+480円高、27,494円(日経新聞)
  ・日経平均は3営業日に大幅反発した。前週末の米国株高を受けて、自動車関連株や海運株を中心に自律反発を狙った買いが入った。
  ・香港や上海などアジア株の上昇も追い風となり、日経平均の上げ幅は一時+500円を超えた。

 2) 8/24、日経平均+237円高、27,732円(日経新聞)
  ・米株式市場の上昇を受けて、投資家がリスクを取る動きが一段と強まり、幅広い銘柄に買いが入り、続伸した。
  ・上げ幅は一時+300円を超えたが、前日の急伸もあり短期的な過熱感も意識され、後場は上値の重さがあった。
  ・ワクチン接種2回目完了者が4割を超え、経済再開への期待感が強まり、海運や
空運・鉄鋼など景気敏感株が買われ、半導体関連株への買いも目立った。

 3)8/25、日経平均▲7円安、27,724円
  ・米国株高を手掛かりに、海外投機筋の先物買もあり、一時+160円高と買い先行したが、この2営業日で日経平均は+717円上昇していたため、次第に売り優勢となり、息切れした。
  ・ワクチン接種の進展で経済再開による正常化期待で、景気敏感株の鉄鋼・自動車などが買われた。
  ・ただ、国内のデルタ型新規感染者数が高水準で推移していることが引き続き重荷となった。

●2.日本株式市場のチャートは、25日移動時平均線(MA)で頭を打ち、上値切下げが続く

 1)企業決算の発表も一巡しており、材料難で商いが閑散となり、売買金額も低調で上値を追う展開とはならないと思われる。
       東証1部売買金額の推移
 8/2~16(1日平均)  8/20    8/23    8/24    8/25
  2兆3,860億円  2兆8,305  2兆3,103  2兆3,378  2兆3,103

 2)外国人短期筋の買い仕掛けで、日経平均は大幅上昇したが、外国人の買い効果は減退傾向。8/25は外国人短期筋が先物で買い仕掛けしても、国内勢の売りに押される展開に変化。
      日経平均と外国人先物買枚数
         8/23    8/24    8/25
 日経平均  +480円高  +237高  ▲7安
 外人先物買 +4,960枚買 +8,897買 +5,508買

 3)外国人の先物買枚数残高が8/25現在d154,389枚になり、最近では最高枚数となる。したがって、外国人短期筋の売り転換となる可能性が出てきたと見ることができる。

 4)日経平均の今年2月以降の動きから連想すると、今後は強気になれない。
  ・25日移動移動平均線辺りで(8/25は27,653円)頭を打って下落するパターンを繰り返してきた。
  ・25MAの近辺まで上昇すると、戻り待ちの売りが出やすい。
  ・しかも、2/16をピークにして、上値だけでなく、下値も切下げてきている。

 5)日本のワクチン接種完了 2回完了者42.6%、1回接種者53.6%(8/25公表時点)
  米国の2回接種完了者53.2%に近づいている。接種率の上昇が、経済正常化につながり、投資家心理の改善につながる芽が膨らみ始める可能性が出てきた。

●3.マツダ、上海の空港でコロナ感染者発生、航空貨物運休で国内2工場操業停止(NHK)

■IV.注目銘柄(投資は自己責任でお願いします)

 ・2871 ニチレイ   冷凍食品で首位。業績堅調。株価反騰へ。
 ・4480 メドレー   オンライン診療に期待。
 ・6095 メドピア   オンライン診療に期待。

著者プロフィール

中島義之

中島義之(なかしま よしゆき) 

1970年に積水化学工業(株)入社、メーカーの企画・管理(財務含む)を32年間経験後、企業再生ビジネスに携わる。 現在、アイマックスパートナーズ(株)代表。 メーカーサイドから見た金融と企業経営を視点に、株式含む金融市場のコメントを2017年から発信。 発信内容は、オープン情報(ニュース、雑誌、証券リポート等々)を分析・組み合わせした上で、実現の可能性を予測・展望しながらコメントを作成。

記事の先頭に戻る

関連キーワード

関連記事