祭りの後がバブルの崩壊 米インフレリスク鈍化と日本市場の危機 後編

2021年7月21日 07:46

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 18日(日)、OPECプラスにて協調減産の合意が取れたことは、アメリカのインフレリスクを抑えるという意味において、非常にポジティブなニュースであった。結果を受けて、原油価格は大幅な下落となっているが、翌19日(月)のダウ平均株価が大幅な下落に見舞われたのは気がかりだ。

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 もっとも、OPECプラスが協調減産の合意に至らなかった内情は、元々親密なはずであるサウジアラビアとアラブ首長国連邦との対立によるものであり、早期に合意がなされるという楽観的な見方があったことは確かだ。

 協調減産合意による米インフレリスク鈍化が想定済であったとすれば、「噂で買って事実で売る」という値動きが起こったとも考えられる一方、アメリカでの新型コロナウイルス感染者の増加やワクチン普及の鈍化がリスクオフの起因とするのは苦しい。

 アメリカと同じく感染者数増を許容し、制限の撤廃と経済正常化に舵をきったイギリスも、感染者が爆発的に増えているが、死亡者の推移が格段に抑えられており、このまま終息していくようであれば、有益なモデルケースとなる可能性は十分にある。

 それでは、ダウ平均株価が大幅な下落に見舞われた理由は何であろう。気がかりなのは「バイデン米大統領とパウエルFRB議長が直接面会した」というニュースと、「仮想通過の値動き」である。米大統領とFRB議長が直接面会することは珍しく、何らかの懸念事項があったのではないかと市場は憶測する。

 そして、仮想通過の値動きが断崖絶壁にいることも気がかりだ。5月中旬の暴落によるビットコインの底値は、6月下旬にさらに割り込み、現在その最安値すら割り込む可能性がある。この節目を割り込むと下支えする価格が遠く、一気に下落が加速する可能性も十分にあるが、アメリカにおける緩和バブルから生じた資金が市場に流れ込んでいるとすれば、仮想通過の暴落がアメリカの一部消費者にネガティブなインパクトを与えるだろう。

 今後は米消費者物価指数とFRBの見解に十分留意しながら、仮想通過の騰落を確認する展開ではあるが、最後に、アメリカの株式市場よりも深刻な日本の株式市場についても触れておきたい。実は、日経平均株価については、大きな節目となる200日単純移動平均線をすでに割り込んでいる。

 イギリスやアメリカに倣った、ワクチン接種からの制限緩和と経済正常化に続いて、五輪の開催を迎えるという理想的なシナリオはすでに崩れ、混沌とした国内情勢は内閣支持率の低下となって如実に表れている。自民党内の公認候補争いも顕在化している今、政治不信は株式市場に対して下落圧力だ。

 少子高齢化の加速に歯止めが効かないまま、労働力不足やレジリエンス強化の解決策でもあるデジタル化は一向に進まない。カーボンゼロ(脱炭素)にも出遅れ、地方創成やインバウンド政策の成果も出ず、株価の下支えは日本銀行頼みという状況に明るい見通しは皆無だ。

 有事の円高というのは、もはや過去の遺産となりつつある今、このままアメリカの株式市場との格差は広がっていくばかりとなるだろうか。神輿に担がれた人々が周りを見渡したとき、日本銀行という担ぎ手がいないことに気付くのはいつだろうか。祭りの後がバブルの崩壊であることは、間違いない。(記事:小林弘卓・記事一覧を見る

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