祭りの後がバブルの崩壊 米インフレリスク鈍化と日本市場の危機 前編

2021年7月20日 16:11

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 7月19日(月)の市場は、株式、商品、為替と共に大きな変動に見舞われた。なかでも1番のインパクトは、ダウ平均株価が700ドル程度の下落に見舞われたことであろう。ダウ平均株価が日足チャートで75日単純移動平均線を割り込んで引けたのは、6月18日(金)以来で2021年では2度目だが、さらに遡ると昨年の10月以降、約半年ぶりの出来事だ。

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 それでも、もう一段下の節目である200日単純移動平均線を割り込むまでには、さらに2,000ドルほどの下落余地があるため、リスクオフ転換がなされたと考えるのは早急であろう。しかしながら、依然堅調なナスダック市場を後目に、ダウ平均株価は5月上旬の高値を超えることができずに反落していることは気がかりだ。

 さて、前週7月12日週には、今後の市場動向のヒントとなる様々な動きがみられたので、時系列で追っていきたい。まず、最大の注目は、米労働省が13日に発表した6月の消費者物価指数(CPI)の急激な上昇であろう。その上昇率は前年同月比5.4%で、5月の5.0%をさらに上回り、2008年以来の高水準となった。FRB(連邦準備理事会・アメリカにおける中央銀行としての組織)が最も恐れているインフレリスクが、如実にデータで示された格好だ。

 インフレリスクが高まれば、FRBとしては、早急なテーパリングから金融引き締めが求められることになり、浮足立つ株式市場には大きなネガティブインパクトとなる。そして、俄然注目が集まったのが前回お伝えしたFRBの「金融政策報告」に関するパウエル議長の議会証言であった。

 7月14・15日と、2日間にわたって行われた議会証言においては、民主党、共和党の両党議員からインフレリスクについて懸念が示されたが、パウエル議長は「足もとのインフレ率は想定以上に高い」点を認めつつも、従来通り「一時的である」と、市場をなだめるような発言に終始した。

 パウエル議長としては内心穏やかではない消費者物価指数の上昇であろうが、その内訳をみると経済活動の正常化による影響が強く、中古車価格の高騰とガソリン価格の急騰、そして、飲食業界の人手不足による賃金上昇に伴った価格上昇など、確かに特定分野での因果関係が明確なインフレでしかない。

 バイデン政権の高官は、消費者物価指数が今年の夏のピークを迎えて、秋ごろには鈍化するとの見解を示しているが、これは、パウエル議長の元同僚であるイエレン財務長官の見通しでもあると考えてよいだろう。つまりは、この見通しが崩れた際には大きなリスクに見舞われる可能性があることには間違いない。

 そんな状況に蜘蛛の糸が落ちてきた。それが、原油価格の動向を大きく左右するOPECプラス(石油輸出国機構と非OPEC主要産油国で構成された組織)の、協調減産合意である。(続く)(記事:小林弘卓・記事一覧を見る

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