日産インフィニティ・QX55発表 日産の営業戦略 (1) 初代インフィニティとセルシオ

2020年12月7日 12:00

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新型「QX55」(画像: 日産自動車の発表資料より)

新型「QX55」(画像: 日産自動車の発表資料より)[写真拡大]

 日産の「インフィニティ・QX55」が新発売となった。世界で人気の高いSUVクーペスタイルだ。インフィニティと言えば、日産の高級車ブランドである。トヨタの高級車ブランド、レクサスに対抗するように作られたブランドだ。

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 1989年にトヨタと日産から両ブランドが発表されたが、バブル絶頂期の出来事であった。世界の高級車ブランドとしてはGMのキャデラック、フォードのリンカーンブランド、そしてベンツ、BMWといったものが知られていた。しかし当時、景気拡大により世界でも販売成績を伸ばしていたのだが、日本車は高級大型車の分野を持っておらず、トヨタ、日産とも高級車ブランド進出を画策していた。

■初代インフィニティとセルシオの試乗

 日本国内で「トヨタ・セルシオ」、「日産・インフィニティ」の両車が発売になった時、乗り比べるチャンスがあった。日産・インフィニティは日産・シーマの上位車種の位置づけで、トヨタ・クラウンからセルシオの間には、後にアリストが発売されるが、当時は車種がなかった。日産・セドリックとインフィニティの間には日産・シーマがあり、先行してブームを巻き起こしていた。

 初めて日産・インフィニティに試乗した時、当時F1で採用され威力を発揮していた「アクティブサスペンション」が搭載されていたが、まだ不完全で車両のロール周期に合わない乗り心地が多くあったのが印象的だった。「技術者のお遊びが過ぎる」と言った感想だった。全体的に、日本では初めての大型車でコストに余裕があるせいなのか、統一感がなく「やたらに豪華装備」といった印象が残った。

 対するトヨタ・セルシオの試乗では、「これほど静かなクルマを知らない」と思った。当時の筆者の所有車ベンツSクラスよりも格段に静かな印象であった。製造業を経営していたので、「どうしたらこれほどの部品精度を実現できるのか?」と考え込みながら運転した記憶が残っている。

 今思えばこれが、トヨタが「マーケットリサーチを高精度にアメリカで繰り返した結果」であり、競合が多くあるプレミアムブランドの中でも「レクサスブランド」を立ち上げる決意をトヨタが行った証拠だったのであろう。

 また、初代日産・インフィニティから受けた印象が、日産のその後の運命を示唆していたことになるのだろう。それがトヨタと日産の、現在でも続く実力差なのだ。「考え方」を突き詰めていなかったインフィニティの姿が象徴している。トヨタは「ウーブンシティ」で混乱している現在の自動車産業の行く末を見定めようとしている。この姿勢は、「創業家経営」の長所の部分でもあるのだろう。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

続きは: 日産インフィニティ・QX55発表 日産の営業戦略 (2) トヨタとの実力差の象徴「インフィニティ」

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