「ゼロエミッション車」に限定するカリフォルニアへの疑問

2020年10月13日 17:02

小

中

大

印刷

Photo:トヨタ・日野が共同開発する水素燃料電池駆動の大型トラック (提供トヨタ自動車)

Photo:トヨタ・日野が共同開発する水素燃料電池駆動の大型トラック (提供トヨタ自動車)[写真拡大]

写真の拡大

  • Photo:水素ガスステーション ©sawahajime

●カリフォルニアは正常な判断を下したのか

 米カリフォルニア州のニューサム知事は9月23日、2035年までに全ての新車を、排ガスを出さない「ゼロエミッション車」にするよう義務付けると発表した。こんなことが「実現可能だ」と考えているのか、疑問が出てくる。

【こちらも】EV車の不都合棚卸し 保管場所

●カリフォルニアについて

 カルフォルニア州の面積は42万3,971平方キロメートル。日本の面積が37万7,914平方キロメートルだから、日本の国土の1.12倍あり、米国全州の中の3番目の広さがある。こんな広大なエリア内でガソリン車を排除して、交通インフラが成立すると考えられるのか。

●過去自動車に使われた原動機

 ここで交通インフラを担う動力を、再認識して見たい。

 過去からの「自動車」の動力には、蒸気機関まであり、内燃機関、ガスタービン、電気モーター等がある。この中で蒸気機関は、自動車が「馬無し馬車」として登場した頃の記録画像で見たことがあるかも知れないが、既に歴史の彼方である。

 ガスタービンエンジンは航空機等の用途には向くが、減速加速を繰り返す自動車のエンジンとしては不向きだ。

●内燃機関の再確認

 内燃機関には「焼玉エンジン」から「2サイクルエンジン」「4サイクルエンジン」「ロータリーエンジン」「ディーゼルエンジン」等があり、その燃料も「ガソリン」「軽油」「重油」「LPG」「LNG」「エタノール」から「廃天婦羅油」「ミドリムシ」等々、多岐にわたる。

 しかしいずれにしても、「燃料を燃やす」ことで動力を取り出す。

 「燃焼を伴う=CO2を排出する」という意味では、「蒸気機関」「ガスタービン」も同類である。「地球温暖化」対策だというのだから、「燃料を燃やす」ものが一切駄目だということになるだろう。

 インフラで「燃料を燃やす」ことを禁止するなら、航空機もNGで、鉄道以外は全て除外される。

 そこでEVといいたいのだろうが、EVも「充電する電気」は、発電時に大きな比率を占める部分は「燃料を燃やす」ことで発電して得ている。

●各国の電源構成(2017年)

      石炭  石油  天然ガス 原子力 水力 その他 (CO2排出)
 世界   38.5  3.3   23.0   10.3  15.9  9.0  (64.8)
 米国   31.0  0.8   31.4   19.7  7.1  10.1  (63.2)
 日本   33.2  6.6   37.5   3.1  7.8  11.8  (77.3)
 フランス 2.7   1.3   7.3   71.5  9.0  8.2  (11.3)
 ドイツ  39.0  0.9   13.5   11.8  3.1  31.7  (53.4)

 「その他」の分類には、地熱発電や風力発電、太陽光発電、潮流発電等が含まれると考えられるが、少なくとも「石炭」「石油」「天然ガス」のいずれもが、地球温暖化の原因物質とされるCO2を排出する。

 EV(電気自動車)は、発電所で「生産」された製品ともいうべき「電気」を充電しなければただの箱でしか無い。この「電気」を生産する過程で、CO2が発生している訳だから、「ゼロエミッション」なんてオーナメントを誇らしげに貼り付けるなんてこと自体、神経を疑う。

 繰り返していうが、「EVは車から排ガスを出さない」だけで「ゼロエミッション車」ではない。辛うじてフランスだけは、電源構成比から見てEV推しも許せるか。

 ドイツは、VWが中国市場目当てにEVに傾斜しているが、自国の電源構成の過半数53.4%が「燃料を燃やす」ことで発電している訳だから、EV志向する態度は疑問だ。

 米国で引き起きした、「VWのディーゼルエンジン排気ガス不正問題」で、「技術レベルの低さ」を露呈した故の、逃げ道にEVを選んだといわれても反論出来まい。

●どうしても「ゼロエミッション車」に拘るなら

 カリフォルニア州の考え方には、長期にわたって鎮火しない「山火事」の理由づけに、「地球温暖化」を挙げる論調があるが、逃げ口上以外の何物でもない。

 海水の温度が1度2度上昇しただけで、魚の生息域が大きく変わり、従来獲れていた種類の魚が、極端に獲れなくなる事象は珍しくない。

 しかし、平均気温が1~2度上昇しただけで影響が出るとすれば、高温化による「乾燥の問題」程度であって、山火事は「山林管理の問題」の方が大きいのではないか。

 もし、カリフォルニア州がどうしても「ゼロエミッション車」に拘るなら、EV車を持ち上げるのは筋違いで、「燃料電池車」と「水素エンジン車」で完全にカバーすべきだ。

 10月5日、「トヨタ自動車の北米事業体であるToyota Motor North America(以下、TMNA)と、日野自動車の米国における販売子会社の日野モータース セールス U.S.A.(以下、米国日野販売)、生産子会社の日野モータース マニュファクチュアリング U.S.A(以下、米国日野製造)は、大型電動トラックへの関心の高まりを受け、北米向けに、燃料電池で走行する大型トラックの開発に共同で取り組む」との発表をした。

 燃料電池車なら、「コンボイ」に出てくる様な、超大型トラックによる輸送も可能となるだろう。

 水素インフラの整備こそが、カリフォルニアの理想とするテーマに対する解だと思われる。(記事:沢ハジメ・記事一覧を見る

関連キーワードトヨタ自動車電気自動車ドイツアメリカ中国燃料電池水素フランス地球温暖化日野自動車

関連記事

広告

財経アクセスランキング

広告

写真で見るニュース

  • フォレスター「SPORTS」(画像: SUBARUの発表資料より)
  • ポルシェ・タイカン(画像: ポルシェAGの発表資料より)
  • インドで発表されたコンパクトSUV日産マグナイト(画像:日産自動車の発表資料より)
  • 木星を周回し火山から噴煙を上げる衛星イオのイメージ (c) ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), I. de Pater et al.; NRAO/AUI NSF, S. Dagnello; NASA/JPL/Space Science Institute
  • おとめ座付近にある多数の恒星によるシェル状構造 (c) レンセラー工科大学
  • クラウドファンディングで販売されているLanmodo NVS Vast Proの利用イメージ画像。(画像: TS TRADE発表資料より)
 

広告

ピックアップ 注目ニュース