東大、深海底の岩石から高密度で微生物を発見 火星に生命生息の可能性も

2020年4月8日 12:06

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ジョイデス・レゾリューション号と掘削された玄武岩試料(左)。試料から確認された微生物(右)(写真:東京大学の発表資料より)

ジョイデス・レゾリューション号と掘削された玄武岩試料(左)。試料から確認された微生物(右)(写真:東京大学の発表資料より)[写真拡大]

 地球以外の惑星に生命が生息しているかどうかは研究者の関心の的だ。とくに、地球と同じく岩石型惑星である火星は、生命の生息可能性が期待されている。東京大学は3日、南太平洋環流域の地底深くにある玄武岩から、微生物が高密度で生息していることを発見したと発表した。

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■地球環境を調査するプロジェクト

 日米が主導する国際深海科学掘削計画(IODP)は、深海底を掘削することで地球における内部構造や環境変動などを解明することが目的だ。生命が深海底に生息しているかどうかも同計画に盛り込まれ、米科学掘削船ジョイデス・レゾリューション号によって南太平洋環流域の海底が掘削された。

 東京大学の研究グループは、採取された玄武岩の試料から微生物の検出を試みた。玄武岩の亀裂に充たされた粘土鉱物から薄片を作成し、炭素や窒素、リンや硫黄といった生物に不可欠な元素のイメージングを細胞レベルで実施した。その結果、1立方センチメートル当たり10億個以上の細胞が粘土鉱物内に生息していることが判明。これはヒトの腸内と同程度だという。

 またDNA解析を実施したところ、生息するために必要な炭素を有機物から摂取する細菌(従属栄養細菌)であることが判明した。研究グループによると、玄武岩に含まれる粘土が生態系の形成にとって重要であることが示唆されるという。

■火星表面の大半を覆う玄武岩

 深海底から掘削された玄武岩試料は、3,350万年前と1億400万年前に形成された。形成年代が1,000万年前より古いため、微生物の生息に必要なエネルギーの供給が非常に少ない。そのため生命が生息する可能性は低いと見積もられていたがが、今回の研究結果により従来の知見が覆された。

 玄武岩は地球表面の70%を占める海洋地殻の上部を構成している。火星表面もまた大半が玄武岩で覆われているため、火星にも地球同様の生態系が存在する可能性が期待されるという。

 研究の詳細は、オンライン生物科学誌Communications Biologyにて2日付で掲載されている。(記事:角野未智・記事一覧を見る

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