恒星誕生の謎に迫る 国立天文台野辺山宇宙電波観測所の観測

2020年3月26日 08:45

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「星形成プロジェクト」による3つの領域(オリオンA領域、わし座領域(Aquila Rift)、 M17領域)の一酸化炭素輝線強度の電波地図 (c) 国立天文台

「星形成プロジェクト」による3つの領域(オリオンA領域、わし座領域(Aquila Rift)、 M17領域)の一酸化炭素輝線強度の電波地図 (c) 国立天文台[写真拡大]

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 私たちの宇宙には、数えきれないほどの恒星が輝いている。しかしながら、恒星がどのようなプロセスで誕生するのかについては、謎の部分が非常に多い。その理由は、恒星が誕生する起源となる星間ガスが、可視光では捉えることができないからだ。

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 星間ガスとは宇宙空間に存在しているガスを指し、1立方センチメートル当たりにガスの分子が1個あるというレベルの希薄な密度の存在である。しかしながら星間ガスは、電波観測領域で強い放射をするため、電波観測でその状況を捉えることは可能である。

 恒星が誕生しつつある領域における星間ガスの状態を詳細に観測することで、恒星がどのようなプロセスを経て誕生するのかを解明する研究が、国立天文台と多数の大学の研究者らからなるチームにより行われている。参加しているのは、東京大学、東京学芸大学、茨城大学、大妻女子大学、新潟大学、名古屋市立大学などだ。

 この研究チームでは、国立天文台野辺山宇宙電波観測所の45m電波望遠鏡を用いて、一酸化炭素や窒化水素などの分子密度の分布地図を、恒星が誕生しつつある3つの宇宙領域(オリオンA領域、いて座付近のオメガ星雲M17、わし座領域)で作成している。

 解像度だけを追求するならば、アルマ望遠鏡のほうが優れているが(野辺山宇宙電波観測所の15倍の解像度を持つ)、視野が狭いという弱点があり、今回のような広い領域での観測には膨大な時間がかかるため、この研究目的だけでアルマ望遠鏡を占有することは不可能である。このような理由から45m電波望遠鏡がこの研究においては採用されている。

 ところで太陽クラスの大きさの恒星誕生は、3つのプロセスを経ると考えられている。第1段階は星間ガスが集まり、分子雲のコアを形成する段階である。第二段階は原始星の形成段階で、第三段階として主系列星への進化と惑星系の形成に至る。

 太陽が誕生したのは今からおよそ50億年前、地球が誕生したのは約46億年前のため、恒星誕生の3つのプロセスに太陽の場合、数億年かかったことになる。

 今回の研究はこの3つのプロセスのうち、第1段階について詳しい観測データを得ることが目的である。例えばM17の観測では、46個の分子雲コアを見出した。そのうち4個は、質量が太陽の1000倍以上もあるが、この領域で大質量の恒星は誕生していないという。その原因は磁場によってコアの収縮が妨げられているためであることが明らかとなっている。(記事:cedar3・記事一覧を見る

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