産総研や理研、AI研究開発の連携組織を設立 国内のAI研究開発を活性化へ

2019年12月18日 08:30

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 産業技術総合研究所(産総研)、理化学研究所(理研)、情報通信研究機構(NICT)は16日、共同で人工知能研究開発ネットワークを設立したと発表した。AIを積極的に研究開発する大学、公的研究機関の連携強化等を通じて日本におけるAI研究開発の活性化を目指す。

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■第3次AIブーム

 現在、第3次AIブームが訪れていると言われる。2006年にディープラーニングが登場し、その後、2000年代後半に入ってビッグデータの利用が可能になるとAIは飛躍的な進歩を遂げた。

 ディープラーニングでは、AIは、たくさんの具体例(データ)から共通する特徴を抽出し、この特徴に基づいて判断する。例えば、画像認識であれば、たくさんの猫の画像から猫の特徴を抽出し、この特徴をどの程度持っているかによって判断対象の画像が猫の画像かどうかを判断する。そのためAIの判断の精度はAIが学習したデータの量に依存する。

 従来は、AIが学習するために十分なデータを集めることは難しかったが、ビックデータの活用が可能になったことでこの問題が解決し、AIの飛躍的な進歩がもたらされたというわけだ。

 そして現在、AIは社会のさまざまな場面で活用されており、IT関連はもとより、産業用ロボット、物流、医療、健康、介護、農業等多岐に渡る。また、将来的には自動車の自動運転にもAIを活用する研究が進んでいる。

 AIは今後、益々社会に浸透しその重要性を増していくとみられるが、AIの研究・開発・実用化において、日本はアメリカや中国に後れを取っている。政府も「AI戦略2019」の中で、「我が国は、現在、人工知能技術に関しては、必ずしも十分な競争力を有する状態にあるとは言い難い」と危機感をにじませている。

■人工知能研究開発ネットワーク設立

 このような状況下、AI戦略実行会議のAIステアリングコミッティーにおいて検討が重ねられ、人工知能研究開発ネットワークの設立に至った。国内の大学、公的研究機関の連携強化、政府のAIに関する研究開発事業等に関する情報提供、海外の大学、公的研究機関との連携強化、AI研究開発に関する情報発信等を通じて、国内でのAI研究開発の活性化を目指す。

 その運営の主体は産総研、理研、NICTが担う。会長には、AI戦略実行会議のメンバーでありAIステアリングコミッティーの座長でもある、ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長の北野宏明氏が就任した。

 今後は、2019年度中にもウエブサイトを立ち上げ、本格的な情報発信を開始すると共に、会員となる大学や公的研究機関の募集を始める予定だ。(記事:飯銅重幸・記事一覧を見る

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