東芝、 AI技術者2000人体制へ 東大と協力し教育プログラム作成

2019年11月11日 17:32

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 東芝は7日、2022年までに、社内のAI技術者を現在の750人から2,000人まで増強すると発表した。今後、東京大学と共同でAI技術者教育プログラムを開発し、12月から導入を開始する。プログラムを通じて、AI技術者を年間100人ほど育成するのが目標だ。その他の教育プログラムや採用活動も併用し、AI技術者を2,000人まで増やす。

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 AI技術者教育プログラムは、東京大学大学院情報理工学系研究科が社会人向けに提供していた講座をもとに開発した。東芝の社員は、東京大学から招かれた研究者の下で数カ月間講義・演習・卒業課題作成を行う。機械学習やディープラーニングといった最新の手法だけでなく、東芝が製造業の現場で蓄積したデータの分析も学べるのが特徴だ。本プログラムを通して、2022年までに350人をAI技術者として育成する。

 その他にも新卒採用で200人、別枠の教育プログラムで700人のAI技術者を獲得する。これらすべてを合計し、2,000人の人材を確保する計画だ。

 東芝がAI技術者の育成を急ぐのは、昨今の経営不振から脱却するため、人工知能やIoTを利用した事業を強化しているからだ。インフラや半導体の製造現場で蓄積したデータと基盤技術を、AIと融合させる東芝の研究は、世界的に見ても評価が高い。世界知的所有権機関(WIPO)の2019年度報告では、AIに関する特許出願数は、IBM、マイクロソフトに次いで世界3位と報告されている。

 このような状況を踏まえ、2018年に発表されたのが「東芝Nextプラン」だ。2030年までに、世界有数のCPS(サイバーフィジカルシステム)テクノロジー企業となることを目標としている。CPSとは現実世界のデータをサイバー空間で定量的に分析し、社会システムの効率化や新産業の創出に役立てる技術のことだ。製造業の作業効率化に力を発揮すると言われており、製造現場のデータとAI技術を保有する東芝の強みを最大限生かせる。

 AI技術者の獲得競争が年々激化しているが、日本での人材育成は進んでいないと言わざるを得ないのが現状だ。2020年には、AI技術者が4.8万人分不足すると予測されている。政府はAI技術者を毎年25万人育成する計画を立ち上げたが、実行できるかは不透明だ。今回発表した計画通りAI人材を確保できるかが、東芝の今後を左右するだろう。

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