シェアリングエコノミー活用中の中小企業は2.7% 商工中金調査

2019年10月22日 20:46

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 商工中金がシェアリングエコノミーについての調査結果を発表し、カーシェアリングなどで業績改善につなげている企業があるものの、全体ではわずかに留まっていることが分かった。

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■シェアリングエコノミーを活用中の中小企業は2.7%

 21日、商工組合中央金庫がシェアリングエコノミーに関する調査結果を発表した。これは、人や物、不動産などを仲介者を通じて料金を伴い共有する仕組みであるシェアリングエコノミーの活用や、認知状況について取引先である中小企業に尋ねたもので、回答のあった4,830社分を集計している。

 シェアリングエコノミーについて尋ねたところ、「活用している」と答えた企業の割合は2.7%、「活用予定あり」が1.2%となり、シェアリングエコノミーに積極的な企業は一部に留まっている。一方で「関心はあるが、活用予定はない」が19.1%、「活用に関心はない」が44.5%、さらに「シェアリングエコノミーを知らない」が32.5%だった。

 製造業と非製造業に分けたところ、製造業で「活用している」が2.3%、「活用予定あり」が0.6%だったのに対して、非製造業では「活用している」が2.9%、「活用予定あり」が1.4%となり、非製造業がやや多めだった。

■認知度は売上高に比例も活用度合いは変わらず

 対象企業を売上高の規模で分けたところ、売上高が5億円以下の企業ではシェアリングエコノミーを「知らない」が37.3%と最も高くなり、以下は売上高の規模が大きくなるにつれて「知らない」の割合が減り、売上高100億円超では19.6%となっている。

 ただし「活用している」と答えた企業の割合は、最も高かった売上高20億円超から50億円以下でも3.1%、最も低かった5億円超から10億円以下でも2.4%となり、売上高の規模で大きな差は見られなかった。

■民泊や駐車場などの提供や利用で活用中

 シェアリングエコノミーを「活用している」と答えた企業122社にその形態を尋ねた(複数回答)ところ、「他者の遊休資産等を利用」が63.9%、「自社の遊休資産等を提供」が34.4%、「提供者と利用者のマッチング」が7.4%だった。

 具体的な活用内容では、「自社の遊休資産等を提供」と答えた企業では民泊や駐車場などの提供が多め(42件中26件)、「他者の遊休資産等を利用」では、カーシェアなど移動手段(78件中30件)や民泊や駐車場など(同27件)の利用が多めながら、人材やスキル(同20件)や、機械設備や資材等(同19件)などと多岐にわたっている。

■他者の人材・スキル活用の予定が多め

 「活用予定あり」の企業53社では、「他者の遊休資産等を利用」が54.7%、「自社の遊休資産等を提供」が50.9%、「提供者と利用者のマッチング」が18.9%となっている。

 具体的な活用内容では、「自社の遊休資産等を提供」と答えた企業では民泊や駐車場などの提供が多め(27件中13件)ながら、カーシェアなど移動手段(同8件)、人材やスキル(同7件)などもある。「他者の遊休資産等を利用」では人材やスキル(29件中15件)が多めで、民泊や駐車場など(同9件)、カーシェアなど移動手段(同8件)などもあった。

■「シェア=技術漏えい」との危険も

 活用や関心状況について寄せられた意見では、「コインパーキング業者に利用してもらうことにしたり、カーシェア業者に利用してもらい、売上げにつなげた」(不動産業)、「カーシェアの活用により、コスト削減につながった」(飲・食料品卸売業)、「カーシェアリングの利用により、資産を購入することなく遠方での営業活動が可能となった」(対事業所サービス業)のように、カーシェアリングを実施している企業からの意見が目についた。

 また「同業者間での人材のシェア及び機械設備の共有で有効」(建設業)、「他社の遊休資産の利用と自社の遊休資産の提供は行なうことにより業績がアップ」(その他小売業)との意見もあった。

 一方で、「人材のシェアを始めたばかり。未だ効果を語るには至らず」(繊維・身の回り品卸売業)、「シェア=技術漏洩にもつながる考えがあり、あまり普及していない。ただし今後の企業のあり方の中では、必要不可欠な分野かと考える」(機械・金属・鉱物・石油卸売業)との声も寄せられていた。(記事:県田勢・記事一覧を見る

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