東北大、書込み14ナノ秒の128MビットMRAMを開発 不揮発性メモリが新市場生むか

2018年12月6日 20:11

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試作した128Mb STT-MRAMのチップ写真。(写真:東北大の発表資料より)

試作した128Mb STT-MRAMのチップ写真。(写真:東北大の発表資料より)[写真拡大]

 東北大学は5日、世界最高書き込み速度性能(14ナノ秒)を有するキャッシュアプリケーション向け128メガビットSTT-MRAM(磁気ランダムアクセスメモリ)の開発に世界で初めて成功したと発表した。

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 スマホやパソコン、加えて、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)を構成する上で欠かせない部品が半導体メモリだ。半導体メモリは、情報の記憶(書込み)・保持・アクセス(読出し)が可能だが、その方式により応用範囲が異なる。

 先ず、記憶した情報を保持するのに、電源供給を必要とするか否かの違いがある。電源を供給し続けないと情報が保持できないメモリを揮発性メモリと呼び、SRAM(Static Random Access Memory)やDRAM(Dynamic Random Access Memory)が代表だ。総じて、書込みや読出し性能に優れ、書込み回数に制限はない。特にSRAMは、1ビットの情報を保持するのに6つのトランジスタを必要とするため高集積化に難がある一方で、最も高速なメモリであり、CPUなど演算回路と接続し高速処理を実現する。他方、DRAMは1つのトランジスタと1つの容量で情報を保持するため高集積化が可能であるが、SRAMに比べると2桁以上低速であるため、高速アプリケーションの2次メモリとして使用される。

 次に、電源を切っても情報を保持するメモリを不揮発性メモリと呼び、フラッシュメモリやROM(Read Only Memory)が代表だ。総じて、書込みや読出し性能が揮発性メモリに比べて劣り、書込み回数に制約がある。特に、フラッシュメモリは1ビットの情報を保持するのに1つの浮遊ゲートのみであり、最も高集積化が進んでいる一方、10万回程度の書込み制限をSoC(System On a Chip)で管理・緩和している。スマホやUSBといった外部メモリとしての利用に加え、HDD(Hard Disk Drive)の代替も進む。

 今回の発表のMRAM(Magneto-resistive Random Access Memory)は、10年ほど前から研究開発が始まった、磁気で情報を記憶する不揮発性メモリだ。書込み回数制限はない上に、書込みや読出し性能がDRAMに勝るという優れものである。今回、128メガビット(1メガは100万)MRAMの書込みで世界最速の14ナノ秒(1ナノは10億分の1)を達成。

 詳細は1日~5日に米国サンフランシスコで開催される「米国電気電子学会国際電子デバイス会議(IEEE International Devices Meeting)」で発表する。

●128メガビットSTT-MRAMの可能性

 今回の実証実験の成功は、東北大の国際集積エレクトロニクス研究開発センター(CIES)が推進するCIESコンソーシアム並びに科学技術振興機構(JST)による、産官学の研究成果である。また、遠藤哲郎CIESセンター長は、東芝でフラッシュメモリの研究開発に従事した後、日本の半導体の未来に志を持って教鞭を執る。実用化を常に念頭に据えている。

 発表では触れていないが、14ナノ秒の書込み性能と128メガビットという大容量は、IoTでの活用を可能にするような数値であり、また代表的な不揮発性メモリの可能性を秘める。例えば、電源を切っても、次に電源を入れた時に、電源を切った状態から操作が可能になるような用途だ。加えて、電力消費を最小の抑える用途では最適なメモリである。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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