イギリスで高まる日立と三菱重工の存在感 原発と再エネが同時進行か?

2018年9月7日 16:37

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イギリスの高速道路 (c) 123rf

イギリスの高速道路 (c) 123rf[写真拡大]

 イギリス政府は17年7月、40年までにガソリン車やディーゼル車及びこれらにモーターをつけたハイブリッド車(HV)の販売を禁止にすることを発表している。蒸気機関の発明と国産石炭の活用による産業革命で世界を牽引したイギリスが、産業転換につながる動きをリードしようとしている。

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 イギリスメディアによると、ディーゼル車が排出する窒素酸化物(NOX)などの有害物質を原因とする大気汚染により、イギリス国内で毎年約4万人が寿命より早く死亡している可能性があるという。イギリス政府の方針によると、大気汚染対策が改善されないディーゼル車に対して20年以降、地方自治体が課税できるようになる。イギリスに拠点を展開する自動車大手は、EU離脱(ブレグジット)への対応に続き、脱ガソリン・ディーゼル車への対応にも迫られる。

 イギリスがこれだけ大きな政策転換を行う背景には、ヨーロッパの大都市における深刻な大気汚染問題がある。地球温暖化問題を大きなテーマと捉える視点もあるが、被害を視覚的にとらえることが出来ないため実感につながりにくく、端的に言うと“ピンとこない”と感じる人たちも多い。これに対して、大気汚染問題には日々の暮らしと一体に感じる切実さがあり、政治的なアピールが効果的に浸透するテーマでもある。ディーゼル車の排出ガス不正問題の発覚で、日々鬱屈していた大気汚染問題への思いが一気に表面化した。加えて、ディーゼルエンジンに仕組まれた確信犯的な不正行為に見切りを付け、愛想を尽かしたと言われる。

 6月、日立製作所はイギリスの原子力発電所建設計画について、イギリス政府との資金負担の内訳の基本合意にこぎ着け、事業推進に関する覚書を締結した。万が一、原発の新設が計画通りに進行しなかった場合のリスクへの対応についても合意している。原発リスクの軽減や買取価格の設定、原発事故の損害賠償責任等で調整の余地を残してはいるが、イギリス政府のエネルギー政策の大きな柱の1つは化石燃料を離れ、原子力発電所の有効利用である。

 9月になって、三菱重工業とヴェスタス(デンマーク)がそれぞれ半額出資する洋上風力発電設備会社MHIヴェスタスが、イギリス東岸にある洋上風力発電プロジェクト「トライトン・ノール」から90基の発電設備を受注したと発表した。トライトン・ノールは北海洋上で進行している86万キロワット級の洋上風力発電プロジェクトで80万世帯以上のイギリス家庭の年間消費電力に相当する。

 ガソリンやディーゼル等の内燃機関も原子力発電にも、プラス面とマイナス面がある。同様に、洋上風力発電も風エネルギーを電気エネルギーへ変換することで、地球を取り巻く風の動きが変化し、予想外の気象変動を引き起こすのではないかという懸念もささやかれている。メリットとデメリットを比較検討する、仮説と現実の現象を検証する、日立製作所と三菱重工業はともに日本のモノづくりの究極の到達点を明示することが期待される。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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