駅の券売機で現金引き出し、八丈島ではタクシーでも キャッシュアウトの動き強まる

2018年7月25日 16:48

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券売機での利用のイメージ。(画像: 東急電鉄)

券売機での利用のイメージ。(画像: 東急電鉄)[写真拡大]

 東京急行電鉄(東急)とゆうちょ銀行、横浜銀行などが13日、駅の券売機から現金を引き出すサービスを始めることを発表した。まず18年度中に実証実験を東急線の一部の駅で実施し、19年春にも東横線や田園都市線などの東急各線の駅で、日本初のサービスが開始を目指している。券売機にスマートフォン(スマホ)の画面をかざすと、預金口座から引き出した現金が券売機から出て来る。

【こちらも】日本はキャッシュレス社会へ移行できるのか?(3)「キャッシュアウトサービス」解禁へ

 横浜銀とGMOペイメントゲートウェイが共同開発した「銀行Pay」というスマホ決済サービスの仕組みを活用する。スマホアプリで事前に引き出し金額を申請して、スマホ画面に表示されたQRコードを券売機の読み取り部分にかざすと、横浜銀行とゆうちょ銀行などの提携金融機関の預金口座から現金の引き出しができる。

 手数料は未定だが、コンビニATMと同等の100~200円程度になるものと思われる。将来的には東急以外の沿線にも広げたい考えだ。

 このサービスは17年4月に改正銀行法が施行され、現金の引き出し(キャッシュアウト)が金融機関以外の事業者にも可能になったことが背景にある。

 ATMを探さなくても、生活の動線上にある駅(東急線)で現金を引き出すことができ、暗証番号などを券売機で操作する必要がないため、引き出しにかかる時間はATMより大幅に短縮できるようだ。

 キャッシュアウトサービスは、4月2日、イオンが2府12県に展開する42店舗のレジで取り扱いを開始して先鞭を切った。イオンの場合は、1回で引き出せる額は1000円単位で3万円以下、当面は引き出し手数料が無料となる。預金口座から買い物代金を即座に引き落とす「Jデビット」の機能を使って、みずほ銀行など国内約430の金融機関のキャッシュカードが使用可能だ。現在は1都2府15県の63店舗に拡大している。

 東京・八丈島では14日、八丈島空港ターミナルビル、ホテルのリードパークリゾート八丈島、タクシー会社の愛光観光、地元スーパー、居酒屋などでキャッシュアウトサービスがスタートした。引き出し可能金額は事業者によって3万~5万と幅があり、別途手数料がかかる。今後導入事業者が増加することが見込まれている。

 八丈島には元々ATMが少ないうえ、クレジットカードが使える店も限定される。従来、観光客から「現金を引き出すのが不便だ」という苦情が寄せられていたこともあり、観光振興への寄与が大きいと見られる。タクシーは車内でサービスの利用が可能なため、実質全島で現金の引き出しが可能になったことになる。

 国がキャッシュレスへの動きを強めている中で、逆行するかのニュアンスがあるが、必要最小限のキャッシュが円滑に流通することは地域経済の維持・拡大に不可欠なことである。「キャッシュレス」と「キャッシュアウト」は連携が可能であり、各事業者のアイディア次第で、今までより効率性と利便性の高い社会が実現する、という実証例になるのではないだろうか?(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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