スバル国交省への報告書(7) 「品質低下は気にしない」の結末は「市場の縮小」

2018年5月13日 10:30

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■「品質低下は気にしない」は世界の常識?

 今後の問題は、自動車会社が目先の利益を求めて「品質低下は気にしない」と出ることはどういう意味であるかということだ。危険なほどの品質無視を中国企業は侵すかもしれない。それは「中国新幹線事故」を見れば明白だ。また、韓国メーカーに駆逐された日本家電メーカーの二の舞を、自動車メーカーも経験するかもしれない。現在のメーカーは、リコールは届け出ても、コストを気にして、ユーザーに向けては保証しないどころか、謝罪しないのも当たり前になり、さらにはユーザーを安易にクレーマー扱いしてしまうこともある。そのやり方を指南するコンサルタントも存在するありさまだ。

【前回は】スバル国交省への報告書(6) 品質低下は気にしないで開発速度を高めろ!?

 迷惑・危険・損害を受けるのはユーザーだ。三菱自動車の事件では死者が出ているのだが、危険を無視するのはユーザーも同じであり、その鈍感さが事態を悪い方向に引っ張ってしまう。排気ガス不正のVWなどのメーカーに対して批判すらしないジャーナリスト、ユーザーの鈍感さを、どのように評価すればよいのであろう。「品質低下は気にしない」だけでなく、「責任を取らないメーカーを、どこまで社会は許すのか?」という様相になってきている。短期的には、「品質低下は気にしない」メーカーの言動は、増益で通るかもしれないが、ゴルフ市場のように危機的「市場の縮小」は避けられまい。現在、自動車市場も縮小を続けているのだが、かつてのゴルフ産業関係者は、自動車産業関係者より、「殿様商売」が極端で「市場縮小を招いてきた」と言われても仕方のない状況だ。ゴルフ場経営を分析すると、自動車市場の活性化で何をすべきか分かるはずだ。つまり「極端にユーザーの立場に立っていない」ということだ。

 世界のGDPの4倍以上の資金が世界で運用されていると言われている。小国の国家予算をはるかに超える運用資金が、小国の土地を買い占め、国民を追い払う力を持っている。「新植民地主義」と言える状況が「新資本主義」の見せる一面だ。イーロン・マスク氏のような投資家の感覚ならば「次の産業に投資すればよい」のだが、自動車産業としては、従事してきた社員をどうするのだろうか? アメリカの「ラストベルト」のようになって「トランプ大統領」のような指導者の出現を求めるようになるのだろうか? 国民が「無関心」で、自分に降りかかる不利益があっても、その時には認識できないことがあるのだ。

 そのため、このような、今回のスバルの報告書がまかり通ることになる。財務省や日本政府の不公正な姿勢がまかり通るのは、選挙権を持つ国民自身の責任だが、自動車メーカーの姿勢でもVWの排気ガス不正、三菱自動車の不正などが起きるのは、国民の無関心が基礎となっていると見るべきだ。「不正をしたメーカーの製品は買わない」とならないと、モラルは上がらない。

■「品質低下は気にしない」としたときの結末は「市場の縮小」

 私もスバルユーザーの1人だが、新車からのエンジンの不調で悩まされてきた。不良の存在自体も不愉快で負担だが、ディーラーが修理できないだけでなく、逆切れする整備士、スバル本社の窓口には閉口してきた。不良を認めても直せないばかりか謝罪もしない現実の対応は、あきれたものだ。ユーザーとしては、「危険な不良」であり「対策を取らざるを得ない」のだが、それが負担で車を所有すること自体をためらうようになった。50年間40台余り、世界の車を乗り継いできて、海外メーカーの不良と、法的立場を確保する「突っ張り」に悩まされてきた末の、頼みの国産メーカー・スバルの仕打ちだった。

 今では自分で運転するのはできるだけ避け、年間に500kmにもなるまい。ユーザー軽視の品質軽視では、クルマの所有は高齢者にはトラブル対策が負担であり、「市場は確実に縮小」していく。我々、団塊の世代は何事からもリタイヤしていく時期になった。高齢者には、車の所有だけでなくシェア・レンタルでも負担なのだ。AI自動運転になってもトラブル対処には限界がある。超高齢化社会では、ナショナルショップのようなユーザーの立場に立ったケアが必要となっている。

 現実に、現在のディーラーの売り上げ第一の姿勢では「高齢者は、オイル添加剤など余計な整備を誘われて、騙されていなければ整備も出来ない」環境だ。断れば、ディーラーの窓口で口論をしなければならなくなる。これで市場が縮小しないとでも言うのであろうか。マーケティングの専門家と自負する人たちは、視野を広げ、長期でビジネスモデルを考えることだ。(記事:kenzoogata・記事一覧を見る

続きは: スバル国交省への報告書(8) 「いいクルマをつくろうよ!」

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