三菱重工とJAXA、みちびき3号機の打ち上げ成功 日本版GPS近づく

2017年8月20日 21:06

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H-IIAロケット35号機による「みちびき3号機」打上げ (写真: 三菱重工業の発表資料より)

H-IIAロケット35号機による「みちびき3号機」打上げ (写真: 三菱重工業の発表資料より)[写真拡大]

 19日14時29分00秒、三菱重工とJAXAは、「みちびき3号機」(準天頂衛星システム 静止軌道衛星)を搭載したH-IIAロケット35号機を打ち上げた。ロケットは計画通り飛行し、打上げから約28分37秒後に「みちびき3号機」を正常に分離した事を確認した。日本版GPSの構築を目指す準天頂衛星システムの静止軌道衛星打ち上げに成功したことで、来年度からの高精度の衛星測位システム運用に一歩近づくこととなった。

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●「みちびき」で、測位誤差が数センチメートルに

 現在の米国のGPSを用いた衛星測位の精度は、10メートル程度の誤差があるという。それは、安定した位置情報を得るためには、8機以上の衛星が見えることが必要であるが、GPS衛星は地球全体に配置しているため、どの地点でも概ね6機程度しか見られないためという。

 「みちびき」は、準天頂軌道の衛星が主体となって構成される日本の衛星測位システムである。衛星からの電波によって位置情報を計算するシステムであり、「みちびき」とGPS衛星を併用することで、数センチメートルの測位誤差の精度になるという。

 この高精度の衛星測位システム実現には、準天頂軌道の衛星3機と静止軌道の衛星1機が必要である。3機の準天頂軌道とGPS衛星6機の計9機で測位するという。今年中にもう1機を打ち上げると、「みちびき」4機体制となる。4機体制確立後の2018年度には、準天頂軌道の衛星によりGPS信号を補完・補強し、運用を開始する予定である。

 なお、「みちびき」4機体制時においても、ビルや山の陰で見える衛星数が減ることから、都市部や山間部では測位が安定しないことがあるという。2023年度までに7機体制とし、都市部や山間部を含めて正確な位置情報が得られることを目指すという。

●想定するサービス

 高精度の衛星測位サービスは、自動運転や無人運転などの大きな助けになるであろう。それ以外にも、内閣府の宇宙開発戦略推進事務局「みちびき」サイトによれば、測位技術実証、災害・危機管理通報、衛星安否確認など衛星を使ったサービスを展開する計画であるという。

 同じくサイトには、「みちびき」に対応したスマートフォン、カー用品、デジカメ・時計、受信機・LSIなども掲載している。

●衛星測位システム(日本版GPS)のテクノロジー

 衛星測位誤差は、衛星数が少ないことによる誤差と電離層による誤差である。衛星数は、「みちびき」からGPSと同一周波数の測位信号を送信することにより、GPS衛星が9機あるように見せかけて対処している。また、電離層による電波遅延誤差は、衛星から発せられる複数の周波数の電波を同時に受信して計算することで推定するという。(記事:小池豊・記事一覧を見る

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