ウエスタンデジタル、7-9月期売上高は55%増―AI需要で大容量HDDが成長

2026年10月24日 14:45

印刷

記事提供元:Tech Times

Photo by amt8u on Unsplash

Photo by amt8u on Unsplash[写真拡大]

米ハードディスクドライブ(HDD)製造大手ウエスタンデジタル(Western Digital:WD)は米国時間2026年10月22日、2027会計年度(FY2027)第1四半期の売上高が前年同期比55%増の43億8100万ドル(約6880億円)だったと発表した。次の第2四半期は売上高51億ドル(約8010億円)前後、非GAAP粗利益率60〜61%を見込む。

クラウドやAIに伴うデータ保存需要の拡大に加え、大容量HDDへの製品移行と価格改善が業績を支えている。同社は四半期配当の17%引き上げも発表し、2027年上期には熱アシスト磁気記録(HAMR)製品の量産出荷を始める計画だ。

■売上高55%増、利益率も上昇

10月2日に終了した第1四半期の売上高は、前年同期の28億1800万ドル(約4420億円)から43億8100万ドル(約6880億円)に増えた。前四半期の37億4700万ドル(約5880億円)と比べても17%の増収となった。

米国会計基準(GAAP)による粗利益率は、前年同期の43.5%から57.8%へ14.3ポイント上昇した。営業利益は7億9200万ドル(約1240億円)から20億4600万ドル(約3210億円)へ158%増え、営業利益率は28.1%から46.7%へ18.6ポイント改善した。

GAAP希薄化後1株当たり利益(EPS)は、前年同期の3.07ドルから4.63ドルへ51%増加した。株式報酬や事業再編費用などを調整した非GAAP希薄化後EPSは、1.78ドルから4.64ドルへ161%増えた。

非GAAP粗利益率は58.1%で、前四半期の54.4%から3.7ポイント上昇した。非GAAP営業利益率も44.2%から49.1%へ4.9ポイント改善した。アービング・タンCEOは、堅調な顧客需要と事業運営が予想を上回る業績につながったとしている。

営業キャッシュフローは前年同期比139%増の16億400万ドル(約2520億円)だった。営業キャッシュフローから設備投資を差し引いたフリーキャッシュフローは、同130%増の13億7700万ドル(約2160億円)となった。

■クラウドから新たなAI事業者へ広がる需要

WDは決算説明会で、ストレージ需要が従来のクラウド・ハイパースケーラー顧客から、企業やネオクラウド、先端AI研究所へ広がっていると説明した。ハイパースケーラーは大規模なデータセンターを運営する事業者を指し、AWS、Google Cloud、Microsoft Azure、Metaなどが代表例だ。

WDのFY2027第1四半期では、クラウド分野が売上高の88%を占めた。前四半期までは89%で推移しており、大容量データセンター向け製品が引き続き事業の中心となっている。

ネオクラウドは、GPUを中心としたAI向け計算基盤を提供する事業者だ。WD経営陣は、ネオクラウドに加え、先端AI研究所や、国・地域のデータ主権を重視するソブリンAI基盤からも需要が増えているとしている。

この分野の投資規模を示す例がCoreWeaveとFluidstackだ。CoreWeaveの発表では、2026年6月末時点の将来売上高に関する契約残高は約1040億ドル(約16兆3000億円)だった。またAnthropicは2025年11月、Fluidstackと米国のデータセンターを建設する計画を含む、500億ドル(約7兆8500億円)の計算インフラ投資を発表している。

フィジカルAIも新たな需要源となる。自動運転車、産業用ロボット、ヒューマノイドなどが集める映像・センサーデータは、AIモデルの学習や改善に使われる。タンCEOは2026年8月の決算説明会で、ある自動運転車事業者から示された2027年の必要ストレージ容量が数倍に増えたと説明した。

■学習、推論、フィジカルAIが生む保存需要

顧客の広がりに加え、AIの利用段階ごとに保存するデータも増えている。クリス・セネサールCFOは2026年5月のJ.P. Morgan主催カンファレンスで、AIモデルの学習、推論、フィジカルAIをストレージ需要の拡大要因として挙げた。

学習では、テキストに加えて画像や映像を含むデータを蓄積し、次世代モデルの開発や再学習に利用する。推論でも、生成した出力や処理履歴などの保存が新たな需要になると同氏は説明した。

フィジカルAIでは、複数のカメラなどで収集した実世界のデータを学習へ戻す流れが生まれる。セネサール氏は、実世界のデータを補う合成データの利用も挙げており、機器の稼働とモデル改善の双方が保存容量を必要とする構図だ。

調査会社Coughlin Associatesのトーマス・コフリン氏は、2026年5月にForbesへ寄稿した分析で、同年のHDD出荷容量の約18%がAIによる追加需要に相当すると推計した。過去の出荷容量の成長傾向を基準にした試算で、想定する成長が続けば2028年は約43%、2030年は約58%になるという。

コフリン氏によると、2026年5月時点でデータセンターに保存されるデータの85%超はHDD上にある。AI処理へ直ちに供給するデータにはSSDが使われる一方、HDDは学習データやログ、生成物などを低い容量単価で蓄積する役割を担う。

■面記録密度と大容量化が支える採算

HDDの大容量化を支えるのが、記録面の単位面積当たりに保存できるビット数を示す面記録密度だ。HDDは回転する円盤状のプラッターに磁気で情報を記録し、その表面近くを動くヘッドで読み書きする。

同じ枚数のプラッターで保存容量を増やせれば、ドライブ台数を同じ比率で増やさずに、出荷する総容量を拡大できる。WDは、高密度・大容量製品への移行によって容量当たりのコストを下げる方針を示している。

WDのエネルギーアシスト垂直磁気記録(ePMR)は、書き込みヘッドへの電流供給を利用して記録を安定させ、ビットをより高密度に配置する技術だ。同社の日本語技術資料では、ヘッドの主極に電流を流して追加の磁場を生み、書き込みのばらつきを抑える仕組みを説明している。

シングル磁気記録(SMR)は、隣接する記録トラックを屋根瓦のように一部重ね、同じ面積へより多くのトラックを配置する方式である。重なった領域の書き換えを管理する必要があり、容量拡大には制御技術も重要になる。

WDのUltraSMRは、この方式に誤り訂正や信号処理などの技術を組み合わせたものだ。同社によると、従来型磁気記録(CMR)に対して約20%多い容量を実現できる。2026年8月時点では、FY2027末にニアライン向け出荷容量の約60%をUltraSMRが占めると予想していた。

利益率を押し上げる要因として、WDは大容量製品への移行と良好な価格環境を挙げている。今回の決算説明会では、容量1TB当たりの平均販売価格が前年同期比28%上昇したと説明した。技術による容量当たりコストの改善と、販売価格の改善が採算を支える。

■次四半期は売上高51億ドル(約8010億円)、粗利益率60〜61%を予想

10月22日時点のFY2027第2四半期見通しでは、売上高は51億ドル(約8010億円)前後で、上下1億ドル(約157億円)の幅を見込む。前年同期比では66〜72%の増収に相当する。

非GAAP粗利益率は60〜61%、非GAAP営業費用は4億〜4億1000万ドル(約628億~644億円)、非GAAP希薄化後EPSは5.80ドル前後で上下0.20ドルを予想する。セネサールCFOは、出荷容量の増加と価格改善が業績の勢いを支えていると説明した。

売上高はFY2026第4四半期の37億4700万ドル(約5880億円)から、今回の43億8100万ドル(約6880億円)へ増加した。次四半期の見通しの中央値は、そこからさらに約16%増える水準となる。

51億ドル(約8010億円)を単純に4倍した年換算売上高は204億ドル(約3兆2000億円)となり、FY2026通期の129億1900万ドル(約2兆300億円)を約58%上回る。これは四半期の売上規模を年換算した比較であり、WDが今回示した業績予想の対象は第2四半期である。

競合のSeagate Technologyが2026年7月28日に発表した、同年7月3日終了のFY2026第4四半期の非GAAP粗利益率は52.7%だった。同じ期間のWDは54.4%で、その後、今回の第1四半期には58.1%へ上昇した。

■17%増配と10億ドル超の株主還元

WDは四半期現金配当を1株当たり0.15ドルから0.175ドルへ約17%引き上げた。2026年12月4日の取引終了時点の株主を対象に、12月17日に支払う予定だ。

タンCEOは、増配について事業への自信と株主還元への取り組みを反映したものだと説明した。顧客関係の深化、新たな市場への顧客基盤拡大、将来需要の見通しの向上を、長期的な価値創出の土台に位置付けている。

第1四半期には10億100万ドル(約1570億円)の自社株買いを実施した。支払配当5600万ドル(約87億9000万円)と合わせた株主還元額は、10億5700万ドル(約1660億円)となった。

一方、GAAP業績には4300万ドル(約67億5000万円)の事業再編費用を計上した。WDの四半期報告書によると、内訳は現金に基づく従業員退職給付2700万ドル(約42億4000万円)と株式に基づく給付1600万ドル(約25億1000万円)で、事業の効率化やコスト構造の改善に向けた組織合理化に伴うものだ。

■HAMR移行と供給体制が今後の焦点

大容量化の次の段階では、HAMRへの移行が重要となる。HAMRはレーザーで記録媒体をキュリー温度付近まで局所的に加熱し、磁化の向きを変えやすくして書き込む技術だ。高い熱安定性を持つ鉄白金系の微細な磁性粒子を利用し、記録密度を高める。

Seagateは2026年3月3日、HAMRを使うMozaic 4+プラットフォームが大手ハイパースケーラー2社で認定され、最大44TBのドライブを量産出荷していると発表した。同社は7月の決算説明会で、6月時点のニアライン出荷容量に占めるHAMR製品の比率が40%に達し、今後の目標に向けて進んでいると説明した。

WDは2026年8月、44TBのHAMR製品を2027年上期に出荷する計画を示した。今回の決算説明会でも上期の量産出荷開始方針を維持し、最初の2顧客で認定を完了した後、2027年上期には追加の2顧客で認定作業を始める見通しを説明した。

並行して、WDは40TBのePMR製品を拡大している。同社はePMRとHAMRに共通のアーキテクチャを採用し、製造効率と顧客の製品移行を改善する方針だ。両方式を並行して供給することで、顧客の導入計画に合わせて容量を拡張する。

供給の先行きについては、タンCEOが2026年1月の決算説明会で、同年分はほぼ販売先が決まり、上位7顧客から確定注文を得ていると説明していた。大容量製品への移行では、顧客による認定、製造工程の立ち上げ、部品調達を計画通りに進めることが重要になる。

顧客・市場の集中、競争、供給網の混乱、関税を含む通商政策、為替変動は、WDが開示するリスク要因だ。AI用途と顧客層の拡大を取り込みながら、クラウド中心の需要に対応し、新世代製品を安定供給できるかが今後の業績を左右する。

元記事: Western Digital Raises Q2 Guidance to $5.1B as Three AI Demand Tiers Drive Near-Software Margins

※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。

関連キーワード