韓国、電池・自動車部品の技術をヒューマノイドへ 9月22日にソウルで国際会議

韓国機械研究院が開発するAIヒューマノイド「KAIROS V0.7」。2026年9月7日の「Global Forum on Mechanical Engineering」で、韓国の伝統仮面舞踊を取り入れた全身動作を披露した(写真:KIMM)[写真拡大]
ヒューマノイドロボットとフィジカルAIをテーマとする国際会議「Humanoids Summit Seoul 2026」が9月22、23日、ソウルのCOEXで初めて開催される。韓国は、高エネルギー密度の電池や自動車部品で培った精密制御技術を生かし、ヒューマノイドの部品供給と完成プラットフォームの開発を並行して進めている。
Goldman Sachs Researchは、韓国企業が直接生産と主要部品の供給を通じ、2035年に世界のヒューマノイド生産の約30%に関与すると予測する。韓国のサプライチェーンが支える台数は、2030年に約7万4000台、2035年に約41万2000台に達するとの見通しだ。いずれも受注実績ではなく、市場拡大を前提とした予測である。
■高エネルギー密度の電池に商機
現在のヒューマノイドでは、液体電解質を使うリチウムイオン電池が主流となっている。限られた搭載空間と重量の中で稼働時間を確保する必要があるため、比較的エネルギー密度の高い高ニッケル三元系電池のNMC系やNCA系が主要な選択肢となる。
一方、リン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池は、コスト面の利点から、長時間稼働への要求が比較的低いサービスロボットなどに使われている。LFPとNMC、NCAにはコストやエネルギー密度などの特性差があり、用途や機体設計に応じて選択される。特定の電池化学だけでヒューマノイド市場の競争力が決まるわけではない。
TrendForceによると、現在のヒューマノイドの多くは1回の充電で2~4時間程度稼働し、電池容量は2kWh未満にとどまる。同社は、稼働時間を5~8時間以上へ延ばす方法として、停止せずに電池を交換できるホットスワップ方式と、より高いエネルギー密度を持つ電池の採用を挙げている。
Samsung SDIは、全固体電池の最初の商用化案件としてヒューマノイド用途を有力視しており、顧客との協議やサンプル供給を進めている。同社は全固体電池の量産開始を2027年後半に設定しているが、実際の搭載時期や供給規模は顧客による検証と量産準備に左右される。
TrendForceは、ヒューマノイド向け全固体電池の需要が2035年に74GWhを超え、2026年比で1000倍以上に拡大する可能性があると予測する。全固体電池は、稼働時間の延長や高負荷作業への対応を考えるうえで有力な候補だが、量産技術、コスト、機体ごとの設計最適化が普及を左右する。
■自動車部品の技術をロボットの関節へ
韓国企業のもう一つの強みは、自動車産業で蓄積してきたモーター、センサー、制御装置、精密加工などの技術である。アクチュエーターは電気信号を物理的な動きに変え、ヒューマノイドでは関節や筋肉に相当する役割を担う。
電動パワーステアリングやブレーキ、サスペンションとロボット用アクチュエーターは、同一の製品ではないものの、変動する荷重の下で動きを精密に制御するという技術課題に共通点がある。自動車向け部品を大規模に生産してきた企業は、設計だけでなく、品質管理や量産工程の面でも蓄積を応用できる。
Hyundai Mobisは2026年1月、Boston Dynamicsとの戦略的協業を発表し、次世代電動ヒューマノイド「Atlas」向けアクチュエーターを供給すると明らかにした。同社は同年9月、Atlasへの採用を想定して開発中のヒューマノイド用アクチュエーターを公開している。
Hyundai Motor Groupは、Atlasを含むロボットを年3万台規模で生産できる体制の構築を目指している。量産計画が進めば、自動車部品企業がロボット用のアクチュエーターやセンサー、制御装置、電池パックへ事業を広げる機会も大きくなる。
Goldman Sachs Researchは、韓国の自動車部品産業が持つ電動モーター、センサー、制御装置、精密工学の知見が、ヒューマノイド向けの主要部品に応用できるとみる。韓国企業が中国以外の供給元を求める開発企業にとって、主要な選択肢になる可能性を指摘している。
■官民で進めるKAPEX開発
韓国科学技術情報通信部は2026年5月、国家プロジェクト「K-Moonshot」の中核事業として、「官民連携基盤AIヒューマノイド基盤技術高度化事業」を始動した。2026年から2030年までの5年間で総額504億ウォン(約53億1000万円、1ドル=157円でドル換算額から概算)を投じ、AIとハードウェアを統合した韓国独自のヒューマノイドプラットフォームを開発する。
事業は韓国科学技術研究院(KIST)が主管する。産業界からLG Electronics、LG AI Research、LG Energy Solution、Robostar、WIRobotics、大学からソウル大学校、韓国科学技術院(KAIST)、高麗大学校、慶熙大学校が参加する。医療現場での実証にはハンリム大学聖心病院が加わる。
開発の基盤となるのが、KISTのヒューマノイド「KAPEX」である。LG ElectronicsはKAPEXを基に量産を見据えた次世代モデルを開発し、WIRoboticsは公共環境で利用できる移動型プラットフォームを手掛ける。研究チームは、視覚、触覚、言語、行動を統合して理解・判断するAIの開発も進める。
LG Energy Solutionは、火災リスクの低減と長時間の安定動作を目標に、全固体電池技術をロボットプラットフォームへ適用する。開発した技術は2029年以降、ハンリム大学聖心病院などの医療・介護環境で検証する計画である。
プロジェクトは20台以上のヒューマノイドを現場へ投入し、生活支援や公共サービスに必要な長期の複合作業、安全性、信頼性を確認することを目指す。研究成果を量産や実運用へつなげ、現場から得たデータをAIと機体の改善に利用する体制を構築する。
■完成機と運用データの蓄積が課題
韓国には部品と量産技術の基盤がある一方、ヒューマノイドの完成プラットフォームと実環境での運用データでは、米国や中国の有力企業を追う立場にある。今後の競争力は、個々の部品性能だけでなく、AI、機体、電池、制御システムを統合し、現場で安定して作業できる形に仕上げられるかに左右される。
韓国機械研究院(KIMM)は2026年9月7日、韓国製AIヒューマノイド「KAIROS V0.7」を公開した。KAIROSは、韓国の伝統仮面舞踊を取り入れた動きを含む全身動作を披露し、4月に公開されたV0.5から歩行や姿勢制御を改良した成果を示した。
Samsung Electronicsもロボット事業を強化している。同社はRainbow Roboticsに対する出資比率を35%へ引き上げて最大株主となり、同社を連結子会社化した。Samsung ElectronicsのAI・ソフトウェア技術とRainbow Roboticsのロボット技術を組み合わせ、高度なヒューマノイドの開発を加速する方針である。
Humanoids Summit Seoulでは、韓国科学技術情報通信部の関係者がフィジカルAI政策を説明するほか、ヒューマノイドのハードウェア、AI、器用な操作、商用化、安全性、実環境への導入などが議論される。韓国での開催は今回が初めてで、同国の部品メーカー、研究機関、完成機開発企業が国際的な開発網との接点を広げる機会となる。
韓国がヒューマノイド供給網で存在感を高めるには、電池やアクチュエーターで培った技術を、量産可能な完成機と実運用データへ結び付ける必要がある。部品供給と国産プラットフォーム開発の双方が進むなか、その成否はKAPEXなどの実証と、Atlasをはじめとする海外プログラムへの継続的な供給によって試される。
元記事: Humanoids Summit Seoul Opens Sept 22: Korean Battery Chemistry Breaks Duopoly
※この記事はTech Timesから提供を受けた記事を日本向けに翻訳・編集したものです。
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