日本通信が切り拓いたスマホ通信料金の引き下げに、追随相次ぐ!

2020年8月29日 20:08

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 菅義偉官房長官が18年に札幌市で開催された講演会で、「携帯電話料金には4割程度の値下げ余地がある」と発言して始まった、携帯電話料金値下げへの動きがいよいよ本格化して来た。

 菅官房長官が異例の発言に及んだ裏には、日本の携帯電話業界を牛耳る3大キャリアに、競争原理が働いていないという苛立ちがあった。3大キャリアが監督官庁である総務省の方針を無視してきたわけではない。総務省のメンツを潰さないように、料金システムをもっともらしく見直しはする。

だが各社の高収益体質には大きな変化がなく維持されて来た。菅官房長官が6月30日に語った「大手3社の利益率は20%を超えた高止まり状況にあり、大幅な引き下げ余地がある」は、その思いをストレートに表現したものだろう。

 19年11月に、自前の通信回線を持たない格安スマホの日本通信が、ドコモの音声通話回線のレンタル料金が「高すぎる」として異例の総務大臣裁定を申請していた。日本通信は14年から同様の交渉をドコモと続けてきたが、長年の交渉は不調のまま進展していなかった。

 20年2月には、総務省がドコモに対して値下げを求めた裁定案を提示している。裁定案には「ドコモが有する交渉の優位性が料金高止まり」の原因と指摘した上で、レンタル料金が「適正原価に適正な利潤を加算した金額以内にする」ことを求めた。現行のレンタル料が30秒当たり14円であるのに対して、原価は3円程度といわれているから期待は膨らんだ。

 6月30日に総務省はドコモに対して、通信回線レンタル料金の値下げを求める裁定を公表した。裁定には法的な拘束力があり、ドコモは6カ月後の12月29日までに日本通信に対して、新たなレンタル料金を提示しなければならなくなった。もちろん新たなレンタル料金はほかの格安スマホ業者に対しても適用されることになり、KDDIやソフトバンクの料金設定にも強い影響を与えるものと見られる。

 総務省の裁定が下されたのを受けて日本通信は7月15日から、「合理的かけほプラン」として電話かけ放題と3ギガバイトのデータ通信をセットにした商品を、月額2480円で発売した。

 8月20日にはインターネットイニシアティブ(IIJ)が、音声通話機能と3ギガバイトまでのデータ通信をセットにして、月額1600円(音声通話機能とデータ伝送1ギガの場合は1180円)の商品を「IIJmioモバイルプラスサービス 従量制プラン」として発売した。日本通信のプランが電話かけ放題なので単純な比較はできないが、利用者のニーズに沿ったラインアップ充実の一環と見ていいだろう。

 エイチ・アイ・エス(HIS)の通信子会社、HISモバイルは電話かけ放題と3ギガバイトのデータ通信をセットにして、28日から2480円(税抜き)で発売した。

 ドコモから提示される新たなレンタル料金の提示期限は12月29日である。果たして期待通りの料金設定になるかどうかはまだ分からない時期だが、ドコモとの交渉の先陣に立っていた日本通信の後を追うように各社の対応が進んでいる。既にドコモの外堀は埋められていると見ていいだろう。

 ちなみにドコモで電話のかけ放題(1700円)と3ギガバイトのデータ通信(3980円)をセットで契約すると、月額5680円になる。この差をどう感じるかは、まさにあなた次第だろう!

 いよいよ、3大キャリアと格安スマホ勢の間で、競争原理が効いたガチンコ勝負が始まりそうだ。(記事:矢牧滋夫・記事一覧を見る

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